出版物の種類別売上の変化をグラフ化してみる

2010/12/12 19:30

先に【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる】でも説明しているが、先日、出版物の販売額の調査データを収録した書籍【2010年版『出版物販売額の実態』を調達】し、その掲載データを基に各種精査を行う不定期連載記事。今回は出版物の大まかな区分別における、2009年の売上前年比と、書店の規模別で、その前年比がどのような違いを見せているかについて、グラフ化することにする。

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まずは出版物の分類別、売上高の前年比なのだが……グラフの形状が異常な形になってしまっている。

↑ 分類別売上高前年比(2009年)
↑ 分類別売上高前年比(2009年)

【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる】でも触れたように<出版物の売上高は漸減傾向を続けている。当然2008年と比べて2009年の売上高もマイナスではあるのだが、「出版物の分類によってその減少ぶりには違いがある」こと、そしてその一方で「全分類でマイナス」なのが分かる。特にマイナス値が大きいのは「新書」「辞典」「文芸」。「雑誌」や「コミック」は世間一般に騒がれているほど、比率では減少率は高くないことが分かる(ただし後日別記事で解説するが、この分類での絶対金額は大きなものがあり、低い比率でも減少「額」は相当なものとなる)。

他方、書店の規模別では特に傾向は見られない。

↑ 店舗規模別売上高前年比(2009年)
↑ 店舗規模別売上高前年比(2009年)

「書店規模」と「分類別売上高前年比」を掛け合わせると……
興味深い傾向を見せているのは、この2つの掛け合わせ。つまり、書店規模別に、出版物の分類別売上高前年比に違いが確認できるのだ。大きく「大規模書店ほど好業績」「小規模書店ほど好業績」の2区分に該当する、出版物分類項目をそれぞれ抽出し、グラフ化を行うことにする。

最初は「大規模店舗ほど好業績」の分類。「好業績」といっても「前年比マイナスの値が小さい」ものがほとんどなので、表現としては「悪くない」「業績悪化度が小さい」とした方が妥当かもしれない。ともあれ、スケールメリットが効いている分類だ。

↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、大規模ほど好業績)(2009年)
↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、大規模ほど好業績)(2009年)

「コミック」に至っては大規模店舗は前年比プラスを見せている。これはネット通販で体験したことも多いであろう「まとめ買い」「同一漫画の連続巻買い」が大規模店舗なら可能な場合が多いことに起因すると見て良い。小さな本屋だと場所の問題もあり、コミックは大抵最新刊とその数巻前くらいしかない。一方大型店舗なら全巻がずらりと揃い、関連書籍まで用意されているため、「ついで買い」もしてしまいがち。様々な企画コーナーを設け、利用者の購買意欲を高めることもできる。

「新書」のマイナス値は酷いものだが、それでも300坪以上の店舗の場合は、それより少面積の書店と比べ、数ポイントではあるものの勝る結果が出ている。

また「コミック」「文庫」「新書」の共通点を考えると「市場包括型」と表現ができる。世間一般で知られている、どこででも一様にニーズがある、浅く広く買われる可能性が高い出版物。それだけに「広さ」が大きければ大きいほど、受け止められるニーズも多くなり、連鎖反応的な購入も期待できるという次第。

これとは逆に、「小規模店舗ほど好業績」な分類もある。やはりこちらも「好業績」というよりは「悪化度が小さめ」なのだが。

↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、小規模ほど好業績)(2009年)
↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、小規模ほど好業績)(2009年)

「実用書」はやや厳しめ、「学参(学習参考書)」も少々ばらつきがある感は否めないが、いずれにせよ200坪以下の小規模書店の方が悪化度合いが小さい。これら分類の共通点を探すと、「地域密着型」あるいは「学校用教材」あたりに落ち着く。

小規模書店なら周囲の住民からの注文、子供向け雑誌の定期購読を引き受け、それらの売り上げはほぼ鉄板。ところが大型店舗は大型であるがゆえに、地域に多数存在するわけではなく、小回りも利きにくい。子供向けの月刊誌を数駅先の大型書店まで買いに行くより、自転車で数分のところにある個人営業の書店で定期購読した方が、はるかに楽なのは言うまでも無い。



マーケティングもちろん「大型店には児童書や辞典を置く必要ナシ」「小型書店はコミックも新書も文庫も要らない」というわけではない。むしろそこからさらに一歩踏み出して、「地域特性やニーズ、他店舗(規模の違いという意味で)が出来ないサービスを見極め、それを重視した販売スタイルを目指すべき」ということを暗示していると考えるべき。言い換えれば「規模の違いを超えて、適切なマーケティングをすべき」ということ。複合型書店の業績が比較的堅調なのも、他分野の商材との相乗効果を狙えるのも一つの原因だが、その他にも「データの分析や商品(この場合は出版物)の適正化がうまくいっている」のも一因ではないかと思われる。

もっとも全体値がほぼマイナスに移行している以上、分類別の最適化を果たしても売上をプラスに転じさせるのは難しい。さらに何か底上げするような工夫が求められるのだが……。

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