【更新】「週刊少年ジャンプ」は「ONE PIECE」の休載と連載再開が影響か…少年・男性向けコミック誌部数動向(2010年10月-12月)

2011/02/13 19:30

【社団法人日本雑誌協会】は2011年2月10日、2010年10月から12月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、業界の動向を示す正確度は、各紙・各出版社が発表している「公称」部数よりはるかに高い。今回は当サイトの読者層を考慮し、もっとも読者にとって興味がそそられるであろう「少年・男性向けコミック誌」のデータをグラフ化し、前回発表分データからの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

まずは少年向けコミック誌。週刊少年ジャンプがトップにあることに違いはナシ。

2010年7-9月期と最新データ(2010年10-12月期)による少年向けコミック誌の印刷実績
2010年7-9月期と最新データ(2010年10-12月期)による少年向けコミック誌の印刷実績

「ジャンプ」は直近データで293万5000部。販売実数はこれよりも少なくなるので、前回と同じく250万部前後だろう。いずれにしても雑誌不況の中、驚異的な値であることに違いは無い。王者ジャンプの威厳は維持されている(もっとも最盛期である1995年時点の635万部と比べれば半分以下となってしまってはいるが)。

今回は前回に引き続き、計測対象の中で休刊などの理由からデータが失われたもの、逆にあるいは該当カテゴリーで創刊されてデータが加わった雑誌は無い。ある程度整理統合淘汰が進んだということだろう。このこと自体はおめでたい話ではある。しかし後述するように、各誌の印刷部数は減少傾向にあり、「踊り場」の先は下り階段であることに違いは無い。

続いて男性向けコミック誌。こちらも世間一般のイメージ通りの印刷部数展開。

2010年7-9月期と最新データ(2010年10-12月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
2010年7-9月期と最新データ(2010年10-12月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

【コミックバンチ、正式に休刊表明・年内に新創刊】でお伝えしているように、週刊コミックバンチは休刊してしまったので、前回から外れている。枝分かれするようにゼノンとバンチがそれぞれ月刊誌として発売されたが、【コミックゼノン】は2010年10月25日に発売され計測期間中に収まっているものの、データの登録は無し。新刊成った「コミックバンチ」は今年に入ってからの創刊なので、こちらも収録されていない。次回以降に期待しよう。その他新たに加わるような雑誌は無し。

さて、これで最新期とその前の期の印刷部数を棒グラフ化できたわけだが、続いてこのデータを元に各誌の(前・今期間の)販売数変移を計算し、こちらもグラフ化してみることにする。短期間の変移ではむしろこちらのデータの方が重要。

要は約3か月間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかという割合を示すもの。当然ながら、今回データが非開示となった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌はこのグラフには登場しない。幸いにも今回はそのような状況に該当する雑誌はナシ。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)

前期は「夏休み」が期間中に収まることで「通勤・通学の際に購入されやすいタイプの雑誌の印刷数は(前回と比べて減少している(=販売数が減る)」という「季節特性」によるマイナスの影響があった。今期はその反動もあってか、前期比プラスの雑誌が複数確認できる。

まず「別冊コロコロコミックススペシャル」の伸びが目立つが、これは絶対数がさほど大きくないのと、「ポケモン」周りが影響しているのだろう。「少年エース」は『2010年12月号』の付録、「そらのおとしもの」のイカロス胸像フィギュアがポジティブ要因になったと思われる。「コロコロコミックス」はイナズマTCGコロコロ限定カード「ミストレ&エスカバ」や「コロコロ11炎のDVD」などが付録についた『2011年01月号』のセールスが要因のようだ。

一方、比率としては小さめだが元々の印刷部数を考えれば相当大きな動きの「週刊少年ジャンプ」。これは言うまでも無く【「ONE PIECE」の休載がヤフーのトップに出る時代】【「ONE PIECE」連載再開。何か色々動きがあるネ】などで紹介した、連載漫画「ONE PIECE」の休載と連載再開に伴う盛り上がりと考えて間違いない。今作品は単行本のセールスも記録的な伸びを見せており、累計発行部数は2億部を突破。連載誌のセールスをも動かすほどの人気を改めて実証した形となった。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)
雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)

