エコポイントの制度変更に伴う駆け込み需要…2010年11月景気動向指数は4か月ぶりの上昇、先行きも2か月ぶりに上昇

2010/12/08 19:30

内閣府は2010年12月8日、2010年11月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状指数は4か月ぶりに上昇した。先行き指数も2か月ぶりに上昇傾向を見せている。基調判断は先月と同じ表現である「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」となった(【発表ページ】)。

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「(やや)悪くなっている」が減少、「やや良くなっている」が微増
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値に関しては今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認をしてほしい。

2010年11月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス3.4ポイントの43.6。
 →4か月ぶりの増加。「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少、「やや良くなっている」が増加。
 →家計においてはエコポイントの制度変更に伴う駆け込み需要があり、さらに冬物衣料の動きなどで上昇。企業は原材料価格の上昇や受注単価の下落があるものの、機械周りで受注増の動きが見受けられ、上昇。雇用は製造業を中心に求人の動きが見られるなどで、上昇。
・先行き判断DIは先月比プラス0.3ポイントの41.4。
 →2か月ぶりの上昇。
 →家計部門ではエコポイント制度の変更に伴う駆け込み需要の反動で下落したが、円高による先行き感に改善が見られたために企業動向や雇用関連では上昇した。
季節通りに気候が動いたことや、為替の変動による状況の好転化など、外部的要因が多いものの、数字がポジティブに動いたことには違いなく、喜ばしい話ではある。

現状は全項目でプラス、先行きは……
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表月分では上昇幅に違いはあるものの、すべての項目でプラス。「飲食関連」は先月に続き大きな伸びを見せており、この半年間の起伏の激しさを再確認できる。また、昨今の新規雇用に関する報道を読み解く限りでは、雇用関係の標準値50を超えている状況はとても信じ難い感はある。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン(ズ)・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「各数値が1桁になるのでは」という懸念もあったものの、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降はもみ合いながら上昇が続いていた。今月は先月から転じて、多少ながらも増加が確認できる。「合計」の値を見ると、まさに中間の「50.0」を天井として、その下側の領域でもみ合いを続けているようにしか見えない。

雇用関係の数字は今回はプラス。他の値では小売関係が7月に唯一50を超したのみで、あとは50を下回ってばかりのことを考えると、「もう少し身の回りの雇用情勢が改善されていてもいいのだが」と思わずにはいられない。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは良い状態。
・政策や外因、円高などを起因とする
不安感から低迷状態は継続中。
・天井観確定、今は小反発?
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、今回の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素が、多種多様な方面においていちどきに、連鎖的に悪影響を与えた状況が数字、そしてグラフにも表れている。その後の様子は直前で説明しているように、「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態。まるで水準値のはずの50が、天井値であるかのようだ。

景気の先行き判断DIについても、先月から転じて上昇した。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

現状指数が全部プラスと平坦な状況だったのに比べて、先行きはやや個性にあふれる動向を見せている。企業動向と雇用はプラスなものの、実質的に家計はすべてマイナスという、相反するというものだ。これは冒頭でも触れたように、円高の状況緩和が家計よりも企業に大きく影響し、それが雇用にも関係しているからのようだ。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン(ズ)・ショック」)が、大きな不安感の中にある人々の心境を叩き落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる。

今月は先月と比べると方向性はわずかだが上向き。ただし勢いがあるのは雇用だけで企業は横ばいに近く、家計にいたっては実質マイナス。天候は明朗というわけにはいかなそうだ。

秋でややプラスもイベント終了と円高でかなりの痛手
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・気温の低下に伴い、衣料品を中心に防寒商材が動いている。今年は厳冬の予想で、各メーカーでも生産が活発化している。その一方、特選ブランドや宝飾品といった高額雑貨については売上が今一つとなっている(百貨店)。
・家電エコポイント制度変更に伴う駆け込み需要があった(家電量販店)。
・たばこの値上げの影響も少なくなり落ち着いてきた。たばこの単価が上がり、その分購入する客が減少しているのが現状である(コンビニ)。
・10、11 月と受注が前年比60%台になり、収益に大影響を及ぼしている。このまま行くと上期の黒字を食い潰してしまう。新型車の予約販売を行っているが、今一つ盛り上がりがない(乗用車販売店)。
・消費低迷の傾向は続いており、客単価も下落している。ディスカウントストアなどの多店舗展開につられて、周辺店舗の価格も下落する負のスパイラルが進行している(スーパー)。
・観光宿泊では、紅葉も終わり、ホワイトシーズンとの端境期ということもあり、宿泊客が減少している。また、円高・不景気感なども影響してか、例年と比べて予約状況が大幅に悪化している。消費動向をみても、エコ家電に消費が回っており、観光旅行に消費
が回ってきていない(観光型ホテル)。

■先行き
・先月のたばこ値上げで変化した分が思ったよりも早く金額ベースで戻ってきたので、この分でいけば今までと変わらない状況になる(コンビニ)。
・家電エコポイント制度の終了後に反動が出て、売上の減少は避けられない(家電量販店)。
などとなっている。気温が下がり、今年の冬の予想が厳寒ということもあり、冬物の動きが良いとの話があちこちで見受けられる。一方で「景気の良い業態もあるが」と前置きした上で自業態の苦戦ぶりを語ったり、一見改善しているように見えるが実情は厳しいものが続いている様子がコメントされている。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、国内外に多発する
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は継続中。
景気底上げ対策も
次々打ち切られ・縮小。
景気回復は足踏みか。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。基本的に現在も2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはない。だがこの数か月言及しているように、アノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況を、現実として認める必要がある。唯一共通しているのは、「雇用指数が上」ということくらいだ。とにかく数字の回復力が足りない感が強い。

よって2003年以降の「企業・家計指数が50前後を行き来する」パターンではなく、そこから全数値がやや下に下がった状態、すなわち本来「平均値」を示す50を天井・上限とし、マイナス圏でのもみ合い、あるいはさらなる下落の動きが継続する可能性は高い。円高は続き、これから冬にかけて灯油価格の値上げも気になり始め(しかも今年は「ガソリン値下げ隊」の出動は無い。それどころが実質的に「値上げ”し”隊」となり、自らまつりごとを行っている)、効果のある景気抑揚策は確認できない。それはまるでこれからの肌身を突き刺すような寒空の中、薄着で過ごす事を間近にして嘆き悲しんでいる人たちが、さらに手袋や上着をはぎ取とられ、それらが自分達に仇為す人たちに配られているかのような場面ですらある。

読者諸氏におかれては、自分自身で考え、調べる能力を身につけることを強くお勧めする。分からなければ周囲の人に聞き、知恵を授かるべきだ。もちろん聞く相手を間違え、余計に事態が悪化しないよう、信じるに足る人を見出ださねばならないのは言うまでも無い。ほんの少しでも自分で考えることをはじめれば、今まで見えてこなかった、新しい、そして正しい判断をするのに必要な情報が得られるに違いない。

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