YouTube視聴の伸びでDVDソフトの売上アップ・有意差確認される

2011/02/03 12:10

検証独立行政法人経済産業研究所が2011年1月に私的研究成果としてディスカッション・ペーパー(議論喚起を目的とした論文。研究所の見解を示すものではない)の形で発表した【ネット上の著作権保護強化は必要か-アニメ動画配信を事例として】が話題を呼んでいる。YouTubeをはじめとした動画共有サイト上における、著作者側が許諾を与えていない掲載動画において、どれだけの被害を与えるか・収益増加が果たせるかを検証したというものだ。今検証においては「YouTube上では著作権者は被害を受けず、むしろ利益が生じている」という結果が出ている。

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↑ YouTube累積再生数の推移(ファイル単位)(「Bamboo Blade」第一話)(F1-F7はそれぞれ別個のファイルを意味する)
↑ YouTube累積再生数の推移(ファイル単位)(「Bamboo Blade」第一話)(F1-F7はそれぞれ別個のファイルを意味する)

↑ DVD 売上、レンタル回数、YouTube ファイル交換数、Winny ダウンロード数の典型的時系列パターン(縦軸は毎週の販売量・ダウンロード量などの数量)
↑ DVD 売上、レンタル回数、YouTube ファイル交換数、Winny ダウンロード数の典型的時系列パターン(縦軸は毎週の販売量・ダウンロード量などの数量)

今調査・研究は著作権の保護とビジネス機会の棄損という、常に論議されている問題に対し、「ネット上での私的コピーが著作権者の利益をどれくらい損なうか」という観点で行われたもの。CDについてはすでにいくつかの検証により「音楽ファイルに強い著作権保護をかける必要はなく、ユーザの利便性を高めるためにDRM は緩めにした方が良い」という結果が出ており、これがiTunesの成功の背景にあったと見られている。

これが果たして動画(特にアニメ)などにも適用されるか否かについて、相当量の実態ファイルを基に検証されたものが今件の論文内容。具体的なデータソースとしては2007年10月-2008年6月までの9か月の間に放映が開始されたテレビアニメ111本に対し、YouTubeとWinnyを対象に、再生数・ファイル転送量をベースにしたおおよそのダウンロード数を確認。さらにオリコンが発表するDVD 売上ベスト100の中からテレビアニメの売上本数を抽出、CDVジャパンが集計しているレンタル回数のデータを基にレンタル関連の数字を確認、比較検証を行っている。

検証のプロセスや詳しい状況はリリースで確認してほしいが、結果の概要としては、

・動画においても私的コピーが引き起こす被害は限定的。
 Winny……ファイル交換がレンタルを減らす効果は認められるが、DVD販売には影響が無い。
 YouTube……むしろDVD販売を増やす効果がある。この販売増加効果は特にテレビ放映の終了後に大きくなっており、Yいわばテレビ放映が終わった後に作品を宣伝する効果を持っていると解釈できる。
・WinnyではなくYouTube による配信が利益を生じさせているかについては、
 1.YouTube はカジュアルユーザが利用しているので宣伝効果がでやすい
 2.YouTube はWinny に比べ画質がやや劣ること
 などが考えられる。
・売り上げを増やす以上、著作権者はYouTube へのアプロードについては寛容になったほうが自らの利益となる。すなわち、動画に関する著作権保護強化はファイル交換対策程度にとどめておき、現状の動画投稿サイトに関しては宣伝手段として利用するスタンスをとったほうが合理的である。
・政策的含意として、すでに導入された政策ではあるがダウンロードの非合法化はあまり望ましい政策ではなかったことになる。

↑ YouTube視聴、WinnyダウンロードがテレビアニメのDVD売上・レンタル回数に及ぼす影響(数値は弾力性)
↑ YouTube視聴、WinnyダウンロードがテレビアニメのDVD売上・レンタル回数に及ぼす影響(数値は弾力性)

と結論付けている。その上で、民間企業が損得勘定から自らの判断で動画配信の是非に関する判断は行われ(必然的により利益を得る方向の選択肢を取るため)、政策的なサポートは必要としないものの、集団行動(カルテル)をとっているときは問題であるとしている。つまり権利者が著作権団体を通じた団体行動をとると、一律に著作権を強化する方向に走りやすく、個々の判断による試行錯誤が失われてしまい、商業的な観点における損得勘定が出来なくなる恐れが生じる。そこで著作権者が権利行使について団体行動を取らず、個々の著作権者が自らの判断で行動できるように監視することが、1つの対策になると提唱している。

検証実際には個々の状況による違い(放送頻度、時間帯やエリア、対象となる視聴者の属性、競合他媒体や作品、作品の内容などにおける反復視聴の傾向が強いか否か、著作権者自身のこだわり・意向など)があるため、今回の検証結果は一律的な絶対法則として認識されるべきではない。しかし同時に、多数の作品を対象に、中期的かつ客観的な計測データ(再生回数だけでなくDVD販売本数やレンタル回数も含めた商業的データも合わせて)を基にしたものであり、十分以上に各種判断において参考になる論文として評価できよう。

特にレンタル開始・DVD発売日前後における、YouTube動画の動向と、その動画が果たしている役割の検証は非常に興味深いものがある。該当分野に興味がある人、及び著作権を有している関係者は、是非一読をお勧めする。


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