書店の売上高などをグラフ化してみる(2010年・「出版物販売額の実態」版)

2010/12/10 12:20

先に【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる】で記したように、出版物の販売額の調査データを収録した書籍【2010年版『出版物販売額の実態』を調達】し、各種データの精査を始めている。今回は書店の売上などの営業成績についてグラフを生成し検証を行う。直近データについては先日帝国データバンクの調査したものを元に【出版業界の決算状況をグラフ化してみる】でまとめているが、今回はもう少し対象が広い範囲のものを、違った視点から眺めることができる。

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まず売上について上位20社のものをそのままグラフ化する。

↑ 書店売上高ランキング(億円)
↑ 書店売上高ランキング(億円)

ぱっと見で分かるのは、売上高上位の企業が軒並み2008年と比べて2009年では売上を落としていること。一方でジュンク堂を筆頭に、フタバ図書や三省堂など、健闘を見せる書店も多いのが分かる。またこの類の記事では必ず登場するヴィレッジヴァンガードコーポレーションも、当然のことながら売上増(ただし同社は2009年の新規出店数59店で第一位を見せており、店舗数の増加も売上増に寄与していることは間違いない)。さらには虎の穴、八重洲ブックセンターなど、一部地域・一部趣味趣向の人にはなじみ深い書店も20位以内のランキングなら収まることが確認できる。

なおグラフ中にもあるが、文教堂は2008年度に持ち株会社化した関係で決算期を変更しており、2008年のデータは半期分となってしまっている。同じ月日で売上高を2倍増にしたわけではない。

続いて売上高について、前年比を計算し、その上で高い順から並べてみる。トップはヴィレッジヴァンガードコーポレーション。店舗数の増大と合わせ、集客力の高さがこの立ち位置を確保している。

↑ 売上高前年比(2009年)
↑ 売上高前年比(2009年)

文教堂については前述の通り決算期の変更により、このままの数字だとおかしな具合になるので、今グラフでは前期の数字を単純2倍化したものを比較対象として用いている。マイナス8.1%というのはあくまでも例外的なもので、同社の実力を推し量るには来年以降にならないと難しい。

また全体で見ると最初のグラフで触れたように、規模の大きな書店がそのまま売上を伸ばしているとは限らないのが分かる。ヴィレッジヴァンガードコーポレーションや、第2位のリブロ(新規出店数は32店で第2位)は店舗数の増加が寄与するところも大きいが、それ以外、例えばフタバ図書やニューコ・ワンのように複合店タイプや、ジュンク堂書店や虎の穴のように抜きんでた特徴(ジュンク堂なら「オールマイティ的に充実した品ぞろえ」、虎の穴なら漫画やアニメ系に特化した)を持つ書店が目に留まる。ちなみに「虎の穴」とは「とらのあな」のことで、平仮名の表記の方がよく知られているが、社名としては「虎の穴」と漢字表記の方が正しい。

次に、店舗数と売上高が掲載されているので、そこから店舗当たりの売り上げを単純計算したものをグラフ化する。書店によって業態は異なり、中には出版物以外の売り上げも含まれている書店もあるが、「複合店も合わせ書店として展開しているお店の売上」ということで認識すると共に、参考値のようなものとして見定めてほしい。

↑ 店舗当たり売上(2009年、億円)
↑ 店舗当たり売上(2009年、億円)

店舗内における出版物の販売比率などもあるが、大体店舗規模のイメージと売上高は比例している感がある。丸善や紀伊国屋書店、八重洲ブックセナターは大きく、ヴィレッジヴァンガードコーポレーションやリブロなどは(新規出店店舗数ではいずれも上位)小さめである。

最後に「売上高経常利益率」。これは以前【書店の売上高・経常利益率をグラフ化してみる(2010年1月更新版)】などで解説しているが、要は「その会社の本業と副業を合わせたお仕事の利益率」を意味する。例えばこの値が10%なら、1000円の商品を売ると100円の儲けが出ている計算になる(本当はもっと細かい計算があるのだがここでは省略)。この値が大きいほど、「賢い・割の良い商売」をしているわけだ。逆に言えば売上高経常利益率が低いほど、何らかのトラブルが生じた時に金銭的な対応が難しくなる。大きなお金が行き来しているのに、自分の手元に残るのはほんのわずかでしかないからだ。

↑ 売上高経常利益率(2009年、上位10位)
↑ 売上高経常利益率(2009年、上位10位)

ヴィレッジヴァンガードコーポレーションの利益率の高さは相変わらず。そしてオー・エンターテイメントだが、これはオークワのグループ会社の立ち位置にある、総合エンタメ店。本を扱うのはもちろんだが、その他にDVDやCD、さらには別事業体としてボーリング場、シネコンやスポーツクラブ、総合中古メディア取扱い店まで行っている。単なる書籍取扱い点と比べて利益率が高いのは、このエンタメ分野におけるカバー率の高さがポイントなのだろう。



類似記事で繰り返し、あるいは先日の記事への反応の中でも同意見が多数寄せられているのだが、メインが出版物・文具の店舗においては「規模の極力な拡大(店舗数、1店舗当たりの売上)」で何とか経営を維持しているのに対し、「書籍・文具”も”取り扱う」企業は1店舗あたりの規模が小さくとも高い収益率を挙げているのが改めて確認できる。

書店の業績不振云々という話についで見直すと、元々出版物や文具の収益構造の根幹にある「規模が大きくないと儲けにくい」「他業種との兼業で無いと利益をあげにくい」という要素は前々から存在しており、それが昨今においては目立ち始めただけの問題ともいえる。

また、規模の拡大などで昨今の難局を乗り切ろうとしている書店も、過去の類似記事と比較すると、その多くで収益率が減少しているのが分かる。これは【新刊書籍・雑誌出版点数や返本率推移をグラフ化してみる】でグラフ化しているように、出版物の種類数がやみくもに増えていくことで需要が分散、減退化し、回転率を上げなければビジネスにならなくなりつつある出版業界の現状の一端を見せている。

回転寿司書籍の種類は増え、お客のニーズを来店時に確実にとらえるためには、種類を豊富に取りそろえねばならないが、そのためには店舗を巨大化するしかない。来店した時に欲しい本が無ければ、昔は「それなら注文を」で済んだが、今は「それならネットで買う」「ならは買うの止めた」となるからだ。それが何とか対応できても、さらに増加する出版物を有限の面積内に収めるには、ニーズのない書籍はすぐにでも退場してもらい、回転率を上げるしかない。それらの書籍の姿はまるで、次から次へと新しいお皿に追いやられて、店内内部で「回収」される運命を待つ、回転寿司の上に載せられたお寿司達のような感すらある。

ここしばらくは読者の可処分所得は横ばいか減少を続けるに違いなく、雑誌そのものの「媒体力」も低下する傾向は否めない。さらにインターネット通販の利用率は増加を続ける一方。書籍や文具を販売物の一要素としてとらえているヴィレッジヴァンガードコーポレーションなどはともかくとして、その他の「書籍販売をメインとしている書店」は、今この時点で起きている環境の変化に、適切な対応、言い換えれば「進化」を求められていると断じることができよう。

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