週刊現代とプレモがなぜか群を抜いた伸び…諸種雑誌部数動向(2010年7-9月)

2010/11/15 12:10

先に【夏休みの影響も?…少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2010年7月-9月データ)】などで【社団法人日本雑誌協会】が2010年11月8日に発表した、2010年7月から9月分の主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータを元に、いくつかのグラフを生成した。今データは定期的に更新され、当方でもいくつかの雑誌について丸一年以上のデータが取得できたため、季節属性にとらわれない「前年同期比」の値を出せるようになったことは、これまでの記事でお伝えした通り。今回は番外編として、当サイトで定点観測しているデータ以外のいくつかの雑誌について、「前年同期比」における部数推移をグラフ化してみることにした。雑誌不況はどこまで、どのジャンルに浸透しているのか、どこまで進行しているのか、ある程度はつかみとれるはずだ。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

まずは一般週刊誌。状況としては前期とあまり変わらず。

一般週刊誌印刷実績変化率(2010年7-9月、前年同期比)
↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2010年7-9月、前年同期比)

今回計測分についても、前回同様に季節特性が貢献してか前期比(前年同期比では無い・グラフは略)でプラスに転じている雑誌は7誌と結構な数に登る。ただ、今グラフのように年ベースで見ると「週刊現代」が順調な伸びを見せ、それ以外は押し並べて軟調であるのが分かる。前年同期が47.4万部、今期が59.2万部と1年間で10万部以上の増加は、昨今の出版不況の中ではかなり稀有な存在。2009年6月に編集長が変わり、編集方針の変更を行ったのがプラスに働いていると思われる。

それにしても5期連続して前年同期比でマイナス10%超えを見せた「SPA!」や「FLASH!」などは先行きが心配……と毎回この言い回しを続けているが、両誌とも伸び代ならぬ落ち代があるにせよ、そろそろ新たな動きがないとマズい。やはり「写真週刊誌」という紙媒体は、インターネットや携帯端末に取って代わられる存在なのだろうか。

続いて育児系雑誌。

育児系雑誌印刷実績変化率(2010年7-9月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2010年7-9月、前年同期比)

育児系雑誌は比較的手堅いジャンルだったはずだが、今期は前回掲載時よりさらに辛い状況に。一方で「プレモ」は前回同様前年同期比で大きな伸びを見せており、(グラフは略するが)前期比でもプラス。部数自身も最新データで5万8000部近くとそれなりの数のため、少数による「ぶれ」ということでもない。何か躍進の秘密でもあるのだろうか(調べてみた限りでは、ファッション誌ライクなオシャレ感・情報量の多さと読みやすさ、そして充実した別冊がニーズに応えているということ)。一方、他はかなり大変な状況。「こっこクラブ」「ベビモ」は4回連続の前年同期比で10%超えのマイナス。危機的な状況ではある。

食・料理・レシピ系雑誌。内食・中食への注力が高まる一方の昨今、ニーズは強まるばかり、のはずだったのだが、全般的に伸び悩み状態なのは前期と変わらず。インターネットにお客を奪われているかも。

食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2010年7-9月、前年同期比)
↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2010年7-9月、前年同期比)

赤一色でまるで今年の酷暑のように灼熱化している。特に前回同様「bonmerci! little」の減少ぶりが気になる。前回の-34.1%より多少悪化した-35.5%とは尋常ではない。この1年の間に約8万9000部から5万7000部への落ち込みは、まさに急降下状態。

エリア情報誌。こちらは「福岡ウォーカー」「北海道ウォーカー」の2紙が前回からデータ掲載対象紙として登場しており、今回から掲載されている。

エリア情報雑誌印刷実績変化率(2010年7-9月、前年同期比)
↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2010年7-9月、前年同期比)

対象雑誌は前回に続き今回も全部マイナス。前回から登場させている「ぴあ」が断トツのマイナス値を示してしまっている。また、今回から登場した2誌のうち「北海道ウォーカー」はそれなりに健闘しているが、「福岡ウォーカー」は辛い状態。携帯情報端末が浸透する昨今、これまでのスタイルを維持しただけではエリア情報誌の維持は難しいのかもしれない。

【イヌとネコ、耳や鼻が良いのはどっち?…イヌとネコのトリビアたち】にもあるように、必ずといってよいほど対で紹介される「犬猫」双方の専門誌、「いぬのきもち」と「ねこのきもち」。

犬猫雑誌印刷実績変化率(2010年7-9月、前年同期比)
↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2010年7-9月、前年同期比)

今回も前回同様、前年同期比では「ねこのきもち」の勝利。ただし直近二期では両誌とも印刷部数を減らしており、出版業界全体の不調は犬猫業界にも影響しているのかな、という感はある。ちなみに直近期の発行部数は「いぬのきもち」15.6万部・「ねこのきもち」11.5万部で、「いぬ」の勝ち。

最後に小学館の「小学●年生」シリーズ。以前【「小学五年生」「小学六年生」が休刊・来年春に学習まんが誌「GAKUMANPLUS」を創刊へ】で報じたように、「小学五年生」「小学六年生」は休刊となり、データとして提示できるのは「小学一年生」から「四年生」まで。

「小学●年生」シリーズ印刷実績変化率(2010年7-9月、前年同期比)
「小学●年生」シリーズ印刷実績変化率(2010年7-9月、前年同期比)

今回も該当雑誌すべてがマイナス。しかも全部10ポイント以上の下げで、3誌も3割もの減少を見せている。このままいくと「小学六年生」「小学五年生」に続き……という事も容易に想像ができる。実際「小学四年生」は実数でも3.4万部程度に低迷しており、かなり不安視される。

ちなみに「小学六年生」「小学五年生」の代わりに登場した隔月刊誌「GAKUMANPLUS」だが2010年4月15日に創刊している。すでに二期分のデータは揃っているはずなのだが、社団法人日本雑誌協会のデータベースではその姿を確認できない。



以上ざっとではあるが、定点観測の対象外となっている各種雑誌について、前年同期比の印刷実績の推移をグラフにしてみた。ほとんどが前年同期で少なくとも1割前後の売れ行き減な状態が確認できる。

意外なのはニーズが高い(【教育費 生活苦でも 減らしません 苦しい時こそ 子への期待を】などで触れているが、子供にかける費用は削られない傾向がある)にも関わらず、育児系雑誌・小学生向けの学習雑誌が大きく落ち込んでいること。育児・幼少教育を本で学ぶ・学ばさせる人が減っているのか、あるいはインターネットにスライドしているのか、その因果関係まではつかめないが、注目すべき傾向といえる。一方で「プレモ」の堅調な伸び具合には、育児系雑誌だけでなく雑業界全体における、低迷から抜け出すヒントのいくつかが見え隠れしている気がする。「週刊現代」は……編集長の返り咲きによる方針転換が起因だろうか、やはり。

雑誌低迷の原因の多くはメディアの多様化、新メディアと比べた上での相対的なデメリットが目立つ点にある。しかしそれと同時にメディアの仕組み・システムそのものではなく、内部でメディアを支え・構築する人たち(特に上層部)の「金属疲労」的な面も存在する。某アニメ映画における言い回し「戦線から遠退くと楽観主義が現実に取って代る。そして最高意志決定の場では、現実なるものはしばしば存在しない。戦争に負けている時は特にそうだ」がそのまま当てはまると表する状況にある。

果たして彼らは、すでに雑誌業界が戦争状態に等しいことを「本当に」認識しているだろうか。残された時間はさほど多くは無い。


■関連記事:
週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…(下)購入世帯率や購入頻度の移り変わり】

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