今回はプラスを記録したものは3誌。2誌だった前回と比べると、下げ幅も合わせさらに改善しているように見える。しかし「改善」とはいえ多くの雑誌が前年同期比マイナスであることに違いは無く、「男性向けコミック誌市場の現状が非常に厳しい」ことを改めて認識させてくれる。

トップを行く「ガンダムエース」は、100号記念となった『2010年12月号』がけん引となったに違いない。付録として「ガンダムエース幻の0号」が付き、富野由悠季監督による書き下ろしストーリーがあるとなれば、ガンダムファンが飛びついて当然の内容といえる。

さて一連の定点観測を続けているおかげで、過去のデータを用いて「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回もいわゆる「季節属性」を考慮しなくても済む「前年同期比」のグラフも掲載する(例えば今回なら、2010年10-12月と、その1年前の2009年10-12月分の比較というわけだ)。純粋な雑誌の販売数における、年ベースでの伸縮率が把握できる。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)

1年単位での変移を見ると、印刷数そのものでは勝ち組常連の「コロコロコミックス」がトップ。同じく勝ち組の「週刊少年ジャンプ」と肩を並べており、この部数にしてこの伸び率あり、という感。

それ以外ではほぼすべての雑誌で苦戦を強いられているのが分かる。特に週中発売の二大週刊誌「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」のうち、後者の現状が気になる。年1割超の売上減少は、容易ならざる事態……と、ここ数回にわたり同じ言い回しを使わねばならない状況なのが、少々切ない気持ち。しかも前回記事と見比べれば分かるが、状況は悪化する一方。

この数期に渡り数字的に不安視されている「少年サンデースーパー」や「月刊少年ライバル」は、元々印刷部数が少ないだけに比率上の下げ率も大きく見えてしまう。その点はある程度仕方が無いが、リスキーな状態に変わりは無い。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)

唯一「ヤングアニマル」がプラス圏にあるが、それ以外はすべてマイナス。10ポイント以上の下げ幅を記録している雑誌は4誌。前回の7誌よりは改善されたように見える。前回記事のデータと比べるとマイナスポイント数が幾分緩和された感はあるものの、豪快な下げ方をしている状況に変化は見られない。特に比較的部数の大きい「スーパージャンプ」の下げ率が気になるところ。昨今同誌ではテーマを設定して読み切りを展開したり、連載漫画作品に絡ませて展開をする号が見受けられるが、あるいはこのような状況が遠因なのかもしれない。



今回参照したデータのうち「単純前期比」においては、今期が季節変動によって売れ行きが前期より上がる傾向がある。しかしその効果があるにも関わらず、マイナス値が多いのは、雑誌の売上そのものの減少傾向が継続していることを如実に表している。

特に(単純に印刷冊数≒販売冊数という観点で、だが)男性向けコミック誌が相当危険な状態なのは一目瞭然。損益分岐点などを考えれば、「前年同期比で印刷部数がマイナス10%超え」を繰り返していたのでは、そう遠くないうちに立ち行かなくなるのは明らか。【4大既存メディア広告とインターネット広告の推移をグラフ化してみる(2011年2月発表分)】などにもあるように、雑誌の広告費は低迷を続けているが、それが改めて実感できる数字と言える。

【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…(下)購入世帯率や購入頻度の移り変わり】で触れているが、総務省統計局のデータによれば、雑誌・週刊誌では書籍同様に「購入する人がいる世帯の減少」「購入者の購入冊数の減少」と多元的な雑誌離れが起きている。言い換えれば「家族誰一人として雑誌を買わなくなった」「買っている人も買う冊数を減らしている」ということ。今データを見る限りではサラリーマンにおいて、その傾向が顕著なものと考えられよう。

逆に堅調さを続けている「コロコロコミックス」などのように、適切な読者ニーズをとらえることで、少年・男性向けコミック誌にもまだまだ復権は不可能ではない。特に今回少年向けコミック誌では適切な付録の添付によって大きく売り上げを伸ばした事例が複数確認されており、状況改善のヒントの一つになるに違いない。

また、紙媒体では無いため今データには反映されなくなるが、【「ジャンプSQ.19」創刊号、丸ごとiPadで無料配信・最新号とのセットも450円で提供へ】で紹介した事例のように、デジタルメディアへの積極的なアプローチも検証課題として挙げられよう。

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