変わりつつある、「一番大切なもの」

2014/11/05 15:02

個人の価値観によって対象は多種多様なものとなるが、世の中には大切なもの、大事なものはたくさん存在する。それでは「一番大切なものは何ですか」と問われた際に、人は何を挙げることになるのだろうか。改めて考えると案外難しいものである。今回は統計数理研究所による定点観測的調査【日本人の国民性】の結果を元に、精神的な充足感、心のよりどころ、価値観といった観点から、その実情を探ることにする。

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一番大切なものは自分の命や健康から家族へ


調査要件などは今調査の結果を元にした先行記事【「若者は自分勝手で他人より自分のことばかり」は本当か】を参考のこと。今回焦点を当てるのは「一番大切なもの」そして「『あの世』というものを信じているか」の2点について。つまりは精神的な面から見た、価値観の動向を確認していくことになる。

まずは一番大切なものを一つだけ具体的に挙げてもらい、それを集計の際にある程度の項目に集約したのが次のグラフ。データ上に記載されているが、調査時には調査員に対して「品物、愛情、子供などなんでもよいが、こちらからは絶対に例をあげるな」という注意がなされている。要は誘導尋問の類になることの無いように注意しろ、ということ。

↑ あなたにとって一番大切と思うものはなんですか。一つだけあげてください(全データから精神面的なもの+αのみ抽出)
↑ あなたにとって一番大切と思うものはなんですか。一つだけあげてください(全データから精神面的なもの+αのみ抽出)

全項目を盛り込むと煩雑になる、そして物理的なものは比較的少数意見となる場合が多かったので、主に精神的な項目、そして比較対象となりうる項目のみを抽出した。

もっとも古いデータとなる1958年当時は「生命・健康・自分」など、自分自身に関する肉体的な安らぎとなる対象がトップについている。しかしそれは時と共に漸減。相対する項目として取り上げられることが多い「愛情・精神」も大きな変化は無く、昨今では言葉通り「心身」共に同じくらいの値を示している。一方物理的な欲求としてもっとも挙げられやすい「金・財産」は明らかに漸減している。

それら各項目が横ばい、あるいは少しずつ値を減らす中で、唯一大きな伸びを見せているのが「家族」。1958年時点では12%しかなかったものの、うなぎ登りに値が上昇し、2008年では46%にまで達している。直近の2013年ではやや値を落としているが、高水準を維持していることに違いは無い。特に1973年-1983年にかけて大きな上昇カーブが確認できるが、この時期はいわゆる高度成長期と重なり、【1950年の20代後半男性未婚率は3割強・世代別未婚率の推移をグラフ化してみる】でも指摘した「パラダイムシフト」(認識や思想、社会全体の価値観などの劇的な変化)が起きた可能性を示唆するものとして注目に値する。核家族化の進行と共に、もっとも身近な存在である「家族」をより大切に思う心が養われつつある、と考えることもできる。

また【「若者は自分勝手で他人より自分のことばかり」は本当か】でも指摘したが、昨今の若年層においては「自分の好き嫌いはさておいても人のためになることをしたい」と考える若年層の増加が確認でき、若年層の対人面における心理的な変化が見えてきたのが分かる。

↑ 「自分の好きなことか否かはともかく人のためになる事」の比率(再録)
↑ 「自分の好きなことか否かはともかく人のためになる事」の比率(再録)

高度経済成長・核家族化の進行という急激な社会変化の中で、家族観に対する大きな変化が発生。そして昨今のしいたげられた状況・社会的な変化で、若年層の間に新たな変化が生まれつつある。つまり「社会変化に伴いその作用を受けた層において、心理的な変化も生まれる」という推論を立てると、これらの状況の変化を説明することが可能となる。


ちなみに「家族」を選んだ人の世代別傾向だが、70代以降がやや低めに出ているものの、それ以外の多勢では世代別の差異はあまり見られない。あえて傾向付けを行うとすれば、30代から50代がいくぶん高めに出ている。

↑ あなたにとって一番大切と思うものはなんですか。一つだけあげてください(全データから精神面的なもの+αのみ抽出)(「家族」の回答率)
↑ あなたにとって一番大切と思うものはなんですか。一つだけあげてください(全データから精神面的なもの+αのみ抽出)(「家族」の回答率)

この世代では親子同居で住まう場合が多く、回答者の自宅に子供が居る状況が多分に考えられる。その状況ならば、家族が一番大切と回答する人が多いのも、納得がいくというものだ。

「あの世」を信じるか


この「心理的な変化」について2008年の調査時点では解説において「閉塞した社会状況の中で、人々が新たな精神的充足や心のよりどころを模索していることの現れ」と表現していた。その傾向の一つとして「あの世」を信じるか否か、という項目が調査結果には確認できる。

↑ 「あの世」というものを信じているか(信じている人の割合)
↑ 「あの世」というものを信じているか(信じている人の割合)

設問が存在したのは直近分も含めて3回分のみなのでその比較をするしかないが、若年層で大きな伸びが確認できる。また2013年では直前の調査結果から40代と50代で他世代と比べた高い伸び率が見受けられる。2013年ではこの世代がもっとも「あの世を信じる人の割合」が大きいことになる。

信じる信じないは個人の自由ではあるが、このような状況を悪用したペテン師らにだまされることのないように願いたいものだ。


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