「鉄鋼」の急速回復は頼もしいが・前年同月比でプラス10.1%(2010年7月分大口電力動向)

2010/08/21 12:00

電気事業連合会は2010年8月19日に、同年7月分の電力需要実績の速報を公開した。それによると同年7月の電力需要(使用量)は10社販売電力量合計で769億kWhとなり、前年同月比でプラス6.4%を記録した。産業用の大口電力需要量は前年同月比でプラス10.1%を記録し、これで8か月連続で前年同月の実績を上回ることになった(【発表リリース、PDF】)。

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今調査の概要および用語解説は過去の記事まとめページ【大口電力使用量推移(電気事業連合会発表)】で説明をしている。そちらで確認をしてほしい。

2010年7月においては大口全体で前年同月比プラス10.1%。「前年同月比」というしばりがあるが、それだけ工場の施設の稼働率が(昨年の同じ月と比べて)増えたことになる(機器の技術進歩などによる節電効果もいくぶん数字には反映されているが、一年で加速度的な進歩がない限り、誤差の範囲でしかない)。

大口電力使用量産業別前年同月比(2010年6-7月)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2010年6-7月)

今月も前月に続き、すべての項目で前年同月比でプラスを見せている。数字のプラス値そのものは頼もしい話ではあるが、昨年のこの時期は「リーマン(ズ)・ショック」で急激な下げを見せていただけに、安心はできない。絶対値の差異を見れば容易に理解できる(2009年7月の全体値はマイナス22.9%)。また、「鉄鋼」の急速な回復は頼もしい限りであるが、その勢いも失速傾向を見せ始めており、「繊維」「非鉄金属」以外のすべての項目で先月比で伸び率が後退している。少なくともこれからさらに、グンと伸びるような気配は感じられない。

先月比のグラフでは中長期の流れをつかむことは難しい。そこで記録保全の意味も含め、2007年1月以降の全産業別の前年同月比推移グラフを掲載しておく。

大口電力使用量産業別前年同月比推移
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(2007年1月以降)

2010年7月の時点では、大口電力使用量の観点においては、同年4月を天井に、3月までの状況回復傾向が失速期に入った状況が見て取れる。この半年ほどは「前年同月比」において、昨年の「マイナス20%、30%は当たり前」と比較した形での値が出るため、見た目は急速に回復していたように見えても、実はそれほど驚くべき内容ではない、繰り返しになるが「コンビニの売り上げ」や「住宅の新築着工」でも見受けられた「前年同月比のトリック」が発生している(去年の下げ方が異常な大きさなら、今年は下げていても「それよりマシ」に見えてしまうという現象)ことに留意する必要がある。全体値では2009年2-9月で大きなマイナス値(マイナス20-30%)が確認されているので、9月まではプラスで大きめの値が出るが、絶対値は少なめなこと、そして勢いはすでに下降状態を見せ始めており、今後もこの傾向が続くことが予想される。

「3割減った後に3割増えても元には戻らない」のは一目瞭然。3割減少したあとに原状復帰するためには、3割では無くそれ以上(約4割2分)の回復が必要になる。昨今の状況はあくまでもリバウンドの域に留まり、回復までには至らない。しかもそれも収束しつつあるというのが現状だ。

今件は国内景気(内需)を推し量る物差しとして注目すべき指標であるだけに、大口電力使用量は今後も注意深く見守り続けることが求められよう。

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