立体視の仕組みをフルに使ったボーダフォンのコマーシャル

2010/09/16 07:11

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立体視日本ではソフトバンクに買収されて同グループの傘下に収まり「ソフトバンクモバイル」となってしまったが、海外ではいまだに携帯電話のキャリアとしてボーダフォンは有力な勢力に違いはない。今回紹介するのは、ニュージーランドのボーダフォンが展開したコマーシャル。「いつも自分達は新しい技術・新しい商品・新しいサービスを提供していますよ」という日頃のスタンスを「新しい(NEW)」というキーワードを全面に押し立て、素敵な演出でアピールする、いわばCI的な映像である(【Creative Criminals】)。


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↑ In with the New。
↑ In with the New。

白い通路に現れる赤いペインティング。少しずつカメラが引いていく、ある地点でそのペインティングが「NEW」という文字が飛び出してきたかのように見える。以前【文字や絵柄が言葉通り「飛び出て」きそうな3Dアートたち】【本当に飛び出ているように見えるパックマンとモンスター】で紹介したような、立体視、歪み絵(「Anamorphic Art」「Anamorphosis」)、トリックアートの手法を用いたものだ。カメラはそのまま横に視点をずらすが、そこには白い壁に創られた棚と、その棚に置かれた多種多彩な、新旧雑多な家電用品など。これらもやはり、平面に描かれ、ある視点から見ると立体的に見える仕組みのもの。

続いて「トントン(KNOCK KNOCK)」、「誰か居ますか?(WHO'S THERE?)」の文字が一面に描かれ、ちょっとカメラの視線がずれると、すきま……に見える扉から、まるで「はい、私が居ますよ」と答えるが如く人が出てきて、目の前を通り過ぎていく。そしてその人を追うカメラ。

↑ 「トントン、誰かいますか」が映し出された直後にカメラ視線が少しズレて、見えた扉から人が出てくる
↑ 「トントン、誰かいますか」が映し出された直後にカメラ視線が少しズレて、見えた扉から人が出てくる

カメラ視線は小さなステージのような場所に。そこにはウォークマン、ルービックキューブ、フォードT、インターネットなど、さまざまな「NEW」、つまり世界を大きく変えたものが立体視の仕組みで描かれている。視線が右から左へと少しずつ移動するが、それにつれて右側に描かれたものから一つずつ立体に見えていくようすは、まるで次々と実物が目の前に現れるかのような錯覚を視聴者にもたらしていく。そして最後に見えるのは携帯電話たち。

↑ 小さなステージ上に描かれている、さまざまな「NEW」。カメラの視線が動くにつれて、一つずつ平面から立体に見えていく
↑ 小さなステージ上に描かれている、さまざまな「NEW」。カメラの視線が動くにつれて、一つずつ平面から立体に見えていく

目の前に新製品のスマートフォンと、それを持つ人の手が映し出される……が、これも一枚絵では無く、複数のオブジェクトとその後ろにある壁を重ね合わせて見せたもの。さらに視線が動き、オブジェクトが「NEW」の文字を示しているのが見えてくる。

↑ 新型のスマートフォンを持つ手。壁とオブジェクトに描かれた絵を一体視する視点で見せている。これの視線が変わると……
↑ 新型のスマートフォンを持つ手。壁とオブジェクトに描かれた絵を一体視する視点で見せている。これの視線が変わると……

↑ オブジェクトそのものが「NEW」の文字であることが分かる。絵が描かれているのは横の部分なので、この方向からは見えない仕組み
↑ オブジェクトそのものが「NEW」の文字であることが分かる。絵が描かれているのは横の部分なので、この方向からは見えない仕組み

このコマーシャルが優れているのは、普通なら単体で使われがちな立体視・だまし絵の仕組みを複数つなぎ合わせて用いていること。そしてそれらについて見る側(カメラ)視線を動かすことで、順繰りに対象物を浮かび上がらせたり(小さなステージの場面)、物語性を演出したり(「トントン、誰か居ますか?」の場面)と、色々な見せ方に応用させていること。さらにはそれら複数の場面を一度もカメラを切り替えることなく、スムーズに視線を動かし続けることで、流れに一貫性を持たせて視聴者の「気持ちの切り替え」のスキを与えず、最後まで注力させてしまう点などが挙げられる。そしてもちろん登場する様々なビジュアルは「NEW」のテーマに沿ったものであり、十分以上に視聴者の心に「NEW」のイメージを刻み込むことになる。

コマーシャルは多くの人に観てもらう必要がある。しかも「ながら視聴」ではなく「集中・じっくり視聴」で、内容をしっかりと覚えてもらわねばならないのはいうまでもない。その点では今回のボーダフォンのコマーシャルは、多くの人に、しかも集中して観てもらえたに違いないという観点で、非常に優れていると評価できよう。


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