\enSPA!とTHE21がわずかに伸びる、投資系雑誌は軟調…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2010年7月-9月)

2010/11/14 06:57

【社団法人日本雑誌協会】は2010年11月8日、2010年7月から9月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、各紙が発表している「公称」部数より正確度が高く、各雑誌の現状を「正確に」把握できるデータといえる。今回は当サイトのメインテーマにもっとも近い「ビジネス・マネー系雑誌」についてデータをグラフ化し、前回からの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

それではまず、2010年の7-9月期とその前期、2010年4-6月期における印刷実績を見てみることにする。

2010年の7-9月期とその前期、2010年4-6月期におけるビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2010年の7-9月期とその前期、2010年4-6月期におけるビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

【夏休みの影響も?…少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2010年7月-9月データ)】の週刊少年ジャンプの「郡を抜く売れ行き」のように、雑誌名通り「プレジデント」が断トツで印刷部数が多い状況に変化はない。また、いわゆる「季節特性」(今期は夏休みを含むので通勤・通学の際に読まれる雑誌は減少する傾向がある)は、多くの雑誌に影響が出ているようだ。ただ、中期的な減り方が規則特性云々を超えているのが現況で、今回の減り方は季節特性と区別が付きにくい面もある。

続いて各誌の前期・後期の販売数変移を計算し、こちらもグラフ化する。要は約3か月の間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかという割合を示すもの。よほどの「イベント」が発生するか、あるいはたまたま定期的な印刷部数見直し時期に当たらない限り、3か月間で大きな変化は見られないはず。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系)

前期比伸び率で最大値・今回唯一のプラスを見せた「\en SPA!」だが、販売冊数そのものは3.15万部と少数派に位置する季刊誌。厳密には今回該当期間に発売されたのは2010年9月16日発売の「10月16日号」のみなのだが、その前号「7月16日号」が2010年6月16日に発売されており、両方の影響が数字に出ているといえる。データを確認するとこの「7月16日号」に生放送でトレードを紹介する某氏の記事が掲載されており、これが引きになった可能性がある。

それ以外は押し並べてマイナス(COURRiER Japonはプラマイゼロだが)。前述の「季節特性」によるところも少なくないが、それにしても前期の動向と比べると落ち込みが大きすぎる感は否めない。

さて一連の定点観測を続けたことでデータ蓄積量も一年分を超え、「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回も「季節属性」を考慮せずに年ベースでの動向をつかみとれる「前年同期比」のグラフも生成し、掲載する。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、前年同期比)

不景気な昨今において経済誌は「情報武装をするために欠かせない『武具』」としての立ち位置を持っているはず。しかし今期も前期同様に、前年同期比でプラスを見せた雑誌は1誌のみ。前回唯一プラスだった「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」はマイナス0.8%で留まっており誤差の範囲といえるが、マイナス5%超えの赤棒グラフは6誌。順位の変動はあれど、顔ぶれは前期と変わらない。



2008年秋の「リーマンブラザーズショック(リーマンショック)」で多くの人が経済情報に注目したを時期を直近における天井とする形で、金融・経済系のウェブサイトにおける(確証度・知名度・権威度の高い新聞社・法人系サイトを中心にした)アクセスの増加傾向は速度をゆるめ、あるいは減少に転じている。しかしパソコンや携帯電話、各種モバイル端末からアクセスできるインターネットメディアへの、紙媒体からの読者移行の流れは留まるどころか加速している。特にリアルタイムで情報が変わる経済系ジャンルにおいては、雑誌の不利さは他のジャンル(漫画や趣味系の雑誌)の比では無い。現在では携帯電話より表示面積の大きい画面を備えたスマートフォンの普及が加速化しており、今ジャンルのインターネット上での情報展開はますますその重要度を増しつつある。

金融市場頑なに古い体制ばかりのみを固持することなく、この現状を正しく認識し、「それでは紙媒体・雑誌ならではの内容、雑誌にしかできない情報提供・読者へのサービスとは、そしてその仕組みとは何だろうか」という基本原理に立ち返ること。あるいは「新しいメディアと相乗効果を生み出せる仕組み、アイディアは無いだろうか」といった模索をすること。さらにそれらの答えを見つけ出して躊躇することなく実践し、読者に受け入れられるように自らの姿かたちを変えていくこと。ビジネス・金融・マネー誌にはその「進化のための努力」が求められている。海外の動向を見るに、時間はあまり残されていない。

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