子供達の視力の推移をグラフ化してみる

2011/01/14 07:00

眼鏡っ子先に【眼鏡もコンタクトレンズも使わない人は3割足らず】で眼鏡やコンタクトレンズをかけている人の割合に関する調査結果を記事にし、その参考事例として高等学校までの低視力者率(0.7未満)を調べたところ、想像以上に比率が高いことが分かった。また、これについて「ゲーム機のやり過ぎが原因なのではないか」とする意見もいただいた。因果関係を調べるのは不可能だが、相関関係くらいなら分かるかもしれないということで、今回は子供達の視力の推移についてグラフ化を試みることにした。

スポンサードリンク


データ取得元は文部科学省の【学校保健統計調査】。ここで各年のデータを抽出して入力……していたのだが、データ上の不具合もあるし、収録されている年数には限りがある。そこでe-Statで調べたところ、【学校保健統計調査の年次統計】の「学校種別 疾病・異常被患率等の推移」に該当データを見つけることが出来た。1979年から2010年までに至る、幼稚園・小学校・中学校・高等学校の、視力1.0未満全体、1.0未満-0.7以上、0.7未満-0.3以上、0.3未満の人の、それぞれの学校生徒全体に占める比率が収録されている。

まずはこれを基に、視力1.0未満の割合の推移を折れ線グラフ化する。「裸眼」とは眼鏡をかけない状態で、という意味だ。

↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年-)
↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年-)

中学生までは中期的に1.0未満の人が漸増する傾向にあるが、高校生は1990年代前半でほぼ増加は頭打ち。しばらく横ばいを見せた後、2000年以降はむしろ減少傾向にある。

続いて学校別に、1.0未満の中身を細分化(1.0未満-0.7以上、0.7未満-0.3以上、0.3未満)して積み上げグラフ化する。合計値が上のグラフと同意となるわけだ。

まずは幼稚園。

↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年-、幼稚園)
↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年-、幼稚園)

一般的には視力が0.7を切ると眼鏡をかけた方が良いと言われている。直近では6.60%が該当するが、幼稚園児の20人に1人以上は眼鏡をかけている計算になる。またこの30年では多少増えたかな、というくらいでほとんど変わりが無いのが分かる。

続いて小学校。

↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年-、小学校)
↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年-、小学校)

これは誰の目からみても明らかに上昇傾向にある。特に視力0.7未満の割合が増加しているのが一目瞭然。この30年間に0.7未満の割合は2倍以上の増加が確認できる。

中学校はどうだろうか。

↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年-、中学校)
↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年-、中学校)

増加傾向は穏やかではあるものの上昇していることに違いは無く、また視力のより低い人の割合が多いことが分かる(元々小学校より多いのは事実なのだが)。

最後に高等学校。これは意外な変化を見せている。

↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年-、高等学校)
↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年-、高等学校)

1.0未満の人のみの折れ線グラフでも触れたように、1990年代前半で頭打ちとなり、21世紀に入ってからは減少傾向にある。また構成をみると、0.3未満の「特に視力の弱い人」が減少しているのが分かる。これは「学校保健統計調査」の最新版でも「高等学校の「裸眼視力1.0未満の者」及び「裸眼視力0.3未満の者」については、ここ10年、減少傾向となっている」という言及があり、その傾向認識が間違いではないことが分かる。



子供の視力低下の話になると、必ず「ゲーム機が」「携帯電話が」と責任をその両者に限定する動きがある(権威あるメディアほどその傾向が強い)。確かにデータ取得が始まった1979年以降では、1980年後半あたりから視力低下=視力の低い人の割合の増加が確認でき、相関関係にあることは分かる。この時期は家庭用ゲーム機の革命機とも言える、ファミリーコンピューターが登場し(1983年)、普及しはじめた時期でもある。

眼鏡しかしそれでは1990年-2000年前半における横ばい、さらには高校生の21世紀に入ってからの減少の説明が出来ない。上昇する部分はゲーム機や携帯電話の責任、横ばいや減少は無関係、というのでは合理的な考えとはいえない(特に高校生において、携帯電話が普及しはじめた2000年後半以降に視力が下がっている部分は仮説「携帯電話が視力低下の一因」と逆行した結果が出ていることになる)。

利用スタイルや普及率を考慮すれば、ゲーム機や携帯電話が関係していることは疑う余地は無い。しかしそれがすべてではない。想定できる視力低下の要因としては、睡眠時間・就寝時間の変化、食生活の変化、雑誌や新聞などの普及率・購読率の変化、学習スタイルの変化、テレビの普及率・視聴率の変化、周辺環境の変化(遠目で物を見る機会の変化)など、実に多種多様な要因が想定され、視力の変化に及ぼす影響が考慮されねばならない。

にもかかわらず、「子供達の視力が低下しているのは、ゲーム機のせい(だけ)だ」と断じるのがいかに恥ずかしいことなのか。もう一度よく考えてほしいものだ。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2017 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー