出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる

2010/12/06 12:10

以前【書店数と売り場面積推移をグラフ化してみる(2010年10月版)】【25年に渡るコンビニ店舗数推移をグラフ化してみる】などで「書店数が減っている」「コンビニは増えている」「出版業界の調子が悪いが、それは書店数が減って販売場所が減少しているからでは」「しかしコンビニが書店の減った分を補完する役割を果たしているかもしれない」など、出版物とコンビニの関係について色々と取り上げた。その後、【コンビニと雑誌の関係は「はじまり」から】で解説しているように「コンビニの登場直後から雑誌の類は販売されている」(もっとも当初は【雑誌が窓側にある理由】で解説されているが、窓際陳列ではなかった)。などの事実も判明し、ますます出版物の販売ルートと売上の関係が気になるようになった。そこで出版取次各社に問い合わせたところ、【2010年版『出版物販売額の実態』を入手】で触れている通り、業界内部の資料を提示してもらい、これを調達。データを精査したところ、色々な事実が明らかになってきた。今回は「2010年版 出版物販売額の実態」を元にした各種データのうち、主要な売り場別に見た、直近10年間の出版物販売額の推移をグラフ化してみることにする。

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まずは出版物の流れ・流通の仕組みだが、概念的には次の通り。

↑ 出版流通の仕組み(取引形態)
↑ 出版流通の仕組み(取引形態)

これは10年ほど前に経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課がまとめた【出版産業の現状と課題(PDF)】によるもの。10年前のものなので数字部分は大きく変動しているはずだが、基本的な流れに変わりはないはず。今回グラフ化するのは、この「書店」の部分、つまり「取次」と「消費者」の間に挟まっている、小売の部分を指す。

さてそれでは早速、主要販売ルート別の推定出版物販売額。元データはもっと細かい部分まで出ているが、億円以下は四捨五入で掲載。書店ルートがトップなのは当然だが、コンビニがすでに第二位のポジションについている事が分かる。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2009年)(億円)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2009年)(億円)

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2009年)(比率)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2009年)(比率)

以前【「駅の売店では新聞・雑誌が売れないらしい」を確かめてみる】で挙げた駅売店は金額ベースでは第三位。インターネットルート(確認したところアマゾンジャパンや楽天ブックスなども、把握できる範囲で含む)は935億円。後述するがインターネット経由の書籍販売は、成長率こそ著しいものの、現状では書店全体のシェアを食い荒らすほどのものではないことが分かる。まるで広告業界の既存媒体広告とインターネット広告のような立ち位置と言えよう。

単年度だけでは推移が分からないので、データとして収録されている過去10年分を、積み上げグラフと比率グラフにしたものを生成する。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(億円)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(億円)

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(主要項目における全体額に対する比率)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(主要項目における全体額に対する比率)

なお2007年まではインターネット経由の数字は「その他」項目に区分されていたが、2008年以降は別個の項目として新設されている。また比率グラフの方はいくつかの項目をまとめて「その他」としている。

書籍販売額のトータルが減少しているのは少々驚き。以前【新刊書籍・雑誌出版点数や返本率推移をグラフ化してみる】でも表したように、新刊の書籍・雑誌種類数は増加の傾向を示しているからだ。出版種類数以上に「返本率」の増加が販売総額を落とす結果になっているのか、「返本率」が高い状況なので種類数を山ほど出して売上をカバーしようとしているのか(、それでも減少に歯止めはかからず)、どちらが先行事由なのかは分からない。

そして、書店数が減少しているにも関わらず、書店での販売額「比率」は増加の一途をたどっている。これは販売「額」を見ればお分かりの通りで、書店の販売「額」そのものも減少しているものの、それ以上に他の区分、とりわけコンビニの販売額が減少しているのが要因。一言で表現すれば「書店以上に他の小売で出版物が売れなくなっているので、相対的に書店での販売額比率が増加している」ことになる。書店数とそれよる販売機会の減少が声高に叫ばれているが、事態はそれ以外のところでもっと深刻化しているというわけだ。



やや余談になるが、気になるセクタについて、販売額の前年比を折れ線グラフにしてみたのが次の図。駅売店・スタンドは区分が2008年から改められたようで、個別では意味を成さないグラフとなるので今回は省略。作り方を変えて、機会も改めて検証する。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(前年比)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(前年比)

書店は逓減、インターネットは(単年分だが)急増、そしてコンビニが2006年あたりから急激に減少する傾向が確認できる。これについて資料では何の解説もなく、理由を断定できない。可能性としては【コンビニでは本が売れなくなってきているようだ】でも一部指摘しているが、

・インターネットや携帯電話の本格的普及時期と重なるため、ハードルの低い時間つぶしが「コンビニでの雑誌(特にファッション誌や週刊誌、コミック廉価版など)」からネットやケータイに奪われた結果
・家計単位での雑誌販売額の減退によるもの(【新聞や雑誌の買われ方はこの10年でどのように変化したのか......週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(追補編)】)
・コンビニで販売されている機会が多い雑誌、ビジネスやマネー誌、HowTo関連などは売上が急降下状態
・コンビニでしか買えない雑誌の類があまり無い
・コンビニで販売されるタイプの雑誌における、付加価値や情報そのものの陳腐化
・コンビニにおける利用客の消費性向の低迷(お弁当などと一緒の「ついで買い」をする余裕がなくなってきた)

などが原因として推測される。この2005-2006年という時期をターニングポイントとする動きは、例えば広告費の動向などにも表れた共通のものであり、社会全体の流れが動きを見せた時期と見ることもできる。

ともあれ、書店数の減少そのものは事実であるものの、それが出版業界そのものの低迷に直接関係する第一要因と考えるは、少々無理がありそうだ。そして今や日常生活にもっとも密着している小売店のコンビニで、出版物の販売額が減退しているあたりに、ニーズの変化もあわせ、ヒントがありそうな気がしてならない。

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