そばを通るだけで大人気のプロサッカー選手気分になれる広告

2010/10/18 07:01

思わず真似をする利用客以前【そばを通るだけでセレブ気分になれるカメラの広告】で紹介したように、地下街や地下鉄駅通路は「上下左右が閉じられた狭い空間」「一方向に向かって歩き続ける」というある種特殊な環境となるため、色々な広告媒体として用いられることがある。今回紹介するのもその「特殊環境」を上手く利用したものだが、液晶パネルやインターネットなどのデジタル器材を使うこと無く、昔ながらの「仕組み」で多くの人に「なるほど」と思わせる演出を行った広告である(【The ADS of the World】)。

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↑ Coca-Cola - The Wave / Paper-Plane.fr。
↑ Coca-Cola - The Wave / Paper-Plane.fr。

これはコカ・コーラにフランスの【Paperplane】が技術提供をして、先のワールドカップにおいてブラジル・サンパウロ市内を走る地下鉄の駅通路で展開した広告。毎日27万人もの人が行き交うこの通路の側面に、ワールドカップの応援と開催中の雰囲気そのものを盛り上げるため、そしてコカ・コーラがスポンサーであることをアピールするために設置された。

はたから見ると長さ16メートルのごく普通のパネルに、人々が一列に座っている。格好からしてサッカーの試合の観客なのだろうということが分かる。しかしその横を通り過ぎると、自分の立ち位置に合わせてその観客が立ち上がり、ウェーブを創っていく。

↑ はたから見れば皆が座っているだけのパネル
↑ はたから見れば皆が座っているだけのパネル

↑ しかし横を通り過ぎながらパネルを見ると、自分の目の前の人たちがウェーブを創っているかのように見える
↑ しかし横を通り過ぎながらパネルを見ると、自分の目の前の人たちがウェーブを創っているかのように見える

自分が前進するとその前の方向に居る人たちが立ち、大きく手を挙げ、ウェーブを形成する。前進する毎に立つ人もその方向に移り変わる。まさに自分自身がサッカー選手になり代わり、ボールをドリブルし前進、その横の観客がウェーブで追いかけて大声援をしている雰囲気になる。試合中のプロサッカー選手、しかも皆の注目を集めているヒーロー的な選手になった気分。

これは「パネルにセンサーを設けてその人が通るのを感知すると表示を切り替え」……といった小難しいものではなく、「レンチキュラー」という仕組みを用いている。レンチキュラーの仕組みを使って色々な製品を展開している【清水産業の説明ページ】によると、


両眼の視差は近くの物ほど大きく、遠くの物ほど小さくなるという性質を持っています。
このずれを脳が検出し距離に置き換えることで立体的な物体として認識することになります。レンチキュラー(3D)印刷はこの原理をうまく応用した3Dやアニメーションが表現できる特殊印刷なのです。

レンチキュラーレンズの表面は凹凸になっています。凹凸の数の多さ=表現力の豊かさにつながり凹凸はライン数とも表現されます。凹凸部は半円状の極小レンズが連なっており、凸部のレンズ上で画像が圧縮されることにより立体的な表現が可能となります。
当然ライン数が多ければ多いほど繊細な表現に向いており、逆に少ないと遠くから視認したときの表現力が豊かになってきます。(大判なポスターなどで有効です。)

とのこと。要は目の錯覚を利用し、のぞく方向によって見える画像を別々に用意しておき、動いている(今件なら「座っている」「立っている」の2パターン)ように見せたわけだ。子供向けのお菓子のオマケシールで良く見かけることができる仕組みといえば、思い浮かぶ人も多いだろう。


↑ 清水産業のレンチキュラーシールの例。液晶パネルなどを使うこと無く、のぞく方向で別のものが見えるような仕組みがつくれる。
↑ 清水産業のレンチキュラーシールの例。液晶パネルなどを使うこと無く、のぞく方向で別のものが見えるような仕組みがつくれる。

今件はいわゆる「(ビッグ)ウェーブが一方向に動いていく」ことと、「通路内での人の動きは一定速度で一方向に向かう」のが一致しており、レンチキュラーの仕組みを使うことで「人の動きに合わせてウェーブも動いていくように”その人自身の目から”見える」という点がポイント。ウェーブそのものを一人一人に楽しんでもらうのはもちろん、動画中で子供が試していたように、ウェーブの動きを楽しみながら何度も行き来したりスピードを変えてみたり、ウェーブに気が付いて同じ真似をして手を挙げている人の様子をまわりの人(パネルの「ウェーブ」の様子は分からない)が「?」マークを頭に浮かべて眺めたりなど、パネルによるウェーブを体感している本人だけでなく、周囲の人にまで言葉通り「波及」していくようすが見て取れる。

無理にデジタルな仕組みを用いなくても、工夫とアイディア次第で多くの人の足を留め、注意を引き寄せ、ちょっとした驚きと深い印象を与える演出を創造できる。今回の広告はその好例といえよう。

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