アメリカ合衆国のいわゆる「未婚の母」による出生率(最新)

2023/02/14 02:23

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2023-0213先に【アメリカ合衆国の人種別出生率の詳細】においてアメリカ合衆国の主要人種別出生率の詳細を調べ、主に非白人系の人たちが同国の出生率を引き上げている現状について精査を行った。結果としては属性別に大きな差があるものの、いずれも現状値は日本よりはるかに高い値を示していた。この高値の一因として挙げられるのが、アメリカ合衆国の出生率関連での社会的側面ともいえる「未婚の母」(婚外子出生者)の問題。今回はそれらの実状に関して実情などを確認していくことにする。

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アメリカ合衆国の出産数の4割は未婚の母によるもの


元となるデータはアメリカ合衆国の疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)内にある【人口動態統計レポート(National Vital Statistics Reports)】から、人種別の合計特殊出生率(Total fertility rate)の最新データが含まれている「Births: Preliminary Data for XXXX」(速報値)あるいはあるいは「Births: Final Data for XXXX」(確定値)と銘打たれている、毎年1回発行されるレポート。このデータにおいて、「各属性の出産数のうち、結婚していない女性によるもの(Percent of births to unmarried women)」のデータを逐次抽出していく。データが確認できる1998年までのものを探し(「women」が「mothers」など表記が変わっている場合もあった)グラフ化したのが次の図。例えば最新データとなる2021年なら、同年にアメリカ合衆国で出産した子供のうち40.0%は「未婚の母」によるもの(婚外子、非嫡出子)となる。なお今記事ではいずれも確定値を用いている。

そして不足している過去のデータは【National Vital Statistics System】から抽出可能なものに関して値を取り出して加えていく。1999年以前は一部属性についてデータが未公開のため、グラフで欠けなどが生じている。なお今件では黒人・白人は非ヒスパニック系に限定した値を採用している。また2016年以降において、「アメリカンインディアン・アラスカなど」や「アジア・太平洋諸国」の人種上の区分に変更が生じた可能性があり、結果が多少イレギュラーなものとなっている(数字の限りでは両区分間に変更があったように思われる)。

↑ アメリカ合衆国の婚外子出生率(主要人種別)
↑ アメリカ合衆国の婚外子出生率(主要人種別)

日本では2%前後でしかない(【いわゆる「未婚の母」による出生率】)婚外子出生率だが、アメリカ合衆国では全体で4割、合計特殊出生率の一番高いヒスパニックで5割強、黒人では7割強。これはアメリカ合衆国をはじめとして諸外国では「結婚しないまま子供を出産する」(非嫡出子)のが社会的・文化的に容認されつつあること、国や社会全体が支援する仕組みを構築しつつある(あるいは個人の「何とかなるだろう」との楽観的な考え方、「そうせざるを得ない」的な悲観的状況の増加など)が要因にあると考えてよい。ちなみにアメリカ合衆国国内のアジア・太平洋圏系の「婚外子出生率」は10%強のまま推移しており、過去からの推移も含めて他の属性と比べて極めて低い。文化的な発想・結婚に対する考え方の違いが表れているのかもしれない。

アメリカ合衆国でも進む「高齢」出産化?


データ精査の際にもう一つ目にとまったのが、若年層の出生率。こちらも人口動態統計レポートの各種データから年齢階層別の出生率を取得したものだが、ここにもヒスパニック系の盛んな出産動向が見て取れる。なおこちらではアジア方面の区分は「アジア」のみとしている。

↑ アメリカ合衆国の出生率(未既婚問わず、年齢階層別・主要人種別)(2021年)
↑ アメリカ合衆国の出生率(未既婚問わず、年齢階層別・主要人種別)(2021年)

白人は25-34歳が出産のボリュームゾーン。それに対し黒人は20-34歳、ヒスパニックも20-34歳。黒人やヒスパニックは高出生率の年齢階層が白人よりも幅広いことになる。さらにヒスパニックでは25-29歳での出生率が10.8%と高率。

またアジアでは出産のボリュームゾーンが25-39歳と高めだが、30-34歳では10.5%と大きく伸びて最大値を示しており、やや高齢の出産が盛んであることが分かる。

さらに例えば15-17歳では白人が0.3%なのに対し黒人は0.9%、ヒスパニックも0.9%などの高値を示していることからも分かる通り、20歳未満の出産も概して黒人・ヒスパニックの人たちによるものが多い。アジア・太平洋諸国では逆に少なくなっているのはやや意外なところか、あるいは文化的な違いの表れか。



日本は「未婚」と「未出産」がほぼイコール(非嫡出子は全体の1-2%前後でしかない)。そのため、未婚化・晩婚化が進めば、当然のことながら合計特殊出生率も低下していくことになる。一方で先進諸国の一部で合計特殊出生率が増加しているのは、主に今回のアメリカ合衆国のように「婚外子出生率の増加」「ヒスパニックなど出生率が高い傾向にある一部移民の増加」の2要因によるところが大きい。

日本の場合は元々文化傾向として「婚姻」と「出産」が結びついており、その社会文化が維持されたまま「未婚化・晩婚化」が進んでしまったのが少子化の一因。この「未婚化・晩婚化」の要因としては「経済的な不況」「若年層に対する労働市場環境・経済環境の悪化」「社会リソースの高齢層への偏りに伴う、若年層の将来見通しへの下方修正傾向」など複数の要因が挙げられているが、その他に「結婚のスタイル」の変化、つまり「見合い結婚の減少」が遠因であるとの指摘もある。

「未婚の母」に関する問題は本人らの意志はもちろん、文化的側面、社会的側面、人口の維持観点など、多方面から考慮すべき問題に違いない。その上で、アメリカ合衆国の実情は、大いに参考になるものといえよう。


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