環境対応車への補助制度終了懸念…2010年7月景気動向指数は3か月ぶりの上昇、先行きは3か月連続の下落

2010/08/11 07:08

内閣府は2010年8月9日、2010年7月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状は3か月ぶりに上昇した。先行き指数は3か月連続の下落傾向を見せている。基調判断は厳しいものの先月と同じ表現である「景気は、厳しいながらも、持ち直しの動きがみられる」となった(【発表ページ】)。

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「やや良くなっている」が減少、「やや悪くなっている」が微増
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値に関しては今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認をしてほしい。

2010年7月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス2.3ポイントの49.8。
 →3か月ぶりの上昇。「やや良くなっている」が増加、「やや悪くなっている」が減少。
 →家計においては環境対応車への補助・減税効果に関する駆け込み需要や、猛暑によるエアコンなどの夏物商品に対する特需的な動きから上昇。企業は一時的な受注・出荷の持ち直しが見えることから上昇。雇用は企業側態度が正規職員の採用に慎重な動きを見せていることから低下。
・先行き判断DIは先月比マイナス1.7ポイントの46.6。
 →3か月連続の減少。
 →消費性向の鈍化、環境対応車への補助制度終了懸念、さらには円高などから一様に低下。
現状は猛暑特需に支えられた雰囲気が強く、それ以外は先月・先々月同様に天井観が強くにじみ出ているのが分かる。

「現状」は猛暑特需で小売が50超え
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表月分では昨月から転じて、プラス項目が多いのが分かる。猛暑でエアコンなど冷房周りが飛ぶように売れたこと、冷えもの系に人気が出て飲食系の食品の回転率が上がったのが原因。逆に雇用関係は下がったが、正規職員の採用に慎重な動きを見せているからで、中長期的な動きへの企業側の慎重さが見え隠れしている。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン(ズ)・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「各数値が1桁になるのでは」という懸念もあったものの、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降はもみ合いながら上昇が続いていた。今月は先月から転じてわずかだが、上昇してしているのが分かる。「合計」の値を見ると、まさに中間の「50.0」を天井としてもみ合いを続けているようでもある。雇用関係の数字はやや天井を上にしながらも、やはり横ばいの動き。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは良い状態。
・政策や外因、円高などを起因とする
不安感から低迷状態は継続中。
・「天井観」による横ばい傾向?
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、今回の下落(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明らか。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、ズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素(いわゆる「金融(工学)危機」)が、多種多様な方面において一斉に悪影響を与えた様子が数字、そしてグラフにも明確に表れている。

今年に入ってからの現状指標の動きは、2001年後半の大底からの反転・再下落の動向をなぞっているともいえる。この傾向が景気回復における「通過儀式」「定例パターン」なら、直近の天井付近で「雇用関連指数」と「合計全体指数」の交差が発生し、そこから再びしばらく(過去なら2002年半ば)は指標下落が続き、その後はもみ合いながら景気の復調が見られることになる。

今月発表分では先月から転じて全体的にやや増加を見せ、雇用だけが減少しているものの、雇用が上で他の指標と大きな隔たりを見せていることに違いは無い。そして9か月前の時点で「交差」現象は確認済み。可能性の一つとして言及している「(前回の2003年後半期になぞらえれば)そろそろ雇用の数字が大きく跳ねて天井観を演出する」状況が今後そう遠くないうちに表れる可能性がある。ただし、景気全体の状況が悪化しているため、「大きく跳ねる」も規模が縮小してしまい、現状のかい離状態がすでに「跳ねている」と見なすとらえ方もある。

景気の先行き判断DIについては、先月に続き減少した。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

前月比でプラス項目は1つ。マイナス項目は9つ。現況指標は全く対照的な結果といえる。猛暑特需はあるが、今後を考えると……という、冷静な判断がすけて見える。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線、総合指数の最下層に位置する青線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた(青線部分)。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、かつてない不安感を多くの人が覚えていたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン(ズ)・ショック」)が、大きな不安感の中にある人々の心境を叩き落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えたのかが見てとれる。

今月は先月と比べてるとやや強めに、マイナスの気配が強い雰囲気を見せている。現状指数同様、2003年中-下旬期の状況に類似していると共に、直近数か月で天井に達してしまったようである(50が天井か)。

