書店の売上高・経常利益率をグラフ化してみる(2010年9月更新版)

2010/09/19 07:39

大型書店イメージ先に【書店数、確実に減少中…書店の減り具合をグラフ化してみる】でも触れたように、インターネット通販の普及で、実物の本屋は確実に数を減らしつつある。紙媒体としての書籍が売れなくなっている(【1か月の購入金額は155円!? 週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる】)だけでなく、販売経路も強力なライバルが躍進中なのだから、ビジネス的にも大変なのは明らか。今回は【書店の売上高・経常利益率をグラフ化してみる(2010年1月更新版)】に続く形となる、書籍・文具業の財務的データを眺めてみることにする。

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元データは【日本著者販促センターの「書籍・文具業の売上高ランキング」】から。一応用語について説明しておくと、「売上高経常利益率」とは儲けの度合いを示す。

会計上の計算の上では、まず本業(書店の場合は本の販売)の売上から原価が引かれ、これが「売上総利益」になる。そしてそこから「販売費」や「一般管理費」(俗にいう「販管費」)が引かれ、本業による儲けである「営業利益」が計算される。そしてそこから本業以外の「営業外収益」と「営業外費用」が足し引きされ、「経常利益」が計算される。

・売上高-売上原価=売上総利益
・売上総利益-(販売費+一般管理費)=営業利益(本業の儲け)
・営業利益-(営業外収益-営業外費用)=経常利益(本業+副業の儲け)

そして、この「経常利益」を売上高で割って100分率で算出したのが「売上高経常利益率」。

「結局売上高経常利益率は何を意味するのか」という疑問があるだろう。この「売上高経常利益率」とは「その会社の本業と副業を合わせたお仕事の利益率」。例えばこの値が10%なら、1000円の商品を売ると100円の儲けが出ている計算になる(本当はもっと細かい計算があるがここでは省略)。

「1000円の商品を売って10円しか儲からない(売上高経常利益率が1%)」と「1000円の商品を売って100円儲かる(10%)」なら、後者の方が効率よいビジネスをしていることになる。売上高経常利益率が高い方が「賢い・割の良い商売」をしている理屈だ。逆に言えば売上高経常利益率が低いほど、何らかのトラブルが生じた時に金銭的な対応が難しくなる。

さて肝心の「大手書店・文具店」の売上高経常利益率だが、最新データについては次の通りとなる。

まずは企業単位の売上高ランキング。掲載されている25社(年商100億円以上)のうち上位20社ついてグラフ化した。

↑ 2010年発表の書店売上ランキング(億円/年)(上位20位のみ)
↑ 2010年発表の書店売上ランキング(億円/年)(上位20位のみ)

店舗数の違い、1店舗当たりの規模の方針の相違などもあり、単純比較はやや誤解を生む可能性がある。それでも「スケールメリットのあるなし」で考えると、知名度の高い紀伊国屋書店や丸善、有隣堂、ジュンク堂書店、ブックオフコーポレーション、文教堂などが上位についているのが分かる。

元資料には店舗数も併記されている。そこで売上高を店舗数で割り、「1店舗あたりの売上高」を算出したのが次のグラフ。平均的な1店舗あたりの売上高≒店舗規模の違いが分かる。

↑ 1店舗あたり売上(億円)
↑ 1店舗あたり売上(億円)

多少順位の違いはあるが、やはり全体的な売上高上位の企業が、1店舗あたりの売上高でも上位についている傾向が分かる。純粋な、あるいはそれに近い「書店」としては、規模の拡大に頼るのが「正攻法」としての生き延びる道と容易に推測できる。

一方で、グラフの右端に「ブックオフ」と「ヴィレッジヴァンガードコーポレーション」がいるのが分かる。これは1店舗あたりの「売上高」が小さい事を意味する。両社とも売上高全体ではそれなりの順位にいるが、丸善などと比べれば後陣の位置にある。しかしこの2社、肝心の「売上高経常利益率」では上位陣に位置している。

↑ 売上高経常利益率(売上高上位20位のみ、利益「-」表記はゼロで計算)
↑ 売上高経常利益率(売上高上位20位のみ、利益「-」表記はゼロで計算)

元データでは「経常利益」の項目が「-」表記されている書店が少なからず確認できる。単純に利益が出ていない他に、数字が未公開の場合もあるのだろう。ここではすべて「ゼロ」として計算しているが、少なからぬ書店が実質的にマイナス、つまり赤字を出していることは容易に想像がつく。

それはともかくとして。第四位のブックオフは良く知られている古本屋のフランチャイズ。徹底されたシステム化と原価が安いこともあり、高い利益率を誇っている……はずなのだが、前回記事データの「5.9%」と比べると随分と落ち込んでいるのが分かる。これは以前【ブックオフの1Q決算短信と「パッケージ販売は中古も含めて限界」と】でも触れているが、ブックオフ自身がリユース事業の拡大に向けて先行投資をしていること、CDアルバムやゲームソフトの販売価格を先行して下げたことなどが要因。CDなどのパッケージ販売が減退しているのは事実だが、急激な売上高経常利益率は特殊要因も絡んでいる。ブックオフ自身の思惑通りなら、しばらくすれば利益率は元に戻る、はず。

それにも増して利益率の高さがずば抜けているヴィレッジヴァンガードコーポレーションは、単なる本屋ではなく、おもちゃやCD、雑貨など色々な商品を取り扱い、書籍そのもののボリュームは半分以下といった運営形態。そしてPOSシステムが使われていない・特徴的なPOP戦略など、普通の本屋とは一線を画する経営方針を採用している。そのような、他の書籍・文具業社とは違う経営スタイルだからこそ、高い売上高経常利益率を挙げられたと考えてよい。ある意味、「未来を行っている」形と表現して問題は無い。



前回の記事、そして今件の本文中でも触れているが、純粋、あるいはメインが書籍・文具業の店舗においては「規模の極力な拡大(店舗数、1店舗当たりの売上)」で何とか経営を維持しているのに対し、「書籍・文具””取り扱う」企業は1店舗あたりの規模が小さくとも高い収益率を挙げている。

しかし【漸減するレコード・CDレンタル店舗数をグラフ化してみる(2009年度分)】でも触れているが、協業分野の有力候補であるCD・DVDは、販売・レンタル共に状況的にはあまり思わしくない。

読者、つまり顧客層の可処分所得は横ばいか減少を続ける傾向を見せ、雑誌そのものの「媒体力」も低下中。さらにインターネット通販の利用率は増加を続ける一方。書籍や文具を販売物の一要素としてとらえているヴィレッジヴァンガードコーポレーションは別としてとして、その他の「書籍販売をメインとしている書店」は、今この時点で起きている環境の変化に、適切な対応、言い換えれば「進化」を求められている。さもなくば「市場規模にあった適正な数」まで淘汰されていく可能性は否定できない。

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