理想と予定、子供の数の推移をグラフ化してみる…(下)理想数まで子供を持たない理由

2011/01/30 12:10

先に2011年1月25日付で掲載した記事【日本の「恋愛結婚」「見合い結婚」の推移をグラフ化してみる】において、厚生労働省の【出生動向基本調査】のデータを活用した。これには少子化問題をはじめとした子供や夫婦間の問題を検証するのに役立つデータが多数盛り込まれている。今回はその中から、夫婦における子供数の「理想」と「予定」の項目に焦点を当てて考察を試みることにする。今記事は【理想と予定、子供の数の推移をグラフ化してみる…(上)理想数と予定数推移】に続く下編として、理想の子供数より予定子供数が少ない世帯について、「なぜ理想の子供数を持たないか」の理由について見ていこう。

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用いる資料は【統計データの収録先】で、記事執筆時点で最新のデータとして確認できる【第13回出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査夫婦調査の結果概要】。2005年6月1日時点で妻の年齢が50歳未満の夫婦を対象に、無作為抽出した1048か所から700地区を選定。その上で配票自計・密封回収方式で行っており、有効回答数は2005年調査では6836組。そのうち初婚同士の夫婦5932組について集計が行われている。

まずは直前の記事で「例えば三つ子などが生まれるような事例をのぞけば、ある程度調整は可能。ただし子だくさんとなってから「やはり少ない方が良かったかな?」とばかりに、「理想」<<「予定(+すでに生まれている子供)」となる場合もある。元データでは子供が4人以上の夫婦で、平均値としてその傾向が確認できる」とした件について。現存子供数別に夫婦を区分し、それぞれに「理想の子供数」と「予定子供数=現存子供数+追加予定子供数」を集計した結果が次のグラフ。現存子供数が3人までは「理想数」の方が高く、3人でトントン、それを超えると利用よりも予定数の方が多くなる。

↑ 現存子供数別に見た、平均理想子供数と平均予定(=現存+追加予定)子供数
↑ 現存子供数別に見た、平均理想子供数と平均予定(=現存+追加予定)子供数

つまり、現在の子供数が2人までは「理想としてはもっと欲しいけど、予定はそれより下」、3人で「理想と同じくらいだネ」、4人以上は「理想よりちょっと多いかな」という意識が平均的な夫婦のコンセンサスとなるわけだ。

それではそれら夫婦のうち、「理想子供数より予定子供数の方が少ない夫婦」について、「なぜ理想の子供数まで予定として産もうとしないのか」、その理由を複数回答で聞いたものが次のグラフ。妻の年齢別に区分してあるので、夫婦の、特に妻の事情によって大きな変移があるのが確認できるものとなっている。

↑ 妻の年齢別に見た、理想の子供数を持たない理由(予定子供数が理想子供数を下回る夫婦限定、複数回答)
↑ 妻の年齢別に見た、理想の子供数を持たない理由(予定子供数が理想子供数を下回る夫婦限定、複数回答)

トップは「子育てや教育にお金がかかり過ぎる」。これは差異があれど、妻の年齢に関係なく最上位にある。他に主な傾向を見ると、

・「子育てや教育にお金がかかり過ぎる」「家が狭い」は妻の歳が上がると共に減少する。金銭的余裕が出るからか。
・「高年齢で産むのはいや」「育児の精神的・肉体的負担に耐えられない」「健康上の理由」「欲しいけれど出来ない」は高齢になるにつれて増加する傾向がある。
・「夫の家事・育児への協力が得られない」は若年の妻の方が高い。若夫婦だと夫の理解が得にくいのかもしれない。
・「自分(妻)の仕事に差し支える」は若年の妻の方が高い。共働きが多いか、仕事へのこだわりが強い可能性が高い。

などが確認できる。

ちなみにこれらの値の総計を前回比(3年前比)で見ると、経済的負担・高齢出産を避ける部分で増加が確認できる。

↑ 理想の子供数を持たない理由(予定子供数が理想子供数を下回る夫婦限定、複数回答)(総計、前回調査結果との比較)
↑ 理想の子供数を持たない理由(予定子供数が理想子供数を下回る夫婦限定、複数回答)(総計、前回調査結果との比較)

