【更新】コミック乱、ツインズが伸びた程度で後は押し並べてマイナス…少年・男性向けコミック誌部数動向(2010年7月-9月)

2010/11/12 19:30

【社団法人日本雑誌協会】は2010年11月8日、2010年7月から9月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、業界の動向を示す正確度は、各紙・各出版社が発表している「公称」部数よりはるかに高い。今回は、読者層を考慮してもっとも興味がそそられるであろう「少年・男性向けコミック誌」のデータをグラフ化し、前回発表分データからの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

まずは少年向けコミック誌。週刊少年ジャンプがトップにあることに違いはナシ。

2010年4-6月期と最新データ(2010年7-9月期)による少年向けコミック誌の印刷実績
2010年4-6月期と最新データ(2010年7-9月期)による少年向けコミック誌の印刷実績

「ジャンプ」は直近データで287万5834部。販売実数はこれよりも少なくなるので、前回と同じく250万部前後だろう。いずれにしても雑誌不況の中、驚異的な値であることに違いは無い。王者ジャンプの威厳は維持されている。

今回は前回に引き続き、計測対象の中、あるいは該当カテゴリーで、休刊などの理由からデータが失われたもの、逆に創刊でデータが加わった雑誌は無い。ある程度整理統合淘汰が進んだということだろう。あるいは「踊り場」かもしれない。しかし後述するように、各誌の印刷部数は減少傾向にあり、「踊り場」の先は下り階段であることに違いは無い。

続いて男性向けコミック誌。こちらも世間一般のイメージ通りの印刷部数展開。

2010年4-6月期と最新データ(2010年7-9月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
2010年4-6月期と最新データ(2010年7-9月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

【コミックバンチ、正式に休刊表明・年内に新創刊】でお伝えしているように、週刊コミックバンチは休刊してしまったので、今回のデータからは外れている。また新規に加入するような雑誌は無し。

さて、これで最新期とその前の期の印刷部数を棒グラフ化したわけだが、続いてこのデータを元に各誌の(前・今期間の)販売数変移を計算し、こちらもグラフ化してみることにする。短期間の変移ではむしろこちらのデータの方が重要。

要は約3か月間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかという割合を示すもの。当然ながら、今回データが非開示となった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌はこのグラフには登場しない。幸いにも今回はそのような状況に該当する雑誌はナシ。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)

今期は「夏休み」が期間中に収まることで「通勤・通学の際に購入されやすいタイプの雑誌の印刷数は(前回と比べて減少している(=販売数が減る)」という「季節特性」によるマイナスの影響もあるのだが、全般的に軟調。

マイナスが多い中だからこそ、唯一明確にプラス方向に動いている「ドラゴンエイジ」が目立つ。付録による効果と、連動しているアニメがそれなりに盛り上がっており、各作品のファンがコミカライズしたものも求めて、という動きの結果と思われる。アマゾンの古本市場を見ても、定価から1ケタ異なる価格がつけられており、人気の高さをうかがわせる。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)
雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)

今回はプラスを記録したものは2誌。ゼロだった前回と比べると、下げ幅も合わせ改善しているように見える。しかし「改善」とはいえ多くの雑誌が前年同期比マイナスであることに違いは無く、「男性向けコミック誌市場の現状が非常に厳しい」ことを改めて認識させてくれる。

さて一連の定点観測を続けているおかげで、過去のデータを用いて「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回もいわゆる「季節属性」を考慮しなくても済む「前年同期比」のグラフも掲載する(例えば今回なら、2010年7-9月と、その1年前の2009年7-9月分の比較というわけだ)。純粋な雑誌の販売数における、年ベースでの伸縮率が把握できる。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)

上記のグラフと比べると掲載紙が少なくなっているが、これは「最新期でデータ未公開の雑誌」「過去一年分のデータがそろっていない雑誌」は除外しているため。前者はともかく後者は、「前年同期」のデータが無いのだから仕方がない。

1年単位での変移を見ると、印刷数では勝ち組常連の「コロコロコミックス」がトップ。前回記事でトップだった「ウルトラジャンプ」も下げ幅は誤差の範囲内に収まっている。

それ以外では一部の勝ち組雑誌「週刊少年ジャンプ」など超メジャー紙以外は、ほぼすべての雑誌で苦戦を強いられているのが分かる。特に週中発売の二大週刊誌「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」のうち、後者の現状が気になる。年1割超の売上減少は、容易ならざる事態……と、前期の記事と同じ言い回しを使わねばならない状況なのが、少々切ないところではある。しかも前回記事と見比べれば分かるが、状況は悪化する一方である。

さらにこの数期に渡り数字的に不安視されている「少年サンデースーパー」は、前年同期でも凄まじい下落ぶり。定番の言い回しになるが、「あと何回続けられるだろうかという心配すらしてしまう」。前回のマイナス43.3%と比べれば、幾分マシではあるが。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)

唯一「コミック乱ツインズ」がプラス圏にあるが、それ以外はすべてマイナス。10ポイント以上の下げ幅を記録している雑誌は7誌。前回の8誌よりは改善されたように見える。しかし上記にあるように、「週刊コミックバンチ」が休刊で消えてしまったため、実質的には何ら変わりは無い。前回記事のデータと比べるとマイナスポイント数が幾分緩和された感はあるものの、豪快な下げ方をしている状況に変化は見られない。



今回参照したデータのうち「単純前期比」においては、今期が季節変動によって売れ行きが落ちる傾向があり、マイナス値が多いのも多少は仕方ないものがある。しかしそれ以上に季節属性云々を超えた、雑誌の売上そのものの減少傾向が継続している雰囲気が感じられる。

特に(単純に印刷冊数≒販売冊数という観点で、だが)男性向けコミック誌が、相当危険な状態なのは一目瞭然。損益分岐点などを考えれば、「前年同期比で印刷部数がマイナス10%超え」を繰り返していたのでは、そう遠くないうちに立ち行かなくなるのは明らか(大規模なリストラ、経費削減を行えば話は別だが、それは品質低下と売り上げ減退のマイナススパイラルを容易に生み出す……新聞でも似たような状況が進展しているのは気のせいか)。【4大既存メディア広告とインターネット広告の推移をグラフ化してみる(2010年11月発表分)】などにもあるように、雑誌の広告費は低迷を続けているが、それが改めて実感できる数字と言える。

【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…(下)購入世帯率や購入頻度の移り変わり】で触れているが、総務省統計局のデータによれば、雑誌・週刊誌では書籍同様に「購入する人がいる世帯の減少」「購入者の購入冊数の減少」と多元的な雑誌離れが起きている。言い換えれば「家族誰一人として雑誌を買わなくなった」「買っている人も買う冊数を減らしている」ということ。今データを見る限りではサラリーマンにおいて、その傾向が顕著なものと考えられよう。

逆に堅調さを続けている「コロコロコミックス」などのように、適切な読者ニーズをとらえることで、少年・男性向けコミック誌にもまだまだ健闘は不可能ではない。厳しい状況下だからこそ、従来以上に必死になって手を尽くし、短期的視野だけではなく中長期的な戦略まで見据えた、雑誌展開が求められよう。あるいは、今データには反映されなくなるが、【「ジャンプSQ.19」創刊号、丸ごとiPadで無料配信・最新号とのセットも450円で提供へ】で紹介した事例のように、デジタルメディアへの積極的なアプローチも検証課題として挙げられねばなるまい。

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