主要テレビ局の複数年に渡る視聴率推移をグラフ化してみる

2010/10/30 18:00

先日テレビ東京の公開データで、テレビ視聴率が急激な落ち込みを見せているグラフが掲載されているとの話を耳にした。指定されたページを見ると、確かにグラフ上は急カーブを描いて落ち込んでいる。しかし過去何度かのテレビ局の決算短信や1年単位での視聴率推移(【主要テレビ局の年間視聴率をグラフ化してみる】など)では元々テレビ東京は主要テレビ局の中でも多分に苦戦している方で、視聴率に限れば同局のみの現象かもしれない。そこで今回は、いくつかの資料をあたり、過去複数年間に渡る主要テレビ局の視聴率の移り変わりを調べ、グラフ化してみることにした。

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テレビ視聴率は日本国内では、現在はビデオリサーチ社のみが計測を行っている。しかしビデオリサーチ社ではデータの大部分は非公開で、同社公式サイトに掲載中のデータにおいても分析も含め利用は不可とされている。そこで主要テレビ局の中から、今回は【TBSホールディングスの決算説明会資料】を全部チェックしなおし、そこに「決算説明会の補足資料として」掲載されている主要局の視聴率を抽出し打ち直しを実施。【テレビ東京のメディアガイド】のデータと合わせて、いくつかのグラフを生成した。

まずはHUTの推移。「HUT」とはテレビの総世帯視聴率(Households Using Television、テレビをつけている世帯)を意味し、具体的には調査対象となる世帯のうち、どれほどの世帯がテレビ放送をリアルタイムで視聴しているかを示す値(チャンネル別の区分なし)。録画で再生していたり、ゲームでテレビ画面を観ている場合は該当しない。逆にパソコンでテレビを観ている場合も該当しない。また、「ながら視聴」も考慮される問題ではあるが(極論としてテレビのスイッチは入っているものの、テレビそのものはほとんど観られていない状況もありうる)、今件ではとりあえず保留しておく。

最初にグラフを生成するのは、テレビ東京のデータに収められていたHUT推移。1997年以降半年単位のものが収録されている。いわゆるゴールデンタイム(19時-22時)、全日(6時-24時)、プライムタイム(19時-23時)があるが、一番視聴率が高く、(番組の注目度、質も合わせて)変移が見やすいゴールデンタイムのものをグラフ化する。

↑ HUT推移(ゴールデンタイム)
↑ HUT推移(ゴールデンタイム)

「HUT」の語彙を調べた際の文献などでは「HUTはゴールデンタイムで70%前後が普通」とあったのだが、直近データでは60%強にまで落ち込んでいるのが分かる(縦軸の最下方が58%になっていることに注意)。1997年度下半期の71.2%をピークに、多少の上下はあれど、全体的には下降の一途をたどっているのが一目瞭然。しかも【「テレビをつけている時間」と「視聴時間」、「視聴率」を考え直してみる】などで触れているように、携帯電話やインターネットの普及で「ながら視聴率」が高まっている現在においては、10年前のHUTと密度的に同列と見るのはかなり無理があると考えてよい。

続いて、今回の記事執筆のきっけかとなったテレビ東京(TX)の視聴率推移。これも比較しやすいように、ゴールデンタイムのものを用いた。

↑ TX視聴率推移(ゴールデンタイム)
↑ TX視聴率推移(ゴールデンタイム)

ほぼ横ばいを維持していた視聴率も、2008年度上期を境に下落傾向に突入。そして2010年度上期(2010年4月-9月)には大きな下落の末、6%ぎりぎりのラインにまで落ち込んでいる。2008年度上期以降の下落傾向は、いわゆる金融不況に伴う予算不足が影響したものと思われるが、直近半年間の急カーブは説明が付きにくい。

それでは他の局は……ということで先の「TBSホールディングスの決算説明会資料」の話になるのだが、月次の主要局視聴率の推移データが2004年以降掲載されていたものの、なぜか2008年12月を最後にぷっつりと途絶えてしまっている。複数の局で下落傾向が確認できるのだが、これでは肝心な部分が分からない。仕方が無いので年度ベースではあるが、2004年度-2009年度(2009年4月-2010年3月)までの主要局のゴールデンタイムにおける視聴率の推移を生成したのが次のグラフ。

↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(×印はデータを確認できず)
↑ 主要局年度視聴率推移(ゴールデンタイム、年度ベース)(×印はデータを確認できず)

少なくとも日本テレビは復調、フジテレビは横ばい、TBSとテレビ東京は勢い良く下落しているのが確認できる。ただし肝心な2010年度上半期(2010年4月-9月)分の月ベースなどでの継続的なデータは確認できなかった。【主要テレビ局銘柄の直近決算をグラフ化してみる(2010年3月期)…(4)放送事業で赤字を出したTBS社と利益が気になる日本テレビ、そしてまとめ】などでも指摘しているが、大胆に過ぎるコストカットの影響が見え始めているのがこの時期なだけに、非常に気になるのだが、ないモノは仕方が無い。

妥協案として、直近データとして公開されている2011年3月期(2010年4月-2011年3月)の第1四半期(2010年4月-6月)データと、過去の第1四半期との推移をグラフ化しておく。番組やイベントによる変動は避けられないが、少なくとも季節変動は除外して推移を見られるはず。

↑ 主要局視聴率推移(ゴールデンタイム、各年度第1四半期ベース)
↑ 主要局視聴率推移(ゴールデンタイム、各年度第1四半期ベース)(×印はデータを確認できず)

穴あきだらけで推測が難しいNHKを除くと、テレビ朝日が何とか持ちこたえているが、他局は押し並べて減少傾向、特にTBSとテレビ東京の下落ぶりが著しいのが確認できる。



テレビ本文中でも触れているが、直近のテレビ局の短信でやや良い財務上の数字が出ているのは、広告費の復調というよりは経費削減の成果が出ている色合いが強い。経費を減らして同じ質の番組を提供でき、同じ視聴率を維持できれば御の字なのだが、ライバルたるインターネットや携帯電話の市場がさらに拡大の一途をたどり、視聴率の現状維持ですら質の向上などを求めねばならないにも関わらず、昨今の状況はお世辞にもそのような状況とは言い難い。さらに「ながら視聴」の浸透により、同じ視聴率でも宣伝効果の希薄化も懸念されている。

漏れ伝わってくる詳細な視聴率の推移でも、上記に挙げたテレビ局の苦戦ぶりが実感できる。それと共に番組構成上のさまざまな問題点が噴出し、さらに増大する気配を見せている。テレビがかつての信頼を取り戻し、テレビ局と主要コンテンツである番組があるべき姿を再認識し、視聴者と共に歩む日が来るのはいつになるのか。それは、現時点で成すことが出来ないどころか寧ろ後ずさりしている現在の経営陣・上層部にではなく、これからを支える人たちの意思次第といえるのではないだろうか。

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