有名どころの執筆陣による特集記事が部数を引っ張る…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2010年4月-6月データ)

2010/08/15 19:35

【社団法人日本雑誌協会】は2010年8月10日、2010年4月から6月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、各紙が発表している「公称」部数より正確度が高く、各雑誌の現状を「正確に」把握できるデータといえる。今回は当サイトのメインテーマにもっとも近い「ビジネス・マネー系雑誌」についてデータをグラフ化し、前回からの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

それではまず、2010年の4-6月期とその前期、2010年1-3月期における印刷実績を見てみることにする。

2010年の4-6月期とその前期、2010年1-3月期におけるビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2010年の4-6月期とその前期、2010年1-3月期におけるビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

【付録の勝利、か? 少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2010年4月-6月データ)】の週刊少年ジャンプの「郡を抜く売れ行き」のように、雑誌名通り「プレジデント」が断トツで印刷部数が多い状況に変化はない。また、いわゆる「季節特性」(前期は正月・年度末休暇を含むので通勤・通学の際に読まれる雑誌は減少したので、今期は前期比では反動で増加している雑誌が多いはず)は、一部の雑誌に影響が出ているようだ。ただ、中期的な減り方が規則属性云々を超えたレベルの雑誌もあり、全体的な市場状況の悪化も多分に出て、結局マイナス値を出した雑誌もある。

続いて各誌の前期・後期の販売数変移を計算し、こちらもグラフ化する。要は約3か月の間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかという割合を示すもの。よほどの「イベント」が発生するか、あるいはたまたま定期的な印刷部数見直し時期に当たらない限り、3か月間で大きな変化は見られないはず。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系)

前回記事【ビジネス・マネー系雑誌の部数変化をグラフ化してみる(2010年1月-3月データ)】の同じグラフと比較して欲しいのだが、やはり一部雑誌では季節属性による前期の落ち込みの反動による、大きなプラスを確認できた。また、属性云々とは別に、雑誌によっては充実した内容が口コミを読んで、販売実績を上乗せした事例もあるようだ。例えば「THE 21」の場合、『2010年05月号』、「超一流の”スピード仕事術”」「”仕事を遅らせる悪癖”改造マニュアル 」が二大特集として掲載されているのだが、内容はもちろんのこと執筆陣が有名どころをずらりとそろえており、多くの人たちの注目を集めたようである(…と記事を書きながら当方自身も1冊欲しくなってきた)。

さて一連の定点観測を続けたことでデータ蓄積量も一年分を超え、「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回も「季節属性」を考慮せずに年ベースでの動向をつかみとれる「前年同期比」のグラフも生成し、掲載する。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、前年同期比)

不景気な昨今において経済誌は「情報武装をするために欠かせない『武具』」としての立ち位置を持っているはずなのだが、今期に至っては前年同期比でプラスを見せた雑誌は「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」の1誌のみ。マイナス5%超えの赤棒グラフは6誌。特に20%近い落ち込みを見せた「\en SPA」はこの3年で着実に印刷部数を漸減している。



2008年秋の「リーマンブラザーズショック(リーマンショック)」で多くの人が経済情報に注目したを時期を直近における天井とする形で、金融・経済系のウェブサイトにおける(確証度・知名度・権威度の高い新聞社・法人系サイトを中心にした)アクセスの増加傾向は速度をゆるめ、あるいは減少に転じたところもある。しかしパソコンや携帯電話、各種モバイル端末からアクセスできるインターネットメディアへの、紙媒体からの読者移行の流れは留まるどころか加速している。特にリアルタイムで情報が変わる経済系ジャンルにおいては、雑誌の不利さは他のジャンル(漫画や趣味系の雑誌)の比では無い。携帯電話より表示面積の大きい画面を備えたスマートフォンの普及が進むに連れ、今ジャンルのインターネット上での情報展開はますますその重要度を増しつつある。

頑なに古い体制ばかりのみを固持することなく、この現状を正しく認識し、「それでは紙媒体・雑誌ならではの内容、雑誌にしかできない情報提供・読者へのサービスとは、そしてその仕組みとは何だろうか」という基本原理に立ち返ること。あるいは「新しいメディアと相乗効果を生み出せる仕組み、アイディアは無いだろうか」といった模索をすること。さらにそれらの答えを見つけ出して躊躇することなく実践し、読者に受け入れられるように自らの姿かたちを変えていくこと。ビジネス・金融・マネー誌にはその「進化のための努力」が求められているに違いない。


■関連記事:
【ビジネス・マネー系雑誌の部数変化をグラフ化してみる(2010年1月-3月データ)】

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