リバウンドは頭打ちで不況感が継続?
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・・猛暑でエアコンの売行きが良い。アナログの停波まで1年を切り、デジタルテレビの動きも良くなって来ている(一般小売店[家電])。
・海外旅行が復活傾向にある。円高の影響と、前年の新型インフルエンザで海外旅行を自粛していたが今年はその反動で活発化している(旅行代理店)。
・月後半からの猛暑により冷菓やドリンク類の売上は増加したが、あくまで天候による一時的な好調にとどまる。弁当類などの低価格化も進んでおり、景気が良くなっている感はない(コンビニ)。
・売上高は、3か月前は前年比96%であり、今月も同様に推移している。今月は中元商戦と夏物処分セールが主体となり、年間で2番目に売上の大きい月である。特に中元商戦の動きに左右される月であるが、定番商品は大きな落ち込みなく推移している(百貨店)。
・梅雨明け後、屋上ビヤガーデンの来客数が増加し、7月としては過去最高を記録しているが、好調に集客できたのはこの部門だけで、館内レストラン及び宿泊は厳しさを増している(都市型ホテル)
・今月は天候不順に悩まされている。月前半は雨天続きで来客数が伸びず、梅雨明け後は昼夜共に気温が高く、昼間も夜間も来客数が伸びていない(一般小売店[書店])

■先行き
・宮崎県内の口蹄疫の非常事態宣言が7月27日で解除され、完全終息に向けてイベントが始まった状況である。これから復興に向け、各方面で良くなる(商店街)。
・客単価の動きをみても、まだ、景気回復の兆しが見えない。また、初秋に入っても暑さが続くと予報されているため、秋物衣料の販売への悪影響が懸念される(衣料品専門店)。
・現在の受注状況から見ると8月に関しては、若干前年を上回る稼働率になると予測されるものの、9月の予約状況は悪い状況である。前年あった9月の大型連休が今年はないためと考えられる(観光型ホテル)。
・9月にはエコカー購入時の補助金も終わるため、エコカーへの減税だけが頼りとなるが、需要をかなり先食いしている状態にあるため、今後についてはやや悪くなる(乗用車販売店)。
などとなっている。今月は先月と打って変わり、猛暑や規制解除による一時的な特需でポジティブな動きが支えられており、中長期的には不安要素が積み重なっていることが見えてくる。これが先行き指数をマイナス化させた一因と考えることもできる。


金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、国内外に多発する
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は継続中。
特需に支えられた前向き姿勢も
長くは続かず。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見える。各種景気の循環説にも合致しており、振幅の違いはあれど、予想通りに状況は進むものと考えられる。現時点では(下げ幅こそ違えども)着実にその状況を継続中で、この仮説が正しければ、今後は2003年中盤以降のパターン「雇用指数の上向きと、企業・家計指数のもみ合い」を踏襲することになる。

本文中でも言及したが、前パターンにおける天井観を示す「雇用関連指数の上離れ」がこの小さなレベルで達せられた可能性もゼロとはいえない。もしその仮説が正しいとすれば、「この水準のまま」横ばい、やや低下を継続することになる。正規雇用に企業が慎重姿勢を続ける現状を「天井」とするのなら、昨今の厳しい雇用情勢は継続、あるいはさらに悪化を見せることになるわけだが……。

現状値そのものやコメントを見れば分かるように、現時点では昨年のリーマンショックにおけるどん底に慣れた感もあり、心理的には多少ながらも持ち直しを見せる雰囲気がある。しかし具体的な回復を裏付ける材料が特需以外に無く、内外に高まる・増加する不安要素(特に「何となくもやもや感」「先行き不安感」の心境は、恐らくこれまでに無いレベルのものだろう)に、再び「守り」の姿勢を見せ、消費動向の減退を懸念する向きもある。

読者諸氏におかれては、多少手間と時間はかかるし、正直面倒なところもあるが、自分が常日頃から接している、接することを強要されているもの、信じているもの、信じるべきと常日頃から何となく教わっているものだけでなく、一歩外に足を運び、あるいは手を伸ばし、いつも与えられているものの先、閉じられているカーテンの向こう側を、ちらりとだけでも眺めてみることを強くお勧めする。自分の考えをより確実なものとする、あるいは今まで見えてこなかった、新しい、そして正しい判断をするのに必要な情報が得られるに違いない。

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