【更新】職種別有効求人倍率(2010年10月更新版)

2010/10/06 12:05

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求職先に【2012年卒採用状況、就職天気予報は「氷河期継続」】で楽天リサーチ調査による、就職状況に関する人事担当者からの聞き取り結果を記事にした。その際に、「そういえば具体的な求人倍率は現在どうなっているのだろうか」という疑問が頭をよぎり、以前【職種別有効求人倍率(2010年1月更新版)】で東京などの有効求人倍率をグラフ化したことを思い出した。せっかく良い機会だからというのもあり、今回はそれらのグラフを現行データのものに書き換え、グラフを生成しなおすことで、現状を再認識することにした。


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有効求人倍率そのものはご存知の通り、

「公共職業安定所(ハローワーク)に申し込まれている求人者数」÷「求職者数」

で算出されるため、1倍を超えていれば「企業が大勢の求人をしている」ことになり、職にあぶれる人は(えり好みさえ無ければ)いない計算になる。1倍未満なら求職者の方が多いから、他のすべての条件がすべて合致しても、職にあぶれる人が出てくる。また、ハローワークに登録していることが前提になるため、職を探していても登録をしていない人は、有効求人倍率の計算には含まれないことになる。

例えば就業可能な人が100人居る村に工場が1つだけあり、そこで10人の求人があったとする。そこに100人全員が求職すれば、 10÷100=0.1 で、有効求人倍率は0.1となる。

そこで早速、【東京都のハローワークの統計データ】を元に、東京都の各職種の有効求人倍率を調べた結果が次のグラフ。

↑ 東京都職種別有効求人倍率(2010年8月、一般常用)
↑ 東京都職種別有効求人倍率(2010年8月、一般常用)

「一般常用(雇用形態)」とは日本標準産業分類によれば、「期間の定めなく、あるいは一定期間を超えて雇用されている者」を指す。特記していない限りパートやアルバイトは含まれない。正規・契約・派遣で期間の定め無し、と認識すればよいだろう。また「分類不能の職業」とは一般区分化できないもの(例えばテキヤさんなど)が挙げられる。

全体では0.52倍という値が出ているが、その一方で「保安の職業」(警察官やガードマンなど)「福祉関係の職業」(介護など)は2倍前後の値を示している。また「管理的職業」「生産工程・労務の職業」(各種工場での製造、修理、運転)「事務的職業」など、特定の資格や技術をあまり必要としない職種には求職者が集まる一方で求人が少なく、倍率が低くなっていることが確認できる。椅子取りゲームなら座る椅子が少ない状態。

続いて職種を(可能なものについては)細分化し、求人倍率の高いものと低いものを抽出してみる。抽出の際の基準は前回記事同様に、高いものは2倍以上、低いものは0.2未満とした。

↑ 細分職種別有効求人倍率(東京都、2010年8月、一般常用)
↑ 細分職種別有効求人倍率(東京都、2010年8月、一般常用)

高いものだと5倍近く(求職者1人に対して5人近い求人がある)、低いものでは「採掘の職業」の0.10倍(求職者10人で求人が1人分しかない)と、かなり大きな開きが見受けられる。また、それぞれを見比べてみると

・求人倍率が高い(企業から引く手あまた)
 ……資格や免許、高度な技術が求められるもの(医師、薬剤師等)
 ……「キツい仕事」というイメージが強いもの(その他の福祉、保安の職業)
・求人倍率が低い(求職者に対して仕事が枯渇している)
 ……作業重度の低いもの(一般事務員)
 ……特定の資格や免許、高度な技術を必要としない(と思われている)もの

などの傾向が見られる。

さて、前回と今回のグラフを見比べると、「合計」値が前回0.44で今回は0.52であることから、幾分の状況改善が確認できる。ただし2枚目の「細分職種別有効求人倍率」で、求人倍率が高い項目数が減り、低い項目数が増加した点を見ると、雇用状況は「全体としては多少回復」「個々事例を見ると厳しい面が多い」などが分かる。


地方はまちまち……!?
東京都だけでは傾向が片寄っている可能性もある。そこで前回同様に[愛知県]と[長野県]双方において、職種別有効求人倍率を同じくグラフ化することに。地域によってデータの取り扱われ方、公開頻度が異なるので、互いの整合性がとれているわけではないが、参考にはなるはず(長野県のデータはパートと一般常用別個のデータしかなかったので、こちらで合算した)。

↑ 愛知県職種別有効求人倍率(2010年8月、パートを含む一般常用)
↑ 愛知県職種別有効求人倍率(2010年8月、パートを含む一般常用)

↑ 長野県職種別有効求人倍率(2010年8月、パートを含む一般常用)
↑ 長野県職種別有効求人倍率(2010年8月、パートを含む一般常用)

東京都のデータと順位、区分に多少の差異が見られる部分もあるが、有効求人倍率の高低が生じる職種については類似の動きが見られるのが分かるだろう。また、一部の職種(例えば保安関係)では東京都以上の求人倍率を誇るものもあるが、全般的には同程度、あるいは東京都より状況が厳しい様子がうかがえる。ただし「保安の職業」が大きく全体値を引っ張っている関係もあり、両県とも合計値は東京都の0.52を上回る値を見せている。

個々の県の状況を前回(2008年11月)と見比べると、愛知県は全体的に改善、長野県では一部状況が悪化した職種が確認できる(例えばサービス職は1.23から0.97と、1.0以下に転じている)。職種だけでなく地域によって、雇用の回復・悪化状態は異なるということだろう。



前回の計測時期が11月で今回が8月だったため、季節属性もあるため一概には比較できないが、少なくとも2009年11月と比べれば雇用情勢は多少なりとも健全化しているようすが確認できる(来年1月に再度調査し、季節属性の無い状態での比較記事を掲載する予定)。ただし一様に良くなっているわけではなく、全体的な傾向として、

・求人倍率の平坦化(高い倍率のものは低く、低い倍率のものは高く)
・求人倍率が1倍を切る職種の増加

のような動きが認められる。また、合計値では0.1ポイント前後の改善は見られるものの、東京・長野・愛知いずれにおいても0.5-0.6倍程度でしかない事実に変わりは無い。これは職種における企業と個人間のミスマッチがまったくなかったとしても、「2人に1人」-「5人に2人」は職にあぶれてしまうことを意味する。

先の楽天リサーチにおける雇用側の姿勢を見ても、多くの企業が雇用に対して慎重な姿勢を崩してはいない。今後雇用情勢の劇的な改善を望むことは難しく、有効求人倍率においても注意深くその動向を見守る必要があろう。


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