育児系もエリア情報誌も小学生向け雑誌も大きく下落へ…諸種雑誌部数動向(2010年4-6月)

2010/08/16 07:02

先に【付録の勝利、か? 少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2010年4月-6月データ)】などで【社団法人日本雑誌協会】が2010年8月10日に発表した、2010年4月から6月分の主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータを元に、いくつかのグラフを生成した。今データは定期的に更新され、当方でもいくつかの雑誌について丸一年以上のデータが取得できたため、季節属性にとらわれない「前年同期比」の値を出せるようになったことは、これまでの記事でお伝えした通り。今回は番外編として、【エリア情報誌はキビシいのです・その他色々な雑誌部数の変化をグラフ化してみる(2010年1-3月データ)】同様に、当サイトで定点観測しているデータ以外のいくつかの雑誌について、「前年同期比」における部数推移をグラフ化してみることにした。雑誌不況はどこまで、どのジャンルに浸透しているのか、どこまで進行しているのか、ある程度はつかみとれるはずだ。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

まずは一般週刊誌。状況としては前期とあまり変わらず。

一般週刊誌印刷実績変化率(2010年4-6月、前年同期比)
↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2010年4-6月、前年同期比)

今回計測分については、季節属性が貢献してか前期比(前年同期比では無い・グラフは略)でプラスに転じている雑誌は7誌と結構な数に登る。ただ、年ベースで見ると「週刊現代」が順調な伸びを見せているというのが分かる。前年同期が40.9万部、今期が53.4万部と1年間で10万部以上の増加は、昨今の出版不況の中ではかなり稀有な存在。選挙周りの記事が当たったのか、それとも何か読者の目を引き付ける連載があるのか。

それにしても4期連続して前年同期比でマイナス10%超えを見せた「SPA!」や「FLASH!」などは先行きが心配……と毎回この言い回しを続けているが、両誌とも伸び代ならぬ落ち代があるにせよ、そろそろ新たな動きがあっても良い気がする。

続いて育児系雑誌。

育児系雑誌印刷実績変化率(2010年4-6月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2010年4-6月、前年同期比)

育児系雑誌は比較的手堅いジャンルだったはずだが、今期もかなり辛い状況に。一方で「プレモ」は前回同様前年同期比で大きな伸びを見せており、(グラフは略するが)前期比でもプラス。部数自身も最新データで5万7000部近くとそれなりの数のため、少数による「ぶれ」ということでもない。何か躍進の秘密でもあるのだろうか(調べてみた限りでは、ファッション誌ライクなオシャレ感・情報量の多さと読みやすさ、そして充実した別冊がニーズに応えているということ)。一方、他はかなり大変な状況。「こっこクラブ」「ベビモ」は4回連続の前年同期比で10%超えのマイナス。危機的な状況ではある。

食・料理・レシピ系雑誌。内食・中食への注力が高まる中で、ニーズは強まるばかり、のはずだったのだが、全般的に伸び悩み状態なのは前期と変わらず。

食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2010年4-6月、前年同期比)
↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2010年4-6月、前年同期比)

料理の鍋ならぬ「地獄の釜のフタ」を開けたような状態。しかも計測雑誌すべてが赤棒となり、灼熱化している。特に前回同様「bonmerci! little」の減少ぶりが気になる。前回の-40.2%よりは多少マシだが、-34.1%とは尋常ではない。この1年の間に約9万8000部から6万4000部への落ち込みは、まさに急降下状態。

エリア情報誌。こちらは「福岡ウォーカー」「北海道ウォーカー」の2紙がデータ掲載対象紙として登場しているが、まだ四期分しかデータが蓄積されていないのでグラフ上には登場しない(次回から掲載予定)。また、今回から「ぴあ」を追加した、のだが……。

エリア情報雑誌印刷実績変化率(2010年4-6月、前年同期比)
↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2010年4-6月、前年同期比)

対象雑誌は前回に続き今回も全部マイナス。今回から登場させた「ぴあ」がいきなり断トツのマイナス値を示してしまった。携帯情報端末が浸透する昨今、これまでのスタイルを維持しただけではエリア情報誌の維持は難しいのかもしれない。

【イヌとネコ、耳や鼻が良いのはどっち?…イヌとネコのトリビアたち】にもあるように、必ずといってよいほど対で紹介される「犬猫」双方の専門誌、「いぬのきもち」と「ねこのきもち」。

犬猫雑誌印刷実績変化率(2010年4-6月、前年同期比)
↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2010年4-6月、前年同期比)

今回も前回同様、前年同期比では「ねこのきもち」の勝利。ただし直近二期では両誌とも印刷部数を減らしており、出版業界全体の不調は犬猫業界にも影響しているのかな、という感はある。

最後に小学館の「小学●年生」シリーズ。以前【「小学五年生」「小学六年生」が休刊・来年春に学習まんが誌「GAKUMANPLUS」を創刊へ】で報じたように、「小学五年生」「小学六年生」は休刊となり、データとして提示できるのは「小学一年生」から「四年生」まで。

「小学●年生」シリーズ印刷実績変化率(2010年4-6月、前年同期比)
「小学●年生」シリーズ印刷実績変化率(2010年4-6月、前年同期比)

今回は該当雑誌すべてがマイナス。しかも全部10ポイント以上の下げで、「小学四年生」においては3割もの減少を見せている。このままいくと「小学六年生」「小学五年生」に続き……という事にもなりかねない。実際「小学四年生」は実数でも4.7万部程度に低迷しており、かなり不安視される。

ちなみに「小学六年生」「小学五年生」の代わりに登場した隔月刊誌「GAKUMANPLUS」だが2010年4月15日に創刊している。すでに一期分のデータは揃っているはずなのだが、社団法人日本雑誌協会のデータベースではその姿を確認できない。



以上ざっとではあるが、定点観測の対象外となっている各種雑誌について、前年同期比の印刷実績の推移をグラフにしてみた。ほとんどが前年同期で1割前後の売れ行き減を見せている。

意外なのはニーズが高い(【教育費 生活苦でも 減らしません 苦しい時こそ 子への期待を】などで触れているが、子供にかける費用は削られない傾向がある)にも関わらず、育児系雑誌・小学生向けの学習雑誌が大きく落ち込んでいること。育児・幼少教育を本で学ぶ・学ばさせる人が減っているのか、あるいはインターネットにスライドしているのか、その因果関係まではつかめないが、注目すべき傾向といえる。一方で「プレモ」の堅調な伸び具合には、育児系雑誌だけでなく雑業界全体における、低迷から抜け出すヒントのいくつかが見え隠れしている気がする。

雑誌低迷の原因の多くはメディアの多様化、新メディアと比べた上での相対的なデメリットが目立つ点にある。しかしそれと同時にメディアの仕組み・システムそのものではなく、内部でメディアを支え・構築する人たち(特に上層部)の「金属疲労」的な面も存在する。某アニメ映画における言い回し「戦線から遠退くと楽観主義が現実に取って代る。そして最高意志決定の場では、現実なるものはしばしば存在しない。戦争に負けている時は特にそうだ」がそのまま当てはまると表しても過言ではない。

果たして彼らは、すでに雑誌業界が戦争状態に等しいことを「本当に」認識しているだろうか。疑問符を打たざるを得ない事例は山ほどあるように思える。

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