年齢階層別の収入や負債の推移をグラフ化してみる(2009年分データ反映版)

2010/08/23 19:30

先に【四分の三は3人までの世帯、進む少人数世帯化…構成人数別世帯数の推移をグラフ化してみる(2009年分反映版)】などで、以前【平成20年国民生活基礎調査】の収録データを元に分析した記事を【平成21年国民生活基礎調査】のデータを反映したものに差し替えた記事を掲載した。その際に思いだされたのが、「少人数化は進んでいるが、世代間の金銭的な格差はどのような推移を見せているのだろうか」ということ。そこで以前、総務省統計局が発表している【家計調査報告】を元に、【年齢階層別の収入や負債の推移をグラフ化してみる】を記事にしていたことを思い出した。良い機会でもあるので、今回はこの各種グラフを最新データを反映したものに作り替えることにする。

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統計データなどは【家計調査報告(貯蓄・負債編)-平成21年平均結果速報-(二人以上の世帯)】の「目次」以下のリンクから。色々とリンクが張ってあるが指し示ているファイルそのものは同じで、ファイル内のページが違うのみ。ちなみに「勤労者世帯」とは世帯主が勤め人である世帯。ただし社長などの役員は「勤労者以外」とする。世帯主が役員、個人営業世帯、無職世帯(年金生活で世帯主が働いていない場合も含む)などは今件データには含まれない。

まずは年間収入の推移。以前の記事からグラフ生成ソフトが変わっているので、多少違和感を覚えるかもしれない。また、このグラフでは縦軸の下限が400万円になっていることに注意を要する。

↑ 年間収入推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 年間収入推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)

30歳以下の収入が少ないのは当然として、あとは年齢が上がるにつれて収入も増えていくのは、年功序列制度のたまものといえる。60歳以上になると一度定年退職をした後に(退職前よりは安い賃金にて)嘱託などで雇われた人、アルバイトなどで年金・退職金の補てんをする人なども含まれるので、平均的な収入は落ちることになる(それでも30代よりは多い)。一方、この6年の間に大きな違いは見られない。40代がやや漸減傾向にあるのが気になるところか。

次に「現在貯蓄高」。これは負債を考慮しない、単なる貯蓄の額(預貯金、生保の掛け金、有価証券、社内貯金、共済などの貯蓄の合算。個人では無く、世帯全体の貯蓄を意味する)。例えば借金が1億円あっても100万円の貯金があれば、貯蓄額は100万円になる。この例は冗談のように聞こえるが、多額の住宅ローンを抱えていればありえない話ではない。

↑ 現貯蓄額推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 現貯蓄額推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)

60歳以上の平均値が2007年には急上昇している。これは、団塊の世代が定年退職を迎え、退職金を手に入れた該当年齢の人が急増したことによるものと思われる。一方でその他の年齢層は2006年以降下降の傾向を見せている。2008年に入ると60歳以降の貯蓄額も減少し、その他の世代もほぼ横ばいを維持するが、経年による蓄財の結果がそのまま数字に表れる形であることに違いは無い(歳を重ねるに連れて過去の蓄財が山積されて増える、つまり若年層ほどその年数が少ないので貯蓄額も小さいという意味)。

負債額の推移を見ると、以前の記事で言及したように、2007年、そして2008年に至るまで、特に30歳未満・30歳代が負債を大きく増やしているのが確認できる。

↑ 現負債推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 現負債推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)

2007年の全体的な貯蓄の減少・負債の増加は、景気の急激な悪化に対する影響が一端にあると見てよいだろう。ところがその後、2008年以降は50代を除けば負債は横ばい、あるいは減少傾向すら確認できる。

↑ 住宅・土地のための額推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 住宅・土地のための額推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)

額こそ違えど「現負債推移」と「住宅・土地のための額推移」は、各年齢層毎の推移がほぼ一致しており、30歳未満・そして30代の層が2007年-2008年にかけて、少々背伸びをして住宅を購入したようすがうかがえる。逆にいえば、各世帯における負債のほとんどは住宅ローンで占められていると見てもよい。実際、年齢的にほとんど住宅ローンを返済し終えた60代世帯は、負債をあまり抱えていない。

当然、純貯蓄額(単純貯蓄残高-負債現在高)も、負債の負担が小さい、そして経年による蓄財の大きい高齢層の方が高い値を見せる。

↑ 純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)

特に「背伸びをして住宅を購入した2007年-2008年の30歳未満・30歳代」は純貯蓄額がマイナスに落ち込んでいるのが分かる。そして2009年は30歳未満がほぼゼロにまで回復しているのも確認できる。住宅ローンは表現を変えれば「住宅という蓄財の証」でもあり、一概に負債としてネガティブなイメージを持つのは妙な気もするが、それでも毎年一定額をローン返済に回される限りにおいては、精神的なプレッシャーは小さくない。



今回のデータでやや気になったのが、30歳未満・30歳代の傾向。特に2008年以降収入がほぼ変わらないのに負債額を減らしていたり、純貯蓄額が回復傾向にあるなど、やや想定した動向とは異なる動きを見せている。そこで資料をさらに調べたところ、「二人以上の世帯のうち負債保有勤労者世帯」では、2007年の無茶(&不動産価格の高騰)による上昇からの落ち込みはともかく、以前と比べても高い負債基準を維持していることが確認できた。

↑ 住宅・土地のための額推移(二人以上世帯のうち”負債保有”勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 住宅・土地のための額推移(二人以上世帯のうち”負債保有”勤労者世帯)(単位:万円)

↑ 純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)(二人以上世帯のうち”負債保有”勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)(二人以上世帯のうち”負債保有”勤労者世帯)(単位:万円)


負債保有者に限定すれば住宅ローンは増加、純貯蓄額は横ばいから減少の傾向にあるのに、全体で見ると住宅ローンは漸減、純貯蓄額は横ばい・漸増の傾向にあるということは、逆算すると「住宅ローンを使って住宅を購入し、負債を抱える30歳未満・30歳代が減少している」ということになる。単にローンが下りなかったのか、不動産市場動向を見て今ローンを組んでまで買うのは得策でないと考えたのか、あるいは住宅を購入する意欲そのものが減退しているのかは不明だが、気になる動向といえよう。

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