Vジャンプは「遊戯王カード応募者全員サービス」で大躍進…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2010年4月-6月)

2010/08/15 06:40

【社団法人日本雑誌協会】は2010年8月10日、2010年4月から6月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、正確さという点では各誌が自ら発表している「公称」部数よりはるかに高精度、精密な値といえる。今回は「ゲーム・エンタメ系」のデータをグラフ化し、前回掲載記事からの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

掲載されているデータはいずれも「1号あたりの平均印刷部数」で、印刷証明付きのもの。つまり「この部数を間違いなく刷りました」という証明がついたものであり、雑誌社側の公称(自称)部数ではなく、また「販売部数」でもない。雑誌毎に季節による売上の変動や個別の事情(人気連載が終了した、話題のゲームの情報が集中掲載されたなど)があり、そのまま比較すると問題が生じる雑誌もあるが、その場合は個別で説明して。どこまで雑誌数の印刷(≒販売)部数が変わっているが気になるところ。

それでは早速、まずは2010年の4-6月期と2010年1-3月期における印刷実績を見てみることにする。

2010年の1-3月期と2010年4-6月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2010年の1-3月期と2010年4-6月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

今回も幸いに対象雑誌そのものの増減は無し。状況については、やはり大勢として「Vジャンプがずば抜けた売上」「週刊アスキーの健闘」「アニメ系ではニュータイプがトップ」などの傾向は3か月前と変わらない。この傾向は約2年継続したものであり、このジャンルにおける「鉄板トップ3」というところ。特に「Vジャンプ」は本家のジャンプが【付録の勝利、か? 少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2010年4月-6月データ)】でもお伝えしているように、少年向けコミック誌ではばく進しているのと似たような状態。ジャンプ二冠王体制は継続中。

また、いわゆる「季節特性」(前期は正月休みや期末休みが入り「通勤・通学の際に購入されやすいタイプの雑誌の印刷数が減っていたため、今期は前期と比べると数が上乗せされる)が生じているようで、結構な数の雑誌が前期比でプラスを記録している。なお「Vジャン」の印刷数そのものの伸びがやや大きいのは、前期の下落の反動要素が大きい。

次に直近3か月における印刷数の変移はどのようなものか、グラフ化してみることにする。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)

3か月単位の変動値であり、季節特性だけでなく「取り上げている作品の人気」「新作映画やゲームとの関連」「付録」「前回期の動向」など、イレギュラー性の高い要因に大きく左右される可能性が高いことをあらかじめ書き記しておく。しかしながらホビー系の雑誌は多かれ少なかれその変動・特異性が宿命で、「イレギュラー性」を乗り越え、販売冊数を重ねていかねばならない。たとえばゲームソフト自身に大ヒット作が出なくとも「ソフトが売れないのでゲーム専門誌も売れませんでした」では経営陣も首を縦にふらない。

突発性要素による「ぶれ」の範囲をプラスマイナス5%台とやや甘めに見て区分わけすると、ネガティブが4誌、ポジティブが4誌となる。前期がネガティブ7・ポジティブ3だから、状況は改善したように見える。もっともこれは、やはり季節特性の反動によるところが大きいと見てもよいだろう。

販売数そのものでは大きな伸びを見せている「Vジャンプ」だが、やはり伸びの一大要因は遊戯王関係のカード応募者全員サービスによるところが大きい。さらに今期においては、「Vジャンプカードフェスタ2010」の応募シートがついているのもプラスに働いている。

一方部数は「Vジャンプ」と比べて1ケタ違う「PASH!」だが、伸び率という点では順調に成長を続けている。こらちは隔月刊で情報の速報性という点では月刊誌に劣るものの、内容の充実性が読者に受け、さらに付録も充実しており、着実に購読者を積み増しているという感が強い。また、今期に限って言えば『2010年07月号』の「ヘタリア」特集も少なからぬかさ上げ要因となったようだ。

さて、前回の記事でも触れたように、定点観測を続けたおかげで、都合一年分以上のデータが蓄積できた。そこで今回も前年同期比の変化率をグラフ化する。これならいわゆる「季節特性」による影響は考慮することなく、純粋にその雑誌の動向を年ベースで確認できる。なお当然ながら、1年分の過去データが蓄積されていない雑誌はこのグラフには登場しない。今回は「アスキードットテクノロジーズ」がまだ1年分のデータを蓄積していないので非掲載となる(次回から掲載予定)。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系、前年同期比)

「メガミマガジン」「マック・ピープル」「PASH!」などの健闘ぶりは前期と変わらず。独自性・企画の面白さや新しさが雑誌の売上における牽引力となっているようだ。一方で「アスキー・ドット・ピーシー」が大きなマイナス値を見せているが、これは前年同期が大きく伸びを見せていたのが主要因。全体的傾向としては漸減状態レベル。それをのぞけば、前期ワースト2のポジションを占めた「コンプティーク」「ファミ通DS+Wii」は順番こそ変われど状況に大きな変化は無し。「ファミ通DS+Wii」は昨年同期の7.2万部から5.4万部までに減少しており、今後が気になるところ。



前年同期比でマイナス値10%超えを示している雑誌のマイナス度が大きく、またそのような下げ幅を継続している雑誌が複数存在しているなど、不安は決して小さくない。市場そのものの不安定さは否定できまい。

一方で上位、前期比・前年同期比でプラスを見せる、あるいは堅実な動きをしている雑誌には「他誌には無い、自誌のオリジナリティ・コンテンツ(記事、付録、対象となる商品)や工夫」が際立つ傾向があり、それが読者に受けいれられて印刷数(販売数)を伸ばしている雰囲気が強い。

不景気で可処分所得が減少し、さらに携帯電話や携帯ゲーム機に読者になるかもしれない人たちの時間を奪われる。そしてちょっとした情報ならすぐにインターネット経由で手に入る環境が浸透し、雑誌に対する興味関心も薄れる昨今。お金や時間を割いても「手にとって読みたい」と思わせるだけの魅力を出すには、「ひと山何百円」に見える同じようなものでは無く「他には無い特別な一品」に見える個性的な雑誌を創り出さねばならない。

もちろん同人誌やサークル誌と違い、一定数量を販売する商業誌なのだから、適度な個性で留める必要がある。あまりにも個性が強過ぎると、かえって読者を減らしてしまう。プラスを見せている雑誌たちは、そのさじ加減について、成功しているのではないだろうか。


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【ゲーム・エンタメ系雑誌の部数変化をグラフ化してみる(2010年1月-3月データ)】
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