持ち直しか…2010年12月景気動向指数は2か月連続の上昇、先行きも2か月連続で上昇

2011/01/13 06:53

内閣府は2011年1月12日、2010年12月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状は2か月連続して上昇した。先行き指数も2か月連続して上昇傾向を見せている。基調判断は先月から転ずる形で「景気は、このところ持ち直しの動きがみられる」となった(【発表ページ】)。

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「良くなっている」「悪くなっている」が減少、「(やや)良くなっている」が微増
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値に関しては今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認をしてほしい。

2010年12月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス1.5ポイントの45.1。
 →2か月連続の増加。「悪くなっている」「良くなっている」が減少、「やや良くなっている」が増加。
 →家計においてはエコポイントの制度変更に伴う需要があるが、クリスマス商戦での動きなどで上昇。企業は原材料価格の上昇や受注単価の下落があるものの、機械周りで受注増の動きが見受けられ、上昇。雇用は製造業を中心に求人の動きが見られるものの、正規職員の採用に慎重な態度が続いていることもあり、低下。
・先行き判断DIは先月比プラス2.5ポイントの43.9。
 →2か月連続の上昇。
 →家計部門では消費の一部での改善の動きへの期待、製造業での受注確保などから上昇。
年末の消費の増加などを受け、数字がポジティブに動く部門が多く、喜ばしい状態といえる。

リバウンドか持ち直しかそれとも本格上昇か
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表月分では上昇幅に違いはあるものの、雇用関連以外の項目すべてでプラス。「飲食関連」は先月に続き大きな伸びを見せており、この半年間の起伏の激しさを再確認できる。また、今回はやや下落したがそれでも雇用関係は標準値50を超えている状況で、昨今の新規雇用に関する報道を読み解く限りでは、とても信じ難い雰囲気は否定できない。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン(ズ)・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後で下落傾向が落ち着く状態となった。「各数値が1桁になるのでは」という懸念もあったものの、2009年1月には横ばい、その後多少の上昇を見せ、2月以降はもみ合いながら上昇が続いていた。今月は先月から続き、多少ながらも増加が確認できる。「合計」の値を見ると、リーマンショック以降は本来の値の中間にあたる「50.0」を天井として、その下側の領域でもみ合いを続けているようである。

雇用関係の数字は今回はマイナス。ただし一応50は超えている。他の値では小売関係が昨年7月に唯一50を超したのみで、あとは50を下回っている。「もう少し身の回りの実体的な雇用情勢が改善されていてもいいのだが」と思わずにはいられない。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは良い状態。
・政策や外因、円高などを起因とする
不安感から低迷状態は継続中。
・天井観確定、今は小反発?
それとも回復の兆し??
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、今回の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素が、多種多様な方面においていちどきに、連鎖的に悪影響を与えた状況が数字、そしてグラフにも表れている。その後の様子は直前で説明しているように、「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態。

景気の先行き判断DIについても、先月から続く形で上昇した。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

現状指数が雇用以外は全部プラスだったのに対し、先行きは飲食・サービス関連でマイナスを見せている。現状で勢いのある飲食にマイナス値が確認できるのは、クリスマス・年始商戦の鎮静化が容易に想像できるからだろうか。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいは下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン(ズ)・ショック」)が、大きな不安感の中にある人々の心境を叩き落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる。

今月は先月同様に方向性はわずかだが上向き。小売、非製造業の動きが比較的大きく、これが全体を引っ張る形となっている。

年末商戦で救われた?
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・おせちあるいはクリスマスケーキの販売量が貢献したのだと思うが、売上高と販売量が増えている(コンビニ)。
・クリスマス商戦では高額品に動きがあり、特選ブティック、アクセサリーが好調である(百貨店)。
・旅行全体での取扱額が前年比131%と伸びている。団体旅行で高校修学旅行の件数が増加し、個人旅行も海外旅行の販売が前年比132%だったことが主な要因である。反面、個人の国内旅行は宿泊券の販売が振るわず、前年比7.4%減と不振となっている(旅行代理店)。
・年末のため、住宅展示場への来場客数が前月より減少している。しかし、営業担当者の接客の感想としては決して悪い雰囲気ではなく、3か月前と比べ変わらない(住宅販売会社)
・エコカー補助金終了後の反動が年末にかけてピークを迎えており、来客数は依然として前年比70%と減少傾向で、新車、整備部門共に収益性を欠いている(乗用車販売店)。
・エコポイント制度の変更で11月は駆け込みの需要があったが、12月はやや低迷している(家電量販店)。

■先行き
・客の低価格志向は続いているが、クリスマスの予約商品の買上客数と購入量が前年を超えるなど、堅調な部分もあるため、今後も変わらないまま推移する(コンビニ)。
・前月同様に販売台数が落ち込んでいるので景気は変わらないが、イベントによってはかなり来客が増えてきている。低燃費、低価格の車両が出そろい次第、市場が動く。客は今、様子をうかがっている(乗用車販売店)。
・現在の状況では客を呼ぶことは難しい。3か月先に新たな制度もないので、来客数が減少し単価的にも厳しいため、全体的にやや悪くなる(衣料品専門店)。
などとなっている。年末のイベントで気分的に盛り上がり、また、昨年の落ち込みと比べればといった比較論も多い一方で、絶対数的な動きもちらほらと見受けられる。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、国内外に多発する
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は継続中。
景気底上げ対策も
次々打ち切られ・縮小。
景気回復は足踏み、あるいは緩昇か。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。基本的に現在も2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはない。だがこの数か月言及しているように、アノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況を、現実として認める必要がある。唯一共通しているのは、「雇用指数が他の指数と比べて上」ということくらい。とにかく数字の回復力が足りない。基準値の50が大鉄板の雰囲気が強い。

よって2003年以降の「企業・家計指数が50前後を行き来する」パターンではなく、そこから全数値がやや下に下がった状態、すなわち本来「平均値」を示す50を天井・上限とし、マイナス圏でのもみ合い、あるいはさらなる下落の動きが継続する可能性は高い。円高は続き、原油価格の高騰で灯油価格の値上げも気になり始め(しかも今回は「ガソリン値下げ隊」の出動は無い。円高なのが幸いなところ)、効果のある景気抑揚策は確認できない。

読者諸氏におかれては、自分自身で考え、調べる能力を身につけることを強くお勧めする。分からなければ周囲の人に聞き、知恵を授かるなど積極的な行動も取ってほしい。もちろん聞く相手を間違え、余計に事態が悪化しないよう、信じるに足る人を見出ださねばならないのは言うまでも無い。日常茶飯事的に垂れ流される情報に浸かるだけでなく、ほんの少しでも自分で考えることを始めれば、今まで見えてこなかった、新しい、そして正しい判断をするのに必要な情報が得られるに違いない。

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