「ファミ通DS+Wii」の二大特需は継続、PASH!も奮闘…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2010年10月-12月)

2011/02/14 06:45

【社団法人日本雑誌協会】は2011年2月10日、2010年10月から12月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、正確さという点では各誌が自ら発表している「公称」部数よりはるかに高精度、精密な値といえる。今回は「ゲーム・エンタメ系」のデータをグラフ化し、前回掲載記事からの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

それでは早速、まずは2010年の10-12月期と2010年7-9月期における印刷実績を見てみることにする。

2010年の7-9月期と2010年10-12月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2010年の7-9月期と2010年10-12月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

今回も幸いに対象雑誌そのものの増減は無し。状況については、やはり大勢として「Vジャンプがずば抜けた売上」「週刊アスキーの健闘」「アニメ系ではニュータイプがトップ」などの傾向は3か月前と変わらない。この傾向は2年以上継続したものであり、このジャンルにおける「鉄板トップ3」というところ。中でも「Vジャンプ」は本家のジャンプが少年向けコミック誌ではばく進しているのと似たような状態。ジャンプ二冠王体制は継続中。

また前期が「季節特性」(夏休みが入り「通勤・通学の際に購入されやすいタイプの雑誌の印刷数が減る可能性がある)が生じたこともあり、その反動として今期はプラスとなる雑誌が多いはずなのだが、あまり変化は無いようだ。いくつかの順位変動も確認できるが、動きがあった雑誌のうちいくつかはこの直後に解説しよう。

次に直近3か月における印刷数の変移はどのようなものか、グラフ化してみることにする。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)

3か月単位の変動値であり、季節特性だけでなく「取り上げている作品の人気」「新作映画やゲームとの関連」「付録」「前回期の動向」など、イレギュラー性の高い要因に大きく左右される可能性が高いことをあらかじめ書き記しておく。しかしながらホビー系の雑誌は多かれ少なかれその変動・特異性が宿命で、「イレギュラー性」を乗り越え、販売冊数を重ねていかねばならない。たとえばゲームソフト自身に大ヒット作が出なくとも「ソフトが売れないのでゲーム専門誌も売れませんでした」では経営陣も首を縦にふらない。

突発性要素による「ぶれ」の範囲をプラスマイナス5%台とやや甘めに見て区分わけすると、ネガティブが1誌、ポジティブが1誌となる。前期がネガティブ5・ポジティブ1だから、状況は改善したように推測できる。もっともこれは、やはり季節特性の反動によるところが大きいと見てもよいだろう。

販売「数」そのものでは上位陣に大きく後れを取っているものの(7.4万部)、今回もダイナミックな伸び率を見せた「ファミ通DS+Wii」だが、やはり『ポケットモンスター ブラック』と『ポケットモンスター ホワイト』、そして【任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」発売日は2011年2月26日、価格2万5000円に決定】などで触れている、任天堂の新型ゲーム機「ニンテンドー3DS」の事前情報によるところが大きい。さらに今回は2011年2月号における『ポケットモンスターブラック・ホワイト』限定コラボバッグが大きなインパクトとなった。まさに任天堂による神風が吹き続けているというところ。

何回か継続して追っている「PASH!」だが、今回は前期比で伸び率がプラス。ただし中期的な視点で見ると、起伏を織り交ぜつつ少しずつではあるが、部数を積み重ねているように見える。

さて定点観測を続けているおかげで都合一年分以上のデータが蓄積でき、中期的な視点からデータの推移を確認できるようになった。そこで今回も前年同期比の変化率をグラフ化する。これならいわゆる「季節特性」による影響は考慮することなく、純粋にその雑誌の動向を年ベースで確認できる。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系、前年同期比)

「アニメディア」「PASH!」などの健闘ぶりは前期と変わらず。独自性・企画の面白さや新しさが雑誌の売上における牽引力となっているようだ。一方で「アスキー・ドット・ピーシー」の落ち込みぶりは相変わらず。部数がすでに1万部を切っており、多少の動きも比率では大きく反映されてしまうのも一因だが、それにしても心配せざるを得ない。

「アスキー・ドット・ピーシー」と相反する形で「ファミ通DS+Wii」は直上にあるように前期との比較では大きく改善されており、前年同期比でもようやくプラスに転じた形。次回以降3期ほどは「前年同期の印刷部数そのものが低迷していたこと」「ニンテンドー3DSの発売で盛り上がりを見せる」という二つの点から、前年同期比で大きな飛躍が予想される。



前期と比べれば「前年同期比でマイナス値10%超えを示している雑誌」の数こそ減ったものの、印刷部数が漸減している雑誌がずらりと並んでおり、市場全体の不安程感は否定できない。一方で上位、前期比・前年同期比でプラスを見せる、あるいは堅実な動きをしている雑誌には「他誌には無い、自誌のオリジナリティ・コンテンツ(記事、付録、対象となる商品)や工夫」が際立つ傾向があり、それが読者に受けいれられ、印刷数(販売数)を伸ばしている。

不景気で可処分所得が減少し、さらに携帯電話や携帯ゲーム機に「読者になるかもしれない人たち」の時間を奪われる。その上ささいな情報なら即時にインターネット経由で手に入る環境が浸透し、雑誌に対する興味関心も薄れているのが現在のエンタメ世情(今回取り上げなかった芸能スポーツの業界でも状況は変わらない)。お金や時間を割いても「手にとって読みたい」と思わせるだけの魅力を出すには、「ひと山何百円」に見える同じようなものでは無く「他には無い特別な一品」に見える個性的な雑誌を、創り手側は送りださねばならない。

もちろん同人誌やサークル誌と違い、一定数量を販売する商業誌なのだから、適度な個性で留める必要がある。あまりにも個性が強過ぎると、かえって読者を減らしかねない。印刷部数上でプラスを見せている雑誌たちは、そのさじ加減を会得し、さらに試行錯誤を繰り返しながらも、プラスへの歩みを続けているに違いない。


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