たばこ値上げの駆け込み需要の反動…2010年10月景気動向指数は3か月連続の下落、先行きは2か月ぶりに下落

2010/11/09 19:30

内閣府は2010年11月9日、2010年10月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状は3か月連続して下落した。先行き指数は2か月ぶりに下落傾向を見せている。基調判断は先月と同じ表現である「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」となった(【発表ページ】)。

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「変わらない」が減少、「(やや)悪くなっている」が微増
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値に関しては今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認をしてほしい。

2010年10月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス1.0ポイントの40.2。
 →3か月連続の減少。「変わらない」が減少、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加。
 →家計においてはエコポイントの駆け込み需要があったが、たばこ値上げの駆け込み需要の反動、エコカー補助金終了などにより減少。企業はエコカー補助金周りや急激な円高を背景に輸出環境が悪化して低下。雇用は製造業を中心に求人の動きが見られるが、正規職員の雇用に慎重な態度が続いており、悪化。
・先行き判断DIは先月比マイナス0.3ポイントの41.1。
 →2か月ぶりの減少。
 →たばこ値上げの影響が希薄化、新型車の登場などから家計部門ではプラスとなったものの、エコカー補助金や円高などの影響を懸念して企業や雇用関連ではマイナスとなった。
先行き判断は新型車の登場周りが唯一積極的なポジティブ材料で、あとは消極的、あるいはマイナス要因であり、先もあまり期待できそうにない。

飲食はリバウンド?
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表月分ではサービス・住宅関連以外はすべてマイナス。住宅がプラスなのは昨今の新築住宅の建設状況や、例えば【2010年9月の新設住宅戸数、前年同月比17.7%増】などの関連数字を見ても、何となく肌身で感じることができるはず。先月まで急速な下落ぶりをみせた「飲食関連」の数字も、今月はさすがにリバウンドした模様。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン(ズ)・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「各数値が1桁になるのでは」という懸念もあったものの、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降はもみ合いながら上昇が続いていた。今月は先月に続き、少なからぬ減退が確認できる。「合計」の値を見ると、まさに中間の「50.0」を天井として、その下側の領域でもみ合いを続けているようでもある。雇用関係の数字は今回はマイナスを確認できる。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは良い状態。
・政策や外因、円高などを起因とする
不安感から低迷状態は継続中。
・天井観確定&下落途中
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、今回の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素(いわゆる「金融(工学)危機」)が、多種多様な方面においていちどきに、連鎖的に悪影響を与えた様子が数字、そしてグラフにも明確に表れている。その後の様子は直前で説明しているように、「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態。

景気の先行き判断DIについては、先月から転じて下落した。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

前月比でプラス項目は4つ。家庭動向関連でほぼ全項目がプラスだが、その伸び方は弱く、企業や雇用のマイナスの勢いを押しとどめることはできなかった。やはり先月のプラスの動きはリバウント的なものだったようだ。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が覚えていたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン(ズ)・ショック」)が、大きな不安感の中にある人々の心境を叩き落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えたのかが見てとれる。

今月は先月と比べると方向性はわずかだが下向き、ただし落ち方は弱いのが分かる。再び反転し上昇へ向かう動きも無いとはいえない。もっとも「上限」が50という、厳しめの低迷が続きそうな雰囲気ではある。

秋でややプラスもイベント終了と円高でかなりの痛手

発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・エコポイント制度の効果で薄型テレビの売上が好調であり、全体の売上も、前年を大幅に上回っている(家電量販店)。
・10月はやっと秋らしい気候が安定したので、秋物の商品が良く売れている。後半に入り急な冷え込みで、冬の備えに冬物が売れ始め出している。前年の売上は確保でき、まずまずである(一般小売店)。
・秋になって観光客が増えているため、昼間は動きが良くなってきている(タクシー運転手)。
・乗用車の販売量は前年同月比50%を下回っている。9月に新車購入補助金制度が終了した反動もあるが、この影響以上に落ち込んでいる。景気減退が懸念される(乗用車販売店)。
・3か月前に比べ、稼働率が落ち始めている。前年実績を上回る状況ではあるものの、予約状況の伸びは弱くなってきている(観光型ホテル)。
・10月の来店客数は前年比で5%減となった。たばこ増税前の駆け込み需要の反動も影響している(コンビニ)。

■先行き
・たばこの買置きも底をつき、喫煙者が戻ってくることが予想される。また、たばこの値上げにより単価の増加が期待できる反面、増税をきっかけに禁煙を始めた人も多く、プラスマイナスゼロになると予想している。また、たばこを除けば前年並みであり、現状のままで推移すると予想している(コンビニ)。
・今後、特別仕様車や新型車が発表されるため、客が関心を寄せてくれることに期待する。しかし、客との会話では暗い話題ばかりであり、今は車どころではないと話にも乗ってもらえない状態が続いている(乗用車販売店)。
・12-1月はエコポイントの申請条件がかなり絞られたものとなるため、急激に販売にブレーキがかかってくる。1月以降はかなり厳しくなる(家電量販店)。
などとなっている。季節がようやく秋めいてきたおかげで売上が見込めるところ、エコポイントなどのイベント周りでポジティブなところも確認できる。が、そのイベント終了で反動を受けるもの、消費者のマインドそのものの減退による厳しさなど、辛い動向が多く見受けられる。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、国内外に多発する
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は継続中。
景気底上げ対策も
次々打ち切られ・縮小され
景気は下落へ向かいそう。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見える。基本的に現在も2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはない。だがこの数か月言及しているように、アノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況を、現実として認める必要がある。

よって2003年以降の「企業・家計指数が50前後を行き来する」パターンではなく、そこから全数値がやや下に下がった状態、すなわち本来「平均値」を示す50を天井とし、マイナス圏でのもみ合い、あるいはさらなる下落の動きが継続する可能性は高い。円高は続き、これから冬にかけて灯油価格の値上げも気になり始め(しかも今年は「ガソリン値下げ隊」の出動は期待できそうにない)、景気抑揚策は微塵も確認できない。それはまるでこれからの寒空を薄着で過ごすしかない状況で嘆き悲しんでいる人たちが、さらに手袋や上着をはぎ取とられ、それらが自分達に仇為す人たちに配られているかのような場面ですらある。

読者諸氏におかれては、手間と時間がかかり、慣れないこともあって面倒ではあるが、一歩外に足を運び、または手を伸ばし、いつも与えられて満足している錯覚に陥らされているものの先、閉じられているカーテンの向こう側を、眺めてみることを強くお勧めする。もちろん眺める先を間違え、余計に事態が悪化しないよう、信じるに足る人の助言に耳を傾けることを忘れてはならない。自分の考えをより確実なものとする、あるいは今まで見えてこなかった、新しい、そして正しい判断をするのに必要な情報が得られるに違いない。

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