直近年では761.7万トン…日本国内の生乳生産量の推移(最新)

2024/01/04 02:48

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2024-0102昨今では定期的に牛乳不足や乳製品不足が問題視され、スーパーなどの乳製品売り場の棚が寂しさを覚えたり、「一人一つまで」との購入規制を周知させる貼り紙に遭遇した経験を持つ人も少なくないはず。かつて大規模な乳製品不足が起きた時(【3か月で4社が950トン、バター製造大手が増産計画発表】)には多分に生産工場の生産力不足とランニングコストの高騰、生産量調整のミス、さらには生産の組織構造そのもののが原因とされたが、現在では原材料となる生乳(しぼったままの人の手を加えていない牛の乳)の減少や価格高騰なども小さからぬ要因として挙げられている。それでは原材料となる生乳の国内生産量はどのような推移を見せているのだろうか。今回は農林水産省が発表している各種データを基に、その実情を確認していくことにする。

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国内生乳生産量は減少中、ようやく底打ちか


データ取得元は農林水産省の【牛乳乳製品統計調査】。ここから「長期累年」で経産省の公開データベースe-Stat経由から「牛乳生産量累年統計(昭和60年-)」のデータを取得する。ただし2012年分までしか収録されていないことから、2013年分以降は「牛乳乳製品統計調査」の公表資料から年ベースのもの(各月次報告レポート内に直近数年分の記述がある)を取得して随時追加していく。それらの行程を経て、1985年以降の推移をグラフ化したのが次の図となる。縦軸の一番下がゼロではなく650万トンになっていることに注意。

↑ 国内生乳生産量(万トン)
↑ 国内生乳生産量(万トン)

いわゆる金融危機に伴う資源価格の高騰で、ランニングコストが上昇、乳製品不足が問題視されたのが2008年。しかしそれ以前から生乳の生産量は漸減していたことが分かる。ここ数年ようやく底打ち、反転的な増加を示しているというところか。

これは少子化や食生活の変化に伴い、牛乳や乳製品の需要が減少したこと、そしてコスト高・採算性の問題による生産業者の減少などが要因。昨今では(収益性を遠因とする)後継者不足も指摘されている。

文字通り牛乳や乳製品は多分に「生もの」であるだけに生産調整が難しい。それゆえに株式市場の相場を見るようなもので、その推測が上手くいかないことが生じるのは仕方がないものの、例えば2008年における突発的な乳製品不足騒動は、その主要原因が生産調整のミスだったことが知られている。とはいえ、金融危機を起因とするコストの急騰を予見できるはずもなく、仕方がないのも事実だが。

また昨今ではエネルギーコストの増加と牛乳需要の低迷に伴い、かつての金融危機の時以上に、生産側のそろばん勘定は厳しいものとなっている。詳しくは別の機会に譲るが、中長期的に乳用の牛を飼う畜産農家は減少し続けており、それに伴い乳用の牛の数も減少。生産調整が難しい状況なのも事実ではある。

飲料用が減り、乳製品向けは漸増


よい機会でもあることから、この生乳の利用方法別の生産動向を確認していく。要は日本国内で生産された生乳がどのような用途で使われていくかの推移を見たものだ。まず現時点でもっとも新しいデータとなる2022年分について。

↑ 生乳の用途別処理比率・量(万トン)(2022年)
↑ 生乳の用途別処理比率・量(万トン)(2022年)

半数強が飲料としての牛乳向け、残り半数近くが乳製品に加工される。乳製品向けのうちチーズやクリーム向けがおおよそ半数で、残りはそれ以外。例えばアイスクリームやカスタードプリン、練乳などがよい例である。また育児用粉ミルクもこちらに含まれる。

続いてデータが取得可能な1985年分以降の経年動向。単純積み上げ型の棒グラフと、それぞれの要素の折れ線グラフの2種類を作成する。

↑ 国内生乳生産量(積み上げグラフ、詳細種類別、万トン)
↑ 国内生乳生産量(積み上げグラフ、詳細種類別、万トン)

↑ 国内生乳生産量(折れ線グラフ、詳細種類別、万トン)
↑ 国内生乳生産量(折れ線グラフ、詳細種類別、万トン)

1990年初頭まで飲用牛乳などは漸増していたがその後横ばい、2005年以降は明確な形で減少をきたしている。一方で乳製品向けはほんのわずかずつではあるが漸増しているものの、飲用牛乳の減少分を補うまでには至らず、結果として生乳の生産量全体もまた減少し続けた形となっている。ここ数年では飲用牛乳がやや増加に転じ、乳製品向けも大きく増加の動きを示しているのが目にとまる。

直近2022年分の生産量は約762万トン。これは1980年台後半の水準とほぼ等しい。だが需要は大きく変化しており、飲用の牛乳が90万トンほど減り、その分乳製品向けが増えている。食生活の様式が変わったことを示す一つの指標ともいえよう。


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