輸出環境が悪化…2010年9月景気動向指数は2か月連続の下落、先行きは5か月ぶりに上昇

2010/10/09 12:11

内閣府は2010年10月8日、2010年9月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状は2か月連続して下落した。先行き指数は5か月ぶりに上昇傾向を見せている。基調判断は先月よりやや厳しめな表現である「景気は、これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」となった(【発表ページ】)。

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「やや良くなっている」「変わらない」が減少、「(やや)悪くなっている」が微増
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値に関しては今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認をしてほしい。

2010年9月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス3.9ポイントの42.1。
 →2か月連続の減少。「やや良くなっている」「変わらない」が減少、「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加。
 →家計においては残暑の影響で夏物が伸びたが、エコカー補助金終了や秋物の動きの遅れから減少。企業はエコカー補助金周りや急激な円高を背景に輸出環境が悪化して低下。雇用は半導体、電子部品関連でポジティブな動きがあり、上昇。
・先行き判断DIは先月比プラス1.4ポイントの41.4。
 →5か月ぶりの増加。
 →残暑のが収まり、エコポイント対象限定に伴う年末の駆け込み需要を期待して上昇。
先行き判断はエコポイント関連の駆け込み需要に期待するところが大きいが、計測終了後にこの「期待の星」についても12月以降に段階的縮小が発表されている。突然無くなるわけではないが、次回以降期待度の(反動による)減退が懸念される。

全項目でマイナス
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表月分では昨月が全項目でマイナスだったのに対し、一部プラスの項目があるのが幸いといえる。住宅関連は昨今の新築住宅の建設状況や、例えば【2010年8月の新設住宅戸数、前年同月比20.5%増】などの関連数字を見ても、何となく肌身で感じることができるはず。ただその一方、この数か月において「飲食関連」の数字が急速に落ち込んでいるが気になるところではある。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン(ズ)・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「各数値が1桁になるのでは」という懸念もあったものの、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降はもみ合いながら上昇が続いていた。今月は先月に続き、少なからぬ減退が確認できる。「合計」の値を見ると、まさに中間の「50.0」を天井として、その下側の領域でもみ合いを続けているようでもある。雇用関係の数字は今回はかろうじてプラスを見せているが、グラフで見ればお分かりの通り、誤差の範囲内。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは良い状態。
・政策や外因、円高などを起因とする
不安感から低迷状態は継続中。
・「天井観確定&今後は下落」へ
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、今回の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素(いわゆる「金融(工学)危機」)が、多種多様な方面においていちどきに、連鎖的に悪影響を与えた様子が数字、そしてグラフにも明確に表れている。その後の様子は直前で説明しているように、「水準値にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態。

景気の先行き判断DIについては、先月から転じて上昇した。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

前月比でマイナス項目は1つのみ。他はすべてプラス。ただし上げ幅を先月の下げ幅と比較すると、上昇パワーは極めて弱く、リバウント的な雰囲気が感じられる。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、かつてない不安感を多くの人が覚えていたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン(ズ)・ショック」)が、大きな不安感の中にある人々の心境を叩き落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えたのかが見てとれる。

今月は先月と比べると方向性は上向き、ただし跳ね方は弱いのが分かる。再び上昇へ向かう動きはあまり期待できない。先月触れたように「上限」が50という、厳しめの低迷が続きそうな雰囲気ではある。

その場しのぎですら支離滅裂感も

発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・残暑でエアコンが意外に伸びたことから、前年と比べると非常に良かった。エコポイント制度が追い風となり、薄型テレビもよく売れている(家電量販店)。
・前半は季節外れの猛暑により、アイス等の盛夏商材が売れていたが、彼岸以降の天候の変化により売行きが大幅に鈍っている。ただし、たばこだけは値上げの影響で大きく売上を伸ばしている(スーパー)。
・希望価格が低下傾向にあり、従来のローコストといわれる価格帯より一段と低い価格帯に関心が高まってきており、受注件数が増えても利益面で厳しい状況が予想される(住宅販売会社)。
・厳しい残暑の影響で、秋物衣料が大苦戦している。また、食料品、日配品もこれまで以上に価格設定が厳しくなっている(百貨店)。
・今年のシルバーウィークは飛び石連休であったため、前年比で集客は20%近く低下している(観光名所)。
・エコカー購入補助金終了後の販売量の動きは前年比50%減で推移している(乗用車販売店)。

