【更新】疑似体験感覚で安さが分かる新車のCM

2010/10/10 08:00

アルバイトを続けるがまだまだ足りない【年代別の自動車保有数とその変化をグラフ化してみる】などのデータからも分かるように、可処分所得が圧迫されている若年層には、ランニングコストや初期投資費用の安い軽自動車が好まれる傾向が強い。安全性をはじめとした各種性能の良さはもちろん必要不可欠の話だが、昨今では単価の高い自動車は「価格の安さ」が、これまで以上に大きなセールスポイントとなっていることは否めない。しかし一方で単に「安いよ安いよ」とデパートのバーゲンセールのように安さを連呼しても、人々は振り向いてくれない。視聴者の目を引き付け、親近感を覚えさせる。あるいは第三者の視線から、安さを改めて実感させるような情景を提示する。それらの演出により、間接的に安さを心に刻ませる素敵なCMが、今回紹介するフォルクスワーゲン社の新型車「ジェッタ」の作品である(Coloribus.com)。

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↑ Moonlighting。
↑ Moonlighting。

これはフォルクスワーゲンの[ジェッタ]の新型モデルのCM。ハイセンスで高性能、それでいて低価格。どの自動車メーカーも自社の新モデルにはそれらのコピーを躍らせるが、それでは消費者の目に留まることがほとんど無い(シャレになってしまうが)ワゴンセールの商品と同程度の注目しか集めない。そこで新ジェッタで展開されたCMは、一人の青年にスポットライトを当てる。

病院のアルバイトで窓越しにふと目に留まった新型ジェッタの超大型ポスター。「すべてが新しい。間もなく登場」そのコピーとスタイリッシュな姿に、言葉通りひと目ぼれした彼は、アルバイトを増やしてこの車を手に入れる決意をする。

↑ 「なんかすげぇ……欲しいな、これ」
↑ 「なんかすげぇ……欲しいな、これ」

新聞に掲載された「ジェッタ」の一面広告を破って「目標」を決め、アルバイト欄で「高支払い」のアルバイトをチェック。まだ価格は発表されていないものの、ニューモデルとなれば価格も高いに決まっている。少しでも実入りの良いアルバイトで稼いでおかなければ。彼の決意は固い。

↑ 「ジェッタ」の一面広告を破って懐に収め、「憧れの自動車」とばかりに持ち歩こうとする。その一方で支払いの良いアルバイトをチェック
↑ 「ジェッタ」の一面広告を破って懐に収め、「憧れの自動車」とばかりに持ち歩こうとする。その一方で支払いの良いアルバイトをチェック

ゴルフ場でのボールの回収、キックボクシングの打たれ役、犬の散歩、着ぐるみで踊りながらのホットドックの宣伝、自転車タクシーの運転、ロディオでの道化役、そして美術学校でのヌードモデル。高収入だが辛いバイトの数々。手にしたバイト料を数え、増えていく「ジェッタ」の新聞広告の切りぬきを眺め、さらにはショールームに展示される実物を憧れのまなざしで見つめながら、「ジェッタ」を手にする日への歩みは続く。


↑ 辛いバイト生活の中でも、「ジェッタ」への思いは変わらない
↑ 辛いバイト生活の中でも、「ジェッタ」への思いは変わらない

再び病院のバイト。自分が「ジェッタ」購入を決めた例のビル貼り広告で「間もなく発売」のところが差し替えられ、「1万5995ドル」との表記。「ウソ、まじかい?」驚愕のあまり、彼は手に持っていたバケツを落としてしまう。


↑ 「ジェッタは1万5995ドルですよ」。衝撃のあまり、彼はバケツを落としてしまう
↑ 「ジェッタは1万5995ドルですよ」。衝撃のあまり、彼はバケツを落としてしまう

彼は落としたバケツからスポンジを拾い直すが、場面はすでに切り替わっている。黒い「ジェッタ」にスポンジをかけるその姿を見るに、「そうか、アルバイトの努力が実り、ついにジェッタが買えたんだな」という状況が分かる。彼の努力の様子を見ているだけに、視聴者も何となく嬉しくなる。ナンバープレートには「自分の」を意味する「MINE」の文字が躍る。

↑ 鼻歌交じりで「ジェッタ」をお掃除中。あれだけ苦労してようやく買えたのだから、嬉しくて当然
↑ 鼻歌交じりで「ジェッタ」をお掃除中。あれだけ苦労してようやく買えたのだから、嬉しくて当然

ここまでで終われば「良かったネ」でおしまいな、ごく普通の「アルバイトで苦労をして新型車が買えました」なCMで終わってしまう。オチが付くのは最後の10秒。カメラはなぜか別の「ジェッタ」に切り替わる。そしてナンバープレートには「MINE 2」。つまり「自分の車、二台目」を意味する。……あれ?

↑ 彼は自分の苦行の成果を目の前にニンマリ。一台分の「ジェッタ」購入の目標額として貯めていたバイト代で、二台の「ジェッタ」が買えてしまったというオチ
↑ 彼は自分の苦行の成果を目の前にニンマリ。一台分の「ジェッタ」購入の目標額として貯めていたバイト代で、二台の「ジェッタ」が買えてしまったというオチ

カメラはもう一台の「ジェッタ」を映したあと、ズームアウト。二台目は先ほど彼がスポンジをかけた車の横に並べられている。要は両方とも彼が買った「ジェッタ」だったわけだ。ここで視聴者は「彼はジェッタ一台分を目標額に必死にアルバイトをしていたが、実はあまりにも安すぎて(普通の新車なら一台分の金額で)二台も買えてしまった」ということが分かる。病院で価格を見た時に、バケツを落とすほどびっくりするのも「なるほど」と理解できよう。彼はあの時、「おい、あの値段じゃ、今貯めてるバイト代で二台も買えちゃうじゃん!」と脳内で歓喜を挙げていたに違いない。

「維持費はどうするんだ」「同じ車種をいきなり二台も買って意味があるのか」と野暮なツッコミをする前に、ストレートにその安さが印象づけられる。視聴者が彼と共に数々のアルバイトをしているかのような気持ちにさせられ、ようやく念願の「ジェッタ」を手に入れたシーンのあとに、もう一台のことが分かるのだから。驚きの度合いも並大抵のものではない。そして「なるほどね……そこまで安いのね」と、にんまりとさせられる次第。

もう一本、別の視点から「ジェッタ」の安さを示したCMはこちら。




↑ Dream Team。
↑ Dream Team。

こちらは「ジェッタ」の開発チームからの視点。昼夜を問わず努力まい進を続け、ようやく完成にこぎつけた自信作「ジェッタ」。その発表会に同席する開発チームは、発表された価格の安さに驚愕し、ある者は怒り心頭、ある者は落胆のあまりに立つこともできずに座りこみ泣き叫び、ある者は発表した司会(社長? 営業担当の取締役?)ににじり寄る始末。「俺達の血と涙と汗と努力の結晶が、たったこれだけの価格でしか無いのか」という魂の叫びが聞こえてきそうで、それがかえって「そこまで安いのか」という半ばツッコミも含んだ驚きと共に、安さを印象つけさせる。

両CMは視点こそまったく別からのものだが、見ている側が興味関心を抱き、疑似体験を覚えさせてくれるという点、そして実際の価格が単なる安さ以上の意味を持っている点では共通している。それぞれわずか1分の長さに過ぎないが、それぞれ「苦労してアルバイトを続ける彼」「昼夜を問わず研究開発を続けるスタッフ」と一体化した上で、それぞれの立場から「ジェッタ」の安さを刷り込まれる、非常に優れたCMといえよう。

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