「前年同月比のトリック」が発生・前年同月比でプラス10.4%(2010年9月分大口電力動向)

2010/10/21 12:00

電気事業連合会は2010年10月20日、2010年9月分の電力需要実績の速報を発表した。それによると同年9月の電力需要(使用量)は10社販売電力量合計で857億kWhとなり、前年同月比でプラス16.2%を記録した。産業用の大口電力需要量は前年同月比でプラス10.4%を記録し、10か月連続で前年同月の実績を上回ることになった。大口電力需要の観点では景況感はよさそうである(【発表リリース、PDF】)。

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今調査の概要および用語解説は過去の記事まとめページ【大口電力使用量推移(電気事業連合会発表)】で解説をしている。そちらで確認のこと。

2010年9月においては大口全体で前年同月比プラス10.4%。「前年同月比」というしばりがあるが、それだけ工場の施設の稼働率が(昨年の同じ月と比べて)増えたことになる(機器の技術進歩などによる節電効果もいくぶん数字には反映されているが、一年で加速度的な進歩がない限り、誤差の範囲でしかない)。

大口電力使用量産業別前年同月比(2010年8-9月)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2010年8-9月)

今月も前月に続き、すべての項目で前年同月比でプラスを見せている。数字のプラス値そのものは頼もしい話ではあるが、昨年のこの時期は「リーマン(ズ)・ショック」で急激な下げを見せていただけに、安心はできない。リーマンショックの反動を超えたものではない。絶対値の差異を見れば容易に理解できる(2009年9月の全体値はマイナス13.7%)。また、「鉄鋼」の急速な回復は喜ばしいものの、その勢いも失速傾向を見せ始めている。さらに今月は主要項目すべてで前月と比べ、前年同月比の値がマイナス値であるのが確認できる。そろそろ失速か、という雰囲気が無くも無い。

先月比のグラフでは中長期の流れをつかむことは難しい。そこで記録保全の意味も含め、2007年1月以降の全産業別の前年同月比推移グラフを掲載しておく。

大口電力使用量産業別前年同月比推移
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(2007年1月以降)

2010年9月の時点では、大口電力使用量の観点においては、同年4月を天井に、3月までの状況回復傾向が失速期に転じた状況が見て取れる。この半年ほどは「前年同月比」において、昨年の「マイナス20%、30%は当たり前」と比較した形での値が出るため、見た目は急速に回復していたように見えても、実はそれほど驚くべき内容ではない、繰り返しになるが「コンビニの売り上げ」や「住宅の新築着工」でも見受けられた「前年同月比のトリック」が発生している(去年の下げ方が異常な大きさなら、今年は下げていても「それよりマシ」に見えてしまうという現象)ことに留意しなければならない。全体値では2009年2-9月で大きなマイナス値(マイナス20-30%)が確認されているので、今回月9月まではプラスで大きめの値が出るが、絶対値は少なめなこと、そして勢いはすでに下降状態を見せ始めており、今後もこの傾向が続くことが予想される。11月-12月あたりから、真の回復か否かがはっきりと分かるものと推測できる。

「3割減った後に3割増えても元には戻らない」のは一目瞭然。3割減少したあとに原状復帰するためには、3割では無くそれ以上(約4割2分)の回復が必要になる。昨今の状況はあくまでもリバウンドの域に留まり、回復までには至らない。しかもそれも収束しつつあるというのが大まかな流れ。

今件は国内景気(内需)を推し量る物差しとして注目すべき指標の一つ。大口電力使用量は今後も注意深く見守り続けねばなるまい。

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