具体的な理想・予定子供数別に見ると……
以上は全体、及び妻の年齢階層別による、「理想子供数より予定子供数の方が少ない夫婦」について、「なぜ理想の子供数まで予定として産もうとしないのか」の理由づけだった。次に示すのは「理想子供数より予定子供数の方が少ない夫婦」における、「理想子供数と予定子供数の内訳別、理想の子供数を持たない理由」。子供の数と、「理想より予定が少ない理由」について、何らかの関係があるのか否かが分かる。

↑ 予定子供数が理想子供数を下回る夫婦の内訳
↑ 予定子供数が理想子供数を下回る夫婦の内訳

↑ 理想・予定子供数の組合せ別、理想の子供数を持たない理由(予定子供数が理想子供数を下回る夫婦限定、一部)
↑ 理想・予定子供数の組合せ別、理想の子供数を持たない理由(予定子供数が理想子供数を下回る夫婦限定、一部)

ポイントはグラフ中に赤い丸で示した三つ。一つは「理想も予定も子供数が多くなるほど、金銭負担を重圧として認識し、理想子供数より減らす傾向がある」、一つは「予定子供数が少数の夫婦では、望んでいるが出来ない場合が多い(状況をある程度自認している)」、そして最後は一つ目と類似しているが「理想も予定も子供数が多くなるほど、家の狭さがプレッシャーとなる」である。

概して「予定数が少ない夫婦は身体的な問題」「予定数が多い夫婦は経済的な問題」が重しになっているのが分かる。



以前【いわゆる「未婚の母」による出生率をグラフ化してみる】で、少子化・出生率の低下を「先進国病」と表したが、今回のデータもそれを体感できる結果が出ている。理想子供数以下の予定子供数を計画している夫婦の多くは、その主要原因として「経済的な問題」を挙げている。これは「現状経済が厳しい」「経済状態が良好になれば出生率・子供数の増加が見込める」ことを意味するが、同時に「経済状態を見据えた上で、夫婦が出生や子供数をコントロールする傾向が強まっている」ことをも表している(「経済的な問題」と認識しているからこそ、子供の数を意図的に押さえているわけだ)。

この動きは新興国の少なからずの国で見られる傾向「貧しいならばさらに子供を産み、少しでも働き口を増やす」という考えとは逆行している。これは子供が成人になるまでの保護者としての教育・養育方針の違いであり、概して先進国ほど「子供が成人になるまで両親が手厚く保護する」傾向が強まり、必然的に家庭全体の経済的負担も大きくなるからである。

そろばんつまり「先進国ほど家計における子供に対する、保護のための負担が大きくなる(時間の長短だけでなく期間単位レベルでも)」「経済的観念も高まる」「よって子供の保有数を計画する際にも”ソロバン勘定”の要素が強まり、必然的に無理な人数を出産しなくなる」という次第である。これが先進国病たるゆえんといえよう。

もちろん「ならば出生率を上げるには、夫婦に金をばら撒けば良いのか」という回答は愚策以外の何物でもない。そのような短絡思考を持つのはゲームの世界だけで結構。【覚え書き......フランスとドイツの家庭生活調査-フランスの出生率はなぜ高いのか-】で例示しておいたが、先進諸外国ではトライ&エラーの形でさまざまな試みが行われている。(これまでの記事で提示した「非嫡出子」の社会的認知とサポートも一つだが)総合的なシステムを創り上げた、あるいは補強した上での手厚い保護、言い換えれば「社会全体で見守る仕組み」が求められ、実際に構築され、それが成果を上げつつある。さらにこれまでの各種少子化関連の記事を読み返せば、解消策のヒント、先例はいくらでも見つけることができよう。


■一連の記事:
【理想と予定、子供の数の推移をグラフ化してみる…(上)理想数と予定数推移】
【理想と予定、子供の数の推移をグラフ化してみる…(下)理想数まで子供を持たない理由】

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