出版物の書店立地条件別での売上変化をグラフ化してみる

2010/12/13 07:19

先に【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる】で記したように、出版物の販売額の調査データを収録した書籍【2010年版『出版物販売額の実態』を調達】し、それを元に各種データの精査を行う不定期連載記事。今回は2009年の出版物売上高の前年比推移(つまり直近での売上の変化)を、書店・店舗の立地条件から見ていくことにする。

スポンサードリンク


まずは立地別の売上高前年比。「SC」とは「ショッピングセンター(Shopping Center)」のことを指す。郊外店の下げ方が無難な線で収まっているのは、いわゆる「複合店」が郊外に多いから? と邪推もできる。

↑ 立地別売上高前年比(2009年)
↑ 立地別売上高前年比(2009年)

それにしても「ビジネス街」の書店における下げ率が酷い。1年で1割近くの減少。

そこでその「ビジネス街」に限り、細かい分類別で確認をすると、ほとんどの項目で全体の平均を上回っているのが分かる。

↑ 分類別売上高前年比(2009年、ビジネス街)
↑ 分類別売上高前年比(2009年、ビジネス街)

↑ 分類別売上高前年比(2009年)
↑ 分類別売上高前年比(2009年)(全体平均、再録)

辞典などは前年比で2割近い減少と、目も当てられない状態。可処分所得の減少でお昼の食事代のやりくりが厳しくなる昨今、お仕事人たちにとっては、仕事中の昼休みに立ち寄った本屋でちょっとした「気づき」程度では本を買う余裕などなくなったということなのだろうか(朝や帰りがけにも仕事場付近の本屋に立ち寄ることは可能だが、仕事で外にいる際のお財布の中身が気になるという点では何ら変わらない)。

特に「ビジネス街」にも関わらず、「ビジネス書」の販売が11.3%のマイナス、「専門書」が14.2%のマイナスなのが気になる。それぞれ全体平均の約2倍の下げ幅を見せており、少なくとも素人目で見た限りでは相性の良さそうな分野での「壊滅的な売れなさ」が確認できるからだ。かろうじて「実用書」が全体平均よりもおだやかな下げに留まっているのが救われる。

さて、その「ビジネス街」も含め、立地条件別における書店の動向はどのようなものなのか。書店では額面上大きな売上を占める3大分類「雑誌」「コミック」「文庫」(全体ではこの3区分で売上全体の約2/3に達する)、それに加えて「新書」の計4区分を抽出したのが次のグラフ。4区分に限っても、「郊外」店舗が健闘しているのが一目瞭然。

↑ 分類別・立地別売上高前年比(一部、2009年)
↑ 分類別・立地別売上高前年比(一部、2009年)

それと同時に改めて「ビジネス街」店舗の大変さが分かる。一方「駅前」は(マイナスには違いないが)それなりに低めな数字に留まっている。これは最初のグラフにもある通り。

単純に世間一般に言われるところの「立地条件の良さ」なら「商店街」「ビジネス街」なども変わらないはずだが、不思議なものだ。「雑誌」と「コミック」の双方で数字の良さが際立っていることから、「周辺地域住民と通勤客の双方のお客が来店するため、良いとこどりができる」という想像もできるが……残念ながら今件データではそれ以上の確証は持てない。



今回確認した「立地条件別の売り上げ動向」で一番意外、注目すべきなのは、やはり「ビジネス街」での動き。比較的ユーザーニーズが把握しやすく、商用地としても悪くないはずだが、もっとも売れそうなタイプの出版物が一番売れていない。これは本文中でも触れたように、働き人の可処分所得の減少による「衝動買いに近い出版物の購入」が大きく影響しているものと考えて良い。その裏付け的傾向として、【携帯電話代と自分をみがく費用以外はガマンしなきゃ? サラリーマンのお小遣い事情】に挙げた、「こづかいの使い道として欠かせないもの」を再掲載しておこう。

こづかいの使い道として欠かせないもの(2009と2010年の差異)
こづかいの使い道として欠かせないもの(2009と2010年の差異、サラリーマン対象、再録)

見事に「雑誌・書籍代」が変移の上で最下位となっている。このようなマインド低下があれば、「ビジネス街」の書店の不調ぶりも理解できよう。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2017 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー