「そらのおとしもの 枕カバー」など付録とアニメ化作品の特集の勝利、か? 少年・男性向けコミック誌部数動向(2010年4月-6月)

2010/08/14 19:30

【社団法人日本雑誌協会】は2010年8月10日、2010年4月から6月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、業界の動向を示す正確度は、各紙・各出版社が発表している「公称」部数よりはるかに高い。今回は、読者層を考慮してもっとも興味がそそられるであろう「少年・男性向けコミック誌」のデータをグラフ化し、前回発表分データからの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

まずは少年向けコミック誌。週刊少年ジャンプがトップにあることに違いはナシ。

2010年1-3月期と最新データ(2010年4-6月期)による少年向けコミック誌の印刷実績
2010年1-3月期と最新データ(2010年4-6月期)による少年向けコミック誌の印刷実績

「ジャンプ」は直近データで287万8334部。販売実数はこれよりも少なくなるので、前回と同じく250万部前後だろう。いずれにしても雑誌不況の中、驚異的な値であることに違いは無い。王者ジャンプの威厳はいまなお維持されている。

今回は前回に引き続き、計測対象の中、あるいは該当カテゴリーで、休刊などの理由からデータが失われたもの、逆に創刊でデータが加わった雑誌は無い。ある程度整理統合淘汰が進んだということだろう(あるいは「踊り場」かもしれない)。

続いて男性向けコミック誌。こちらも世間一般のイメージ通りの印刷部数展開。

2010年1-3月期と最新データ(2010年4-6月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
2010年1-3月期と最新データ(2010年4-6月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

こちらは印刷実数だけでは分かりにくいかもしれないが、全般的なマイナス傾向のキツさは少年コミック誌以上。少々注意して見ると、特に上位陣で青い棒より赤い棒が短くなっている部分が長めなのが分かる。これはこの数期に渡って確認されている動きで、季節特性云々を問わず、男性向けコミック誌の購入対象層の購買力が落ちているという仮説が現実味を帯びてくる。

さて、これで最新期とその前の期の印刷部数を棒グラフ化したわけだが、続いてこのデータを元に各誌の(前・今期間の)販売数変移を計算し、こちらもグラフ化してみることにする。短期間の変移ではむしろこちらのデータの方が重要。

要は約3か月間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかという割合を示すもの。当然ながら、今回データが非開示となった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌はこのグラフには登場しない。幸いにも今回はそのような状況に該当する雑誌はナシ。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)

前期の「正月休み」「期末休み」が入ることによる「通勤・通学の際に購入されやすいタイプの雑誌の印刷数は(前回と比べて減少している(=販売数が減る)」という「季節特性」によるマイナスからの反動が期待できるにも関わらず、全般的に軟調。この数回連続して言及していた「少年サンデースーパー」の下落ぶりが、どうにか落ち着いたのがマイナス圏各誌の中では幸いな話。

一方で「ドラゴンエイジ」の伸びが目立つが、これは前期の大きな落ち込み(-11.6%)からの反動に加え、付録による効果が功を奏したものと思われる。同様の理由は「少年エース」にも見られ(前回の落ち込みは-23.6%)、付録は『少年エースA 2010年07月号』の「そらのおとしもの 枕カバー」が好例。また「少年エース」の場合はアニメ化される作品関連の記事が豊富で、それを目当てに購入した人も多かったものと思われる。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)
雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)

今回はプラスを記録したものは無し。前回唯一プラスを見せた「ヤングアニマル」も、誤差の範囲だがマイナスとなっている。季節属性による反動があるにも関わらずこのような値が出てくるのは、繰り返しになるが「男性向けコミック誌市場の現状が非常に厳しい」ことを改めて認識させるに足るものといえる。

さて一連の定点観測を続けているおかげで、過去のデータを用いて「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回もいわゆる「季節属性」を考慮しなくても済む「前年同期比」のグラフも掲載する(例えば今回なら、2010年4-6月と、その1年前の2009年4-6月分の比較というわけだ)。純粋な雑誌の販売数における、年ベースでの伸縮率が把握できる。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)

上記のグラフと比べると掲載紙が少なくなっているが、これは「最新期でデータ未公開の雑誌」「過去一年分のデータがそろっていない雑誌」は除外しているため。前者はともかく後者は、「前年同期」のデータが無いのだから仕方がない。

1年単位での変移を見ると、伸び率では「ウルトラジャンプ」がトップ。実数7万部台だが、この半年間は多少なりとも数字を伸ばしているのが確認でき、昨今の市場状況においては大健闘といえよう。これは前期から続く動きであり、特に注目すべきものといえる。

また、それ以外では一部の勝ち組雑誌「コロコロコミックス」「週刊少年ジャンプ」など超メジャー紙以外は、ほぼすべての雑誌で苦戦を強いられているのが分かる。特に週中発売の二大週刊誌「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」の両誌、中でも後者の現状が気になる。年1割超の売上減少は、容易ならざる事態……と、前期の記事と同じ言い回しを使わねばならない状況なのが、少々切ないところではある。

さらにこの数期に渡り数字的に不安視されている「少年サンデースーパー」は、前年同期でも凄まじい下落ぶり。定番の言い回しになるが、「あと何回続けられるだろうかという心配すらしてしまう」。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)

「ヤングアニマル(嵐)」など前期比のグラフでも下げ幅を最小限に抑えている一部雑誌以外がどうにか5%以内のマイナス値で留まっているが、それ以外は軒並み5%以上の大きなマイナス値。真っ赤で目が痛いほど。10%以上の下げを記録しているものも8誌に及び、それだけ男性向け雑誌が売れなくなっている、需要が減少していると考えてよい。なお【コミックバンチ、正式に休刊表明・年内に新創刊】でもお伝えしているように、コミックバンチは8月末の発売号で一端休刊となる。データがどのような形で掲載・停止されるのか不明だが、いずれにしても次回の定期更新記事では何らかの動きがあるはずだ。



今回参照したデータのうち「単純前期比」においては、前期が季節変動によって売れ行きが落ちる傾向があり、今期はその反動分も期待できたが、大した動きは確認できなかった。前回の記事でも言及したが、季節属性云々を超えた、雑誌の売上そのものの減少傾向が継続している雰囲気が感じられる。

理想と現実特に(単純に印刷冊数≒販売冊数という観点で、だが)男性向けコミック誌が、相当危険な状態なのは一目瞭然。損益分岐点などを考えれば、「前年同期比で印刷部数がマイナス10%超え」を繰り返していたのでは、そう遠くないうちに立ち行かなくなるのは明らか(大規模なリストラ、経費削減を行えば話は別だが、それは品質低下と売り上げ減退のマイナススパイラルを容易に生み出す……他媒体でも似たような状況が進展しているのは気のせいか)。

【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…(下)購入世帯率や購入頻度の移り変わり】で触れているが、総務省統計局のデータによれば、雑誌・週刊誌では書籍同様に「購入する人がいる世帯の減少」「購入者の購入冊数の減少」と多元的な雑誌離れが起きている。今データを見る限りではサラリーマンにおいて、その傾向が顕著なものとなっていると考えることができよう。

逆に前回に続き今回も好調な数字を出した「ウルトラジャンプ」のように、適切な読者ニーズをとらえることで、少年・男性向けコミック誌にもまだまだ希望の光はいくらでも差し込み得る。厳しい状況下だからこそ、従来以上に必死になって手を尽くし、短期的視野だけではなく中長期的な戦略まで見据えた、雑誌展開が求められよう。

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