前年比はマイナス12万人、派遣社員受難時代続く…非正規社員の現状をグラフ化してみる

2011/03/08 05:37

受難時代先に【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる(2010年版)】などでも取り上げたように、総務省統計局は2011年2月21日、2010年における労働力調査(詳細集計)の速報結果を発表した(【労働力調査(詳細集計) 平成22年平均(速報)結果:発表ページ】)。そこには2010年、あるいは2010年を含む過去数年間における、日本の労働環境や雇用問題における各種データが盛り込まれている。今回はその資料から、非正規雇用関連の資料をいくつかグラフ化・グラフの再構築化をし、状況をかいま見ることにする。

スポンサードリンク


元となるデータは「労働力調査(詳細集計) 平成22年平均(速報)結果」の「平成22年平均(速報)結果の概要、統計表」から。ちなみに「完全失業率」とは【辞めさせられたけど再就職をあきらめる人が増えている!? 統計局の「完全失業率の急上昇」をざっと読み通す】でも説明しているように、「完全失業者÷労働力人口×100(%)」。統計局の場合には「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「仕事を探す活動をしていた」のすべてに当てはまる人が「完全失業者」に認定される。

まず最初に取り上げるのは、雇用形態別にみた非正規の職員・従業員(非正規社員、非正社員)の推移。【「派遣叩き」がもたらす現実……企業は「派遣を減らしパートやアルバイトを増やす」意向】でも触れているが、いわゆる「派遣叩き」の流れで多業種の企業は派遣社員を敬遠するようになった。元々景気後退期ということもあるが、2010年において非正規社員のうち「パート・アルバイト」「契約社員・嘱託」は増加しているのに対し、「労働者派遣事業所の派遣社員」は去年に続き大きな減少を見せている。2009年時点で108万人だったのが96万人に減少。実に12万人も数を減らしているのが確認できる。

↑ 雇用形態別にみた非正規社員の推移(万人)
↑ 雇用形態別にみた非正規社員の推移(万人)

↑ 雇用形態別にみた非正規の職員・従業員の対前年増減の推移(万人)
↑ 雇用形態別にみた非正規の職員・従業員の対前年増減の推移(万人)

派遣社員の減少は単純比較ができる2003年以降では去年に続き2年目のこと。他の形態も同様に数を減らしているのなら単に「労働力が供給過多」で済むのだが、「パート・アルバイト」「契約社員・嘱託」が増えていることを考えると、先の記事での企業の意向が言葉だけでなく実践されていることが分かる。

派遣社員は減ったがパートやアルバイトなどは増え、正規社員は減っている。結果として、雇用者全体における正規・非正規社員の比率は多少ながらも非正規正社員側が増えることとなった。2010年時点では雇用者全体の65.7%が正社員(・正職員)、残りが非正規社員という計算になる。

↑ 雇用形態別にみた雇用者の割合推移(役員を除く雇用者に占める割合)
↑ 雇用形態別にみた雇用者の割合推移(役員を除く雇用者に占める割合)

このグラフ「だけ」を見ると単純に非正規社員の割合が増加しているだけに見える。しかし、先の実数のグラフと照らし合わせると、景気後退の影響が出る2008年までは「正社員数は横ばいか微減」「非正規社員は増大」という構図、言い換えれば「景気拡大期は非正規社員の増加で企業の業務拡大に対応していった」のが分かる。

現在は景気後退期に入り、労働力過剰の影響が派遣社員、そして正社員に出ているわけだ。一方で同じ非正規社員でも、パートやアルバイトなどは増加の一途をたどっている。

失業者数の推移
会社の業務が手持無沙汰となり、労働力の需要が減り、特に派遣社員に影響が出ていることはこれまでのグラフでお分かりの通り。ちなみに正社員・従業員は2009年の3380万人から2010年には3355万人となり、都合25万人減少している。増減という点では派遣社員より減少数は大きい。

ところが前職の雇用形態別に見た、離職した完全失業者数の推移を確認すると、むしろ前年より減少しているのが確認できる。

↑ 前職の雇用形態別にみた離職した完全失業者の推移(万人)
↑ 前職の雇用形態別にみた離職した完全失業者の推移(万人)

2年前と比べれば悪い値に違いは無いが、昨年2009年と比べれば多少なりとも改善している。しかし今データはあくまでも「過去1年間に前職を離職した者のうち」という前提があることに注意しなければならない。

つまり「失業期間が1年超えの人」の人は今グラフには反映されていないわけだが、これに相当する人は2009年の95万人から2010年には121万人に増加している。離職してから1年を超えてしまうと、前職も何も無いということなのだろうが、単純にこのグラフだけから「失業状況は改善している」と判断するは早計といえる。

また、元派遣社員に対する風当たりの強さが分かるのが次のグラフ。各雇用形態別に「その時点で雇用されている人数」に対する、「前職でその雇用形態に居た人の完全失業者数の割合」を算出したものだが、元派遣社員の完全失業者数が(昨年からやや改善されたとはいえ)いまだに1割を超え、他の職種と比べると異常なほど高い値を示している。簡単に例えれば、10人派遣社員が雇われている場合、それとは別に1.4人近くが「元派遣社員の完全失業者」(失職してから1年未満)として存在するという計算だ。

↑ 完全失業者の雇用者に対する比率の推移
↑ 完全失業者の雇用者に対する比率の推移

無論、パートやアルバイト、正社員と比べて派遣社員は元々の人数が1ケタ少ないため(派遣社員は上記グラフにあるように96万人、パート・アルバイトは1192万人、正社員は3355万人となっている)、単純な比率計算では「ぶれ」が生じていることは否定できない。しかしそれを差し引いてもなお、解雇された派遣社員の割合がいかに多かったかが改めて認識できよう。



繰り返しになるが、完全失業者数の絶対数は元正社員の立場にある人が一番多い。しかし同じ雇用形態で現在働いている人に対する完全失業者数の比率では、元派遣社員の値が一番大きくなる。同じ雇用形態で再び就職を望む人が多いことを考えれば、パイそのものが急速に縮小している元派遣社員の方が辛い感は否めない(一方で1年以上の長期失業者には、安定した職を求めて仕事を探し続けている者が多いことも、数字から明らかにされている)。

現在のような景気低迷期において、労働力の調整弁的な立場にある派遣社員の人たちが多く失職するのは仕方がない、とする意見もある。さらに扇情的な世論(を形成する人たち)も派遣という業種そのものを撲滅しようとしているようにすら見える。しかし仮にその意見が正しいとしても、すでに正社員にまで大ナタが振られている現状では、調整弁云々の役割はすでに果たされたと見てよい。

執拗な派遣叩きが今後も続くのなら、さらに「本来失職する必要の無かった人たち」まで職を失いかねないのだが(あるいはすでにその状況下にあるともいえる)、そのあたりの実態をどのように考えているのだろうか。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2017 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー