急激な円高を背景に輸出環境が悪化…2010年8月景気動向指数は2か月ぶりの下落、先行きは4か月連続の下落

2010/09/08 19:35

内閣府は2010年9月8日、2010年8月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状は2か月ぶりに下落した。先行き指数は4か月連続の下落傾向を見せている。基調判断は先月よりやや厳しめな表現である「景気は、引き続き厳しい中で、持ち直しの動きがこのところ緩やかになっている」となった(【発表ページ】)。

スポンサードリンク


「やや良くなっている」「変わらない」が減少、「(やや)悪くなっている」が微増
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値に関しては今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認をしてほしい。

2010年8月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス4.7ポイントの45.1。
 →2か月ぶりの減少。「やや良くなっている」「変わらない」が減少、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加。
 →家計においては猛暑の影響で夏物が伸びたが、客足の減少や秋物の減退で減少。企業は急激な円高を背景に輸出環境が悪化して低下。雇用は企業側態度が正規職員の採用に慎重な動きを見せていることから低下。
・先行き判断DIは先月比マイナス6.6ポイントの40.0。
 →4か月連続の減少。
 →消費性向の鈍化、環境対応車への補助制度終了懸念、さらには円高、株安などから一様に低下。
猛暑特需すらも凌駕する客足の低下や秋物の減退によってマイナス値が出たとなると、来月以降はどうなるのかという不安がよぎる。やはり先月までの「天井観」ともあわせ、天井を打った後の宿命ともいえる、下落傾向を見せ始めるのだろうか。

全項目でマイナス
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表月分では昨月から転じて、全項目でマイナスとなっている。「酷暑」と表現できるほどの暑さから、飲料関係をはじめとした夏物が飛ぶように売れた。しかしそれ以上に客足の遠のき具合や、そろそろ準備、一部では先行スタートがちらほらと見えている秋物商戦の商品に消費者が引け腰になっているのが、マイナス値を見せた主要因。また、企業系は急速に進む円高と、それを起因とした株安が大きな足かせとなっている。雇用関係の下げは先月と同じく、中長期的な動きへの企業側の慎重さによるもの。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン(ズ)・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「各数値が1桁になるのでは」という懸念もあったものの、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降はもみ合いながら上昇が続いていた。今月は先月から転じて少なからぬ減退が確認できる。「合計」の値を見ると、まさに中間の「50.0」を天井として、その下側の領域でもみ合いを続けているようでもある。雇用関係の数字も今回は大きく値を減らしてしまった。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは良い状態。
・政策や外因、円高などを起因とする
不安感から低迷状態は継続中。
・「天井観確定&今後は下落」?
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、今回の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明らか。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、ズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素(いわゆる「金融(工学)危機」)が、多種多様な方面において一斉に悪影響を与えた様子が数字、そしてグラフにも明確に表れている。

現在2010年夏季は、2001年からの「大幅下落・リバウンド」「再下落と、緩上昇」を経た2003年後半期における、景気横ばい期になぞらえることができる。しかし内外の環境を見る限り、このまま横ばいの形を見せるとは想像し難く、前回のパターンを踏襲するか否かは微妙なところ。

景気の先行き判断DIについては、先月に続き減少した。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

前月比でプラス項目はゼロ。しかも下げ幅も先月から大幅に増加している。先月は「現況ポジティブ先行きネガティブ」という構造だったが、今月は双方ともマイナス。さらに先行きの方がマイナスの幅が大きいところを見ると、先月から継続して全体的な景気感のベクトルはマイナス方向を指しているように受け止めるのが自然。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、かつてない不安感を多くの人が覚えていたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン(ズ)・ショック」)が、大きな不安感の中にある人々の心境を叩き落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えたのかが見てとれる。

今月は先月と比べてるとさらに強めに、マイナスの気配が強い。現状指数同様、2003年中盤以降同様に横ばい期に入ったのかもしれない。ただし今回は「上限」が50という、厳しめの低迷が続きそうな雰囲気ではある。

先行き不安高まる、ガイドは逃亡
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・例年にない猛暑の影響で、エアコンや扇風機などの夏物家電の売行きが好調で、全体の売上を底上げしている(家電量販店)。
・今月は猛暑で、アイスクリーム、スポーツドリンク等が非常に好調で、昨年と比べ悪化していた売上が改善している(コンビニ)。
・前年は夏休みの旅行受注が新型インフルエンザで落ち込んだため、今年は増えると期待していたが、2年前に比べてもさほど伸びていない。ただし、8月の旅行の間際予約があるなど、円高の影響で良い動きも出てきている(近畿=旅行代理店)。
・猛暑のせいもあるのだろうか、街の人出は途絶えてしまい、売上に結び付かない。バーゲンも不振であり、秋物も動かず、良い材料が無い(商店街)。
・今年の猛暑は、近くでもタクシーに乗る状況と思えるが、実際には乗ってもらえない。景気が悪い証拠であろう。夜も飲みに出る人が少なく、益々悪くなっているように感じられる(タクシー運転手)。

■先行き
・秋冬商材の実需時期であるが、円高や株価下落など日本経済が低迷する流れの中で、消費マインドはますます低下して、景気が良くなるとは考えにくい(衣料品専門店)。
・住宅版エコポイントの期間延長や、住宅ローン金利の優遇措置の延長など、客の間で買い得感が続けば良い方向に向かう。ただし、今は現状維持が精一杯である(住宅販売会社)。
・10月からのたばこ増税にともなう価格改定で、たばこの消費量が大幅に減少することになり、客の来店頻度が減少する。それに付随して、たばこ以外の商品の販売量も減少することになり、売上の苦戦が見込まれる(コンビニ)。
・現在の日本経済は円高による厳しい状況にある。また、エコカー購入補助金の終了など、これからも厳しい状況が続く。県外からの入域観光客に頼る沖縄観光は厳しい状況が予想される(観光名所)。
などとなっている。今月は先月と打って変わり、猛暑によるポジティブな材料を吹き飛ばすかのような継続的、突発的マイナス要素が山ほど(例えば円高、補助金の終了、たばこの値上げ、消費性向の減退)影響を見せ始めている。特に「今後に対する不安感」が噴き出るかのような勢いが感じられる。来月以降、これらの心境が具体的に数字をどこまで動かしていくのか、不安は尽きない。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、国内外に多発する
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は継続中。
ミニ特需も過ぎ、再び
景気は下落へ、か。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見える。各種景気の循環説にも合致しており、振幅の違いはあれど、予想通りに状況は進むものと考えられる。現時点では(下げ幅こそ違えども)着実にその状況を継続中で、この仮説が正しければ、今後は2003年中盤以降のパターン「雇用指数の上向きと、企業・家計指数のもみ合い」を踏襲することになる。

ただしアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの強さの力が働けば、話は別。コメントの端々に見られる指摘、そして内外の経済・政治動向、さらにはここ数か月の具体的な数字の動きを見る限りにおいては、本来「平均値」を示す50を天井とし、マイナス圏でのもみ合い、あるいはさらなる下落を見せる感が強い。少なくとも昨今の厳しい雇用情勢は継続、あるいはさらに悪化を見せていくものと考えた方が良さそうだ。

数か月前までに見られた「リーマンショックにおけるどん底への慣れ」も薄らぎ、消費者の間にはリアルな現実感と共に「今後の動向への恐れ・不安」が高まりを見せている。「これまで」の道のりを振り返り現状はまだマシかなと考え直すのを止めて、それでは歩み出そうかと前を向いて「これから」を見つめるようにしたところ、道案内してくれるはずのガイドがラーメンを食べに出かけてその店で写真撮影をして大はしゃぎをしていたり、勝手にヒッチハイクをしてどこかへ出かけてしまい、その場に姿を見つけることが出来ず、消費者たちが不安に駆られるというところか。

読者諸氏におかれては、多少手間と時間がかかり、正直面倒なところもあるが、自分が常日頃から接している、接することを強要されているもの、信じているもの、信じるべきと常日頃から何となく教わっているものだけでなく、一歩外に足を運び、あるいは手を伸ばし、いつも与えられているものの先、閉じられているカーテンの向こう側を、ちらりとだけでも眺めてみることを強くお勧めする(もちろん眺める先を間違えないよう、信じるに足る人の助言に耳を傾けることを忘れてはならない)。自分の考えをより確実なものとする、あるいは今まで見えてこなかった、新しい、そして正しい判断をするのに必要な情報が得られるに違いない。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2017 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー