食料品がメインの高齢者は額も小さめ、だが…世代別・万引きの被害額などをグラフ化してみる

2011/02/03 07:13

万引き先日展開した記事【「高齢者万引き数増加」の話をグラフ化してみる】で、未成年者と高齢者の万引きに関わる問題を書き連ねた。この記事は警視庁が2009年に公開した【万引きに関する調査研究報告書(PDF)】の掲載データを基にしている。この報告書は警視庁が2009年4月から6月にかけて行った調査をまとめ分析したもので、万引きの被疑者(捜査機関に「犯罪を犯した」との嫌疑を受けて捜査の対象となっているものの、まだ公訴を提起されていない人)からの聞き取り内容が豊富に盛り込まれているため、資料価値の高いものである。今回はその中から、「万引きの被害額」「困窮度と万引きの目的物の関係」についてグラフ化を行うことにする。

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今調査は万引きの被疑者1050人を対象にしたもの。その構成・年齢階層は少年(未成年者)40.8%・成人39.8%・高齢者(65歳以上)19.4%。男女比は644対406人。未成年者の学年区分は小学生12.4%・中学生45.6%・高校生30.6%・その他11.4%(未成年者中の比率)。成人のうち40.9%、高齢者では40.2%が一人暮らしをしている。また成人の22.2%・高齢者の42.2%が「資産無し」と答えている(収入無しは成人45.2%・高齢者32.4%、生活保護受給者は成人8.1%・高齢者18.6%)。さらに今件は「万引き全体」ではなく、被疑者を母体としていることに留意する必要がある。

万引きとは先の記事にもあるが「窃盗の一種」「営業時間中の商店・小売店などにおいて、販売を目的として展示・陳列してある商品・見本および展示・陳列のための備品などを、店側の目を盗んで窃取する行為」と定義づけることができる。つまり「窃盗」の一形態に過ぎないのであり、「窃盗」などと比べて軽い犯罪だという認識は間違いである。

以前の記事で、調査母体における目的物について触れたが、これによれば世代が上になるほど食料品の割合が増える傾向にある。高齢者では実に8割近くが食料品を対象にしている。

↑ 万引きの目的物
↑ 万引きの目的物(再録)

実際にコンビニやスーパーを見まわしてみれば分かるのだが、いくら昨今の素材価格の値上げがあるからといって、一つで数千円もするような食料品は滅多にない。高齢者が食料品を中心に目的物としていることもあり、被害額(1品あたりではなく、1件あたりの総額)も、高齢者の方が少額となる。

↑ 被害額(1件当たり総額)
↑ 被害額(1件当たり総額)

「5000円以内」の区切りで見ると少年69.2%・成人70.3%なのに対し、高齢者は85.8%。高齢者の目的物が安価な食料品であることが改めて確認できる(食料品でも例えばキャビアやフカヒレ、マツタケなどの単価が高い商品もあるが、それらをメインとしているわけではないということだ)。

また世代区分ではなく、被疑者自身の生活状態への認識区分(自分の生活が困窮しているか否か)で、目的物が食料品か否かを再集計したのが次のグラフ。「生活が困窮している」と自認している人ほど、食料品をターゲットにしているのが分かる。

↑ 困窮度合いと目的物
↑ 困窮度合いと目的物

興味深いのは「普通」「裕福」、そして「困窮」「やや困窮」でそれぞれ比率がほぼ同じこと。「生活が苦しいナ」という認識が、食料品に対する強い「誘惑」を引き起こしている事に違いない。その一方で、具体的な困窮度合いとはあまり関係が無い事も認められる。漠然とした生活状態に対する不安が、手身近な消耗・消費品である食料品を注目させてしまった感は強い(【節約のターゲットは「食衣住」の順・今後も外食は大いに削減】などにもあるように、節約という観点でも最初に食料品がターゲットとなる)。



この2件のデータだけを見ると、「生活に困窮した高齢者が、経済上の不安を覚え、少しでも出費を減らすために、身近な食料品に手を出す」という構図が見えてくる。しかし冒頭で解説したように、今調査母体においては「成人の22.2%・高齢者の42.2%が資産なし」「成人8.1%・高齢者18.6%が生活保護受給者」である一方、「収入無しは成人45.2%・高齢者32.4%」であることから、一概に「単なる」経済上の不安だけで食料品に手を出したとは言い切れない感がある(後ほど別記事で解説するが、金銭的なものだけでなく、人間関係・社会関係上の「不足」も大きな引き金となっている)。

一部報道で「高齢者の万引き増加は生活の困窮化によるもの」と断じていたが、それだけに焦点を当てると、物事の本質を見失いかねない。注意が必要といえよう。

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