出版業界の決算状況をグラフ化してみる

2010/11/02 12:15

書店帝国データバンクは2010年11月1日、【特別企画:出版業界 2009年度決算調査(PDF)】と題する調査報告書を一般公開した。普段はなかなかお目にかかれない大手出版社をはじめ出版業界の大手企業の決算・財務状況を概要的に把握することができる、極めて有意義かつ資料性の高い内容となっている。今回は公開されたデータの中から、当サイトでも何度となく取り上げ解説している領域に含まれる大手出版社、及び書店経営業者について、いくつかを取り上げグラフ化を試みることにする。

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まずは出版社。売上高上位10位と、その順列に沿った形での最終損益の推移をグラフ化する。

↑ 出版社・2009年度売上高上位10位(億円)
↑ 出版社・2009年度売上高上位10位(億円)

↑ 出版社・2009年度最終損益(売上高上位10位企業(億円))
↑ 出版社・2009年度最終損益(売上高上位10位企業(億円))

売上においては集英社・講談社・小学館の3社が大きなアドバンテージを得ているのが分かる。四半期ごとに印刷証明付きの雑誌売上を分析掲載しているが(直近では例えば【付録の勝利、か? 少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2010年4月-6月データ)】)、振り返って読みなおすと、多くの雑誌がこの3社発行であることが改めて分かるはずだ。一方各社の昨年との値を比較すると、売上減少ばかりが目立つ。

漸減傾向にあるものの売上の絶対値はそれなり。しかし利益となると多種多様な状況が見えてくる。大手3社のうち黒字なのは集英社のみ。講談社・小学館は赤字幅は減少しているものの、最終赤字には違いない。その他の企業も黒字だが減益、赤字転落と景気の悪い話が多い。

報告書では「売上減少傾向の中で、経営立て直しのために不採算部門の切り捨て、リストラ、所有資産の売却などを行う企業が多い」「それでも苦戦を強いられている状況に変わりは無い」としている。このあたりの事情は何も出版業界に限った話ではないが、十分納得はいくし、グラフもその裏付けになる。

さて続いて、書店動向を色々と追いかけていることもあるので、書店経営業者について。こちらもまずは、出版社同様に売上と最終損益。

↑ 書店経営業者・2009年度売上高上位10位(億円)
↑ 書店経営業者・2009年度売上高上位10位(億円)

↑ 書店経営業者・2009年度最終損益(売上高上位10位企業(億円))
↑ 書店経営業者・2009年度最終損益(売上高上位10位企業(億円))

売上では出版社ほどではないが、紀伊国屋書店と丸善が売上でアドバンテージを有し、あとは少しずつの差で他社が追いかけている状態。一方最終損益では、額はともあれ黒字を維持している企業が多いのが目に留まる(阪急リテールズに特異な動きが見られるが、これは同社が2008年4月に阪急電鉄から事業の分割を受け、さらに2009年4月には複数の阪急関連企業を吸収・事業譲受を行ったことによるもの)。報告書にもあるように、少なくとも大手書店経営業者「は」利益を確保しているようだ。

「は」、とした理由は次のグラフに。こちらは売上・最終損益それぞれについて、「全体」「上位三十位とそれ以下」に区分した場合の状況をグラフ化したもの。

↑ 書店経営業者・売上比較(2009年度)
↑ 書店経営業者・売上比較(2009年度)

↑ 書店経営業者・損益比較(2009年度)
↑ 書店経営業者・損益比較(2009年度)

ひと目で売上・損益共に「上位企業の景気が比較的良く、下位が厳しい」、言い換えれば「小規模の書店経営業者の業績が悪い(報告書より抜粋)」のが確認できる。

なお報告書では取次業者(日本出版販売やトーハンなど)についても精査が行われているが、こちらについては当サイトではあまり取り上げていないこともあり、今回は省略させていただく。報告書ではその取次業者が、出版業界の中では一番利益を確保できているとあるが、書籍の送り手と消費者への直接の売り手が業績悪化に苦しむ中、その中間にある業者がそれなりに業績を維持しているというのは、興味深い話ではある。



報告書にもあるように、今件は“電子書籍の影響を受けていない最後の決算期”の決算数字。今後、多かれ少なかれ各企業は電子書籍の影響を受けることは間違いない。その過程で各社の業績動向はどのような姿を見せるのか。今回の報告書が良い比較対象となることは間違いない。


■関連記事:
【付録の勝利、か? 少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2010年4月-6月データ)】
【新刊書籍・雑誌出版点数や返本率推移をグラフ化してみる】

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