■先行き
・9月後半から天気も安定し、正常に戻り、前年実績に戻りつつある。価格的には低くなっているが、秋物の売行きは良い。今後も現状維持が続く(一般小売店[衣料・雑貨])。
・家電エコポイントについて、省エネ効果の低い商品が対象から外れ、駆け込み購入が予想されるが、単価面で前年より大幅に価格が下落しているので、売上は前年と同じ程度と予想している(家電量販店)。
・エコカー補助金の完全終了により、急激に来客数も少なくなり、客も車検整備がほとんどで、買換えは減少しつつある(乗用車販売店)。
・9月はたばこ値上げ前の特需があったため客単価が増加した。そのため、単月では前年大幅増になる見込みである。しかし、10月以降、たばこの売上減少とともに、来客数減少、客単価減少が予想される(コンビニ)。
・沖縄の観光シーズンである夏も終わり、徐々に予約受注状況が鈍化してきている。10月末からは羽田空港新滑走路の開設及び円高により、海外旅行マーケットが過熱すると考えられる。また尖閣諸島の問題により中国からの観光客減が予測されるなど、マイナス要因が大きい(観光型ホテル)。
などとなっている。全般的に客単価・各種価格の低下圧力から売上、利益の面で厳しい状態が続くこと、イベント的な変化や政策面で一部プラスはあるものの、マイナス要因が多数散りばめられているのが分かる。正直この具体的コメントで「先行き」指数がプラスをカウントしているのが少々信じがたい。


金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、国内外に多発する
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は継続中。
ミニ特需も過ぎ、再び
景気は再びさらなる下落へ。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見える。基本的に現在も2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはない。だが先月言及したように、アノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの強さの力が働く……というより、持ち上げる力がまったく働かず、下げる力ばかりが働いている状況であることを現実として認める必要がある。よって2003年以降の「企業・家計指数が50前後を行き来する」パターンではなく、そこから全数値がやや下に下がった状態、すなわち本来「平均値」を示す50を天井とし、マイナス圏でのもみ合い、あるいはさらなる下落の動きが継続する可能性は高い。直近で考えても、家電エコポイントの規模縮小が先日発表されており、これに伴うマインドの低下は避けられない。

数か月前までに見られた「リーマンショックにおけるどん底への慣れ」も薄らぎ、消費者の間にはリアルな現実感と共に「先行き不安感」が高まりを見せている。新たな客船に乗り換えて荒波の中を突き進み、「これまで」の航海を振り返りながら「現状はまだマシかな」「前と比べれば良いに決まっている」と考え直すことすら止めて、「とにかく艦長や船員を信じ、航海を続ければ何とかなるはずだ」と窓越しに艦橋を覗いてみたところ、船長はひたすら影に隠れてまともな指示を出さず、船員たちは皆身勝手な行動をとっていたり、あるいは仲間割れ・内輪げんかをしている、まさに支離滅裂な状況の真っただ中。そのような状況を目にし、ジグザグ航行を続ける船の中で、乗客が不安に駆られるというところか。そしてその窓すら船の広報担当がすぐに絵でふさぎ、その絵には「粛々と操舵している様子」が描かれているのが現状ともいえる。

読者諸氏におかれては、多少手間と時間がかかり、正直面倒なところもあるが、一歩外に足を運び、あるいは手を伸ばし、いつも与えられているものの先、閉じられているカーテンの向こう側を、眺めてみることを強くお勧めする。もちろん眺める先を間違えないよう、信じるに足る人の助言に耳を傾けることを忘れてはならない。自分の考えをより確実なものとする、あるいは今まで見えてこなかった、新しい、そして正しい判断をするのに必要な情報が得られるに違いない。

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