百貨店やスーパーの分野別売上高推移をグラフ化してみる(2010年12月分まで版)

2011/02/14 12:10

デパート先日【小売業の売上推移をグラフ化してみる(2010年12月分まで版)】で経済産業省の商業動態統計調査を元に、小売業全体の売上動向のデータ更新を行った。今データでは他に以前百貨店やスーパーの動き、そして【「タスポ効果」の反動が…コンビニエンスストアの商品構成別売上推移をグラフ化してみる(2010年5月更新)】でコンビニの動向にもメスを入れている。コンビニは例の「大幅値上げの影響」がまだ続いているのでもう少し後回しにし、今回は百貨店やスーパーの動向を最新データのものに更新することにした。

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データ取得元は【経済産業省の商業動態統計調査】【統計表一覧】。ここに掲載されているデータは、百貨店・スーパーのもの。一方当サイトで業界団体発表の売上高を定期更新している「チェーンストア」とは、「百貨店」か「デパート」の違いがあるが、実際のところは表記上の違いでしかない(【百貨店 衣料品客離れていく 行き着く先はモールとネットに】で説明しているように「日本チェーンストア協会に加盟している大規模店舗で展開する総合小売業者がデパート、日本百貨店協会に加盟している大規模店舗で展開する総合小売業者が百貨店」という程度)ので、同一視して問題ない。

2009年分までは時系列データから「大型小売店業態別、商品別販売額及び前年(度、同期、同月)比」を取得。2010年分は11月までが確定、12月分は速報値が出ているので、月次分は速報値も合わせて12月分まで、2010年の年次ベースは1-12月分で平均値を算出する。

百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(年ベース、前年比、既存店)
↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(年ベース、前年比、既存店)

確定値が出てから算出すれば多少の差異は生じるかもしれないが、大局を見定めるにはこれで十分の精度といえる(次回更新時には改めて入力し直すことにしよう)。

元データの項目区分の都合上、衣料品・食料品はともかく、住関品は他のものと一緒になってしまっている。しかし比率的には「住関品+その他」においては住関品が圧倒的に多数を占めるので、変移を見る上ではさほど影響がないと見てよい。

さてグラフを見ると、

・1990-1991年までがピークで、あとは下降、ほぼ前年比マイナスを継続している。
・飲食料品は他分野と比べれば大きな変動がない(マイナス5%未満に収まっている)。
・住関品や衣料品は1992年-1993年の低迷時期を皮切りに、約5年のサイクルで大幅な減少を見せている。
・衣料品は特に下げ幅が大きい。住関品も同様の傾向を見せていたが、直近の下落期では衣料品の下げ方が著しい。
・衣料品、食堂・喫茶の2008年-2009年の下げ幅はこれまでのパターンを逸脱するほどのもの。
・2009年は全分野でマイナス、2010年もマイナスだが、下げ幅は縮小(売上高の前年比における絶対額がマイナスであることに違いは無し)。

など、昨今のチェーンストアの低迷が昨日今日に始まったことではなく、1990年前半以降継続した問題であることが分かる。特に住関品・衣料品は1990年代後半以降、2004-2005年の好景気をのぞけば前年比でマイナス3-6%の範囲で低迷したままで、両分野が深刻な状況にあったことが見て取れる。

それに加えて2009年においては、売上でかなりの部分を占めている飲食料品もマイナス。その上衣料品ではこれまでに無かった規模の下げ(マイナス11.4%)が確認できる。リーマンショック云々による直接の下げは2008年に起きているから、むしろ2009年はそれをきっかけに構造的な問題が加速度的に露呈していったと考えられる。2010年は下落幅が縮小しているが、いずれもマイナス圏にあるため、額面上は減少を続けている事に違いは無い。

また、注目したいのは食堂・喫茶。単価が低く、他の分野よりも直接客足に影響されやすい分野だが、こちらも衣料品同様のきつい下げが生じている。理由の一つは消費者の消費性向の変化(外食離れ)があるが、それと同時に店舗そのものへの来客数が大幅に減少している可能性を示唆している。

続いて先の記事同様に、2010年12月は速報ベース、それ以前は確定ベースのデータを元に、月次の推移をグラフ化する。スタートは2007年4月。昨今の金融危機による景気後退が影響を見せ始めた2007年夏の直前から。

百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(月ベース、前年同月比、既存店)
↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(月ベース、前年同月比、既存店)

1990年後半以降の定期的な低迷なら、前年同月比で悪くともマイナス6%前後に留まるはず。しかし2008年の後半以降、とりわけ同年秋以降下げ幅が底割れしている様子が分かる。月次ベースで逆算しても、2ケタ台の前年同月比マイナスはほとんど(全分野でチェックしても1997年に一度だけ記録があるだけ)なかった出来事なのにも関わらず、2008年秋口以降「マイナス8%・9%は当たり前、15%まで達しました」的状態なのが確認できる。

これらの傾向はいわずもがな、2008年9月の「リーマン・ショック」をきっかけにした景気の大規模な後退、さらにデフレ感、消費スタイルの大幅な変化が大きく影響している。元々景気後退感の香りがただよっていたところに、リーマン・ショックが黒船のごとく現れた感は否めない。

なお2009年末以降グラフが回復基調を見せているように見えるが、これはいわゆる「1年越しのトリック」によるもの。2009年が全般的に大幅に減少しているので、それから1年経過した2010年は「前年同月比で」状況が改善しているように見えるだけの話。前年比がマイナスである以上、売上そのものは減少を続けている事実に違いは無い(もちろん直近の数か月は、一部項目でプラスなため、その期間・項目は額面もプラスとなるが)。例えば2010年12月の全体売上額は204億3300万円。2009年12月は206億9100万円となる。

百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(億円)(2009年12月と2010年12月の比較、2010年12月は速報値)
↑ 百貨店・スーパーの主要分野別売上推移(億円)(2009年12月と2010年12月の比較、2010年12月は速報値)



これらのデータからは、ここ数年においてクローズアップされているチェーンストアの低迷振りは「1990年代以降露呈していた構造的な問題による売上低迷」に加え「昨今の景気後退による加速化」という、二つの要素によるものであることが分かる。2007年以降の景気後退がチェーンストアの業績悪化の主要因では無く、あくまでも後押しした・加速化させただけに過ぎない。例え2007年以降も好景気が続いていたとしても、現状のような状態は遠からず発生したものと見て間違いない。

人口の減少や可処分所得の漸減なども、売上減少の理由として考えられる。しかしそれでは、GDPが増加した時期や好景気の時に、売り上げが伸びないことへの説明がつかない。むしろ今件のチェーンストアにおいては「コンビニやディスカウントストアなどの登場」「インターネット通販の普及」「家族構成の変化」「消費者の消費性向の移り変わり」など、刻々と変わりゆく周辺環境の変化に対応し切れなかったこと(1990年前半にはすでにその傾向が見えていたにも関わらず、だ)に、昨今の売上低迷の起因があるのではないだろうか。

ここでピン、と来る人もいるだろう。この構造、実は(前回の記事でも指摘したように)【過去20余年の媒体別広告費の移り変わりをグラフ化してみる】で解説した、大手既存メディアの広告費の移り変わりと非常に似通っているのだ。低迷著しい両業界とも、流通や通信網をはじめとした社会構造が今世紀に入ってから大きく変化しているにも関わらず、その流れに対応していない、追いついていないゆえの結果と思われる。

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