2010年の日本の総広告費前年比マイナス1.3%・5兆8427億円…電通発表の「2010年日本の広告費」をグラフ化してみる

2011/02/25 12:00

広告先に【電通資料を基に過去20余年の媒体別広告費の移り変わりをグラフ化してみる(2010年分反映版)】でお伝えしたように、[電通(4324)]は2011年2月23日、日本の広告費に関する調査報告書を発表した。それによると、電通推定による2010年の日本の総広告費は前年比1.3%減の5兆8427億円であることが明らかにされた。景気後退による企業の予算縮小を受けて、広告の出稿も減少。結果として広告費全体額も減少している。ただしここ数年来で比べれば、下げ幅は縮小傾向にある。今報告書では広告業界に関する多種多様なレポート・データもあわせて掲載されており、業界の動向を知るのにはよい資料といえる。今回は主要項目のいくつかをグラフ化し、状況の把握容易化を試みることにした(【発表リリース、PDF】)。

スポンサードリンク


まずは2010年の広告費における前年比。2009年から2010年の間に、各媒体で広告費に関してどのような動きがあったかがよく分かる。

↑ 2010年媒体別広告費前年比
↑ 2010年媒体別広告費前年比

全体的には去年同様に衛星メディアとインターネット周りの盛況ぶりがあらためて認識できるグラフとなっている。一方、既存4大媒体(既存4大メディア)の中では「雑誌」の落ち込み具合が群を抜いている。これは去年と変わりなし。ただしテレビは4媒体中唯一プラスの値を見せている。率はわずか1.1%だが、プラスである事自体意味があるし、絶対額が大きいため、全体に与える影響が大きいのも事実。

プロモーションメディアではフリーペーパーと電話帳の下げが著しい。両媒体とも需要が急速に減退している様子がうかがえる。

続いて前年比ではなく、絶対金額のグラフ。

↑ 2010年媒体別広告費(億円)
↑ 2010年媒体別広告費(億円)

既存4大媒体、中でもテレビが未だに大きな広告費を占めているのが分かる。また、金額の面でインターネット広告費全体が新聞を抜き、テレビに次ぐ金額を見せている(もっとも電通の区分ではインターネット広告費は「媒体費」「広告制作費」に区分されているため、その区分で比較すれば未だにギリギリではあるが「新聞」の方が上)

経年変化を眺めてみよう
直近における個々の項目の金額はこれで分かるが、広告費全体に占める比率や金額そのものの推移がどのようなものかが気になるはず。そこで過去のデータや今回発表された数字を基に、経年推移をグラフ化する。

今回公開されている範囲は2002年から2010年まで。さらに2004年と2005年の間で広告費の区分などの変更がなされているため、厳密にはその間前後のデータに継続性は無い。参照程度ということで認識してほしい。また、2000年以前のものもサルベージをすればデータを反映させることは可能だが、2001年より前のものはインターネット広告などの項目が無いに等しいため、今回は省略する。

まずは単純に金額を積み上げたグラフ。今世紀に入ってからは、2007年が天井で、あとは景気後退と共に広告費そのものも減退していることが分かる。そして特に新聞やテレビが大きくその額を減らしているのも確認できよう。

↑ 媒体別広告費(積上げ推移、2001-2010年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)
↑ 媒体別広告費(積上げ推移、2001-2010年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)

特にプロモーションメディア広告費が2004-2005年の間に大きく上昇しているのは、区分の変更で色々と追加がされているのが原因。この時期に今項目が飛躍・成長したわけではない。また、すでに複数の記事で触れているが、新聞や雑誌などの紙媒体の落ち込みが著しいことが分かる。これは【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…(下)購入世帯率や購入頻度の移り変わり】【新聞や雑誌の買われ方はこの10年でどのように変化したのか……週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる (追補編)】で解説しているように、購入層そのものの減少による媒体力の低下「も」大きな要因(「も」としたのは、部数減少だけではなく、全体的な質の低下も要因のため)。また、一部には媒体側がインターネットへの傾注度合いを増した面も影響しているものと思われる。

既存4大メディア、すなわち新聞・雑誌・ラジオ・テレビの「広告費」という観点からの影響力の変化が分かるのが次の図。広告費全体に占める、それぞれのメディアの構成比を100分率でグラフ化したものだ。やはり2004-2005年は継続性は無いのでご注意を。

↑ 媒体別広告費(構成比推移、2001-2010年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)
↑ 媒体別広告費(構成比推移、2001-2010年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)

既存4大メディアを黒枠で装飾したが、その部分が2004-2005年以降じりじりと、しかも確実に減少していくのが手に取るように分かる。それ以前も小さな減退傾向は見られたが、この区分変更以降、はっきりと確認できる。

2004年-2005年に大きな変化があることから、「区分変更が要因では?」とも思えてしまうが、代わりに増加している項目が2010年で大きなプラスを見せた数少ない項目「インターネット」「衛星メディア関係」である事が分かると、納得もいくというもの。また、4大既存メディアでは唯一前年比プラスとなった「テレビ」も、今回は全体に占める割合を0.6ポイント増加させている。

要は繰り返しになるが「インターネットと衛星メディアが既存4大メディアの広告費シェア、特に新聞と雑誌を奪い取っている」のが分かる。ただし2010年に限れば「プロモーションメディア広告」も奪い取られる側に回っているのが見て取れる。



数少ない出世候補といえる「インターネット」「衛星メディア関係」だが、成長の伸びしろは大きいものの、その市場規模はまだ小さい。新聞や雑誌、テレビなどの既存メディアの広告費を吸収しきれるほどでなく、結果として総広告費は減少傾向にある(上の積み上げグラフを見れば一目瞭然)。とはいえ、元々広告を出稿する企業側のお財布事情が厳しいのだから、それは当然の話。そして逆にお財布事情が厳しいからこそ、同じ効用を狙えるならコストの低い媒体にスライドしているともいえる。

広告費躍進イメージもちろん旧来の広告メディアが消失することなどありえない。しかし、時代や技術の流れに沿う形で進化をしなければ、相対的・絶対的なコストパフォーマンスは落ち、魅力も減退してしまうだけの話。2005年あたりから顕著化した、広告費の構造変化は今後も継続していくに違いない。

なお余談だが、例えば雑誌の区分範囲は「全国月刊誌、週刊誌、専門誌の広告料および雑誌広告制作費」とある。そしてインターネット広告費は「インターネットサイト上の広告掲載費(モバイル広告を含む)および広告制作費(バナー広告等の制作費および商品サービス・キャンペーン関連ホームページの制作費)」と定義されている。同じ出版社への広告出稿の際に、紙媒体としての雑誌から、同雑誌のオンライン上に移行した場合、雑誌社に入る広告費は同じでも、今件統計のデータ上では「雑誌……マイナス」「インターネット……プラス」という動きを見せることになる。本文中でも触れているが、「雑誌」の急下降ぶりには幾分なりともこの動きがあることを付け加えておく。

スポンサードリンク


関連記事



▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2018 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー