エコポイント制度終了前の駆け込み需要への期待…2011年1月景気動向指数は3か月ぶりの下落、先行きは3か月連続で上昇

2011/02/08 19:30

内閣府は2011年2月8日、2011年1月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状は3か月ぶりに下落した。先行き指数は3か月連続して上昇傾向を見せている。基調判断は先月と変わらず「景気は、このところ持ち直しの動きがみられる」となった(【発表ページ】)。

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「やや良くなっている(悪くなっている)」が減少、「悪くなっている」が増加
文中・グラフ中にある調査要件やDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明している。そちらで確認のこと。

2011年1月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス0.8ポイントの44.3。
 →3か月ぶりの減少。「やや良くなっている」「やや悪くなっている」が減少、「悪くなっている」が増加。
 →家計においては年初初売りやセールで売上が伸びた一方、気象の悪化を開けて客足が鈍ったことに加え、家電エコポイントの制度変更で関連商品の売れ行きが落ち込み低下。企業は原材料価格高騰などのマイナス要因はある一方、海外からの受注増を受けて上昇。雇用は製造業だけでなく事務系派遣求人にも回復が見られ、上昇した。
・先行き判断DIは先月比プラス3.3ポイントの47.2。
 →3か月連続の上昇。
 →年末年始の勢いが継続する事、3月末のエコポイント制度終了前の駆け込み需要への期待から、全部門で上昇。
年始の消費の増加などを受け、数字がポジティブに動く部門が多く、またその勢いの継続や年度末の制度終了に伴う駆け込み需要への期待が見て取れる。

現状の雇用指数は大きく上がっているのだが
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表月分では家計がほぼマイナス(住宅関連は一応プラスだが、ほぼゼロ)、企業と雇用がプラスという、相反する動きを見せている。ここ数か月大きな伸びを続けていた「飲食関連」は、今月はもっとも大きな下げ幅を見せており、あらためて起伏の激しさが分かる。また、今回も雇用関係は標準値50を超えている状況で、昨今の新規雇用に関する報道を読み解く限りでは、信じ難い感は否めない。直前項目にあるように正規雇用ではなく派遣でも満足してしまう割合が増えているのか。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後で下落傾向が落ち着く状態となった。「各数値が1桁になるのでは」という懸念もあったが、2009年1月には横ばい、その後多少の上昇を見せ、2月以降はもみ合いながら上昇が続いていた。今月は先月から転じ、多少ながらも下降が確認できる。「合計」の値を見ると、リーマンショック以降は本来の値の中間にあたる「50.0」を天井として、その下側の領域でもみ合いを続けているようだ。

雇用関係の数字は今回は大きくプラス。50どころか60に届きそうな勢い。他の値では小売関係が昨年7月に唯一50を超したのみで、あとは50を下回っている。この勢いの良さを見るにつけ、「もう少し身の回りの実体的な雇用情勢が改善されていてもいいのだが」と思わずにはいられない。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは良い状態。
・政策や外因、円高などを起因とする
不安感から低迷状態は継続中。
・天井観確定、雇用のみ上昇の動きは
2003年後半以降の再来?
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、今回の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素が、多種多様な方面においていちどきに、連鎖的に悪影響を与えた状況が数字、そしてグラフにも表れている。その後の様子は直前で説明しているように、「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態。

また、雇用指数とその他の指数の差が大きくなる様子は、2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもある。このパターンを踏襲するとなると、「現時点の」景気がしばらく継続することもありうる。

景気の先行き判断DIについては、先月から続く形で上昇した。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

現状指数がプラスマイナス双方存在していたのに対し、先行きはすべてプラスとなり、非常に美しい形となった。年度末のエコポイント絡みでの駆け込み需要を期待している割には、小売関係の値がやや小さめなのが気になるが。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線などは当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいは下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、大きな不安感の中にある人々の心境を叩き落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる。

今月は先月同様に方向性はわずかだが上向き。飲食、製造業の動きが比較的大きく、さらに雇用も大きめの値を見せている。

年度末への期待とスマートフォンと
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・気温の低下に伴って衣料品が堅調に売れており、久しぶりに来客数、販売点数が前年を10%上回っている。年始に福袋がヒットしたほか、機能性下着などの好調が要因となっている(スーパー)。
・1月は雪の日が多く、気温も低かったため、タクシー利用客数もまずまずであった(タクシー運転手)。
・初売りやクリアランスといった購買を喚起するような仕掛けに対する反応は大変良いものの、日常においてはいまだに節約志向が続いており、景気はまだ上向いていない(百貨店)。
・大雪の影響で客の来街及び来店回数は低下しているが、新幹線の延伸開業効果で、観光客など地域外の客は確実に増加している(商店街)。
・エコカー補助金の終了による販売台数の反動減は大変厳しいものがあるが、修理部門が補っている状況である(乗用車販売店)。
・スマートフォンが人気で売れてはいるが、在庫入荷が伴っていない。普通の携帯電話を買うつもりの客が、スマートフォンに流れているのが目立つ(通信会社)。
・初売りやセールのあった1週間は非常に盛り上がったものの、成人の日以降は厳冬の影響もあり、来客数や販売量が急激に悪化している。セールも防寒商材以外は売上が鈍化している(百貨店)。
・人の動きがあまり多くなく、客単価も相対的に低い(一般レストラン)。
・新築の受注状況は年が明けても相変わらず鈍い状況である。エコポイントの利用件数は増えているものの、基本的な新築棟数自体は増えていない(住宅販売会社)。
・初売りは比較的天候に恵まれ順調であったが、中下旬は大雪のため来客数が大幅に減少した(衣料品専門店)。
・エコポイント制度の変更後はテレビの販売量が減少し、売上全体を押し下げている(家電量販店)。
・口蹄疫が落ち着いたところに鳥インフルエンザ、火山の噴火、それによる灰の被害等で客の購買はかなり閉塞感を帯びている(一般小売店[青果])

■先行き
・エコポイント終了の3月末に向けて対象商品を中心に売上の盛り上がりが見込まれる。ただし、その後4月以降の反動減も予想される(家電量販店)。
・少しずつ高額品に動きが出ている。3月には九州新幹線が全線開業するため、人の動きが活発になり、街全体が活性化される(百貨店)。
・昨年夏から堅調に推移している婦人服は、今後、マザーニーズ、フレッシャーズ等、比較的高額品への拡販に期待が持てる(百貨店)
などとなっている。年始のイベントに救われた声は多いが、その後が反動的に軟調になる話も少なくない。またエコポイントなど2009年夏までの「遺産」で持たせている雰囲気のところも多々見受けられる。珍しいところでは「普通の携帯電話を買うつもりの客が、スマートフォンに流れているのが目立つ」というものがあり、スマートフォン人気の一環を指し示すものとなっている(ただし在庫入荷が伴っていないという気になる表現も同時に行われている)。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、国内外に多発する
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は継続中。
景気底上げ対策も
次々打ち切られ・縮小。
先が読みにくい時代へ。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。基本的に現在も2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはない。特に現状指数において、雇用関連と他の値に明らかな「かい離」が見え始め、2003年後半以降と似たような状況になりつつある。

だが同時にこの数か月言及しているように、アノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況を、現実として認める必要がある。とにかく数字の回復力が足りない。基準値の50が大鉄板の雰囲気が強い。

よって2003年以降の「企業・家計指数が50前後を行き来する」パターンではなく、そこから全数値がやや下に下がった状態、すなわち本来「平均値」を示す50を天井・上限とし、マイナス圏でのもみ合い、あるいはさらなる下落の動きが継続する可能性は高い。円高は続き、原油価格の高騰で灯油価格の値上げも気になり始め(しかも現状ですら、円高に救われている)、効果のある景気抑揚策は確認できない。

読者諸氏におかれては一部の(これまでは「これで十分」と判断してきた)情報に惑わされたり、知り得るべき情報から隔離され、正しい判断をするのに足る材料を手に入れ損なうことが無いよう、各自努力を続けてほしい。特に雇用周りの値を見ていると、回答者の判断基準が少しずつ甘くなっているような感すら覚えてしまうものだ。

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