「MS製iPod」で知る企業戦略

2010/07/15 12:05

MS製iPod先日当サイトの姉妹サイト的立ち位置にある【ライトニング・ステージ】で、「iPodのパッケージをマイクロソフトが創ったらどうなるか」という動画を紹介した(【もしマイクロソフトが iPodのパッケージを担当したら】)。使われていた素材や動画そのものの投稿時期が古かったこともあり、記事掲載後にさらに調べてみると、色々と面白い話を探り出すことができた。今回は覚え書きも兼ねて、それらをまとめて紹介することにしよう。

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まずは該当の動画。


↑ Microsoft iPod。
↑ Microsoft iPod。

元ネタはiPod 2005とWindwos XP。昔も今も変わらずシンプルなiPodのパッケージを、もしマイクロソフトが創っていたら(あるいはiPodそのものをマイクロソフトが売っていたら)という設定のもとに、既存のiPodパッケージを色々とXPのパッケージのように「マイクロソフトナイズ」していくプロセスを面白おかしく見せたもの。

マイクロソフトの商品パッケージにおけるコンセプトが次々と画面上に映し出され、そのコンセプトに従い、シンプルなiPodのパッケージが少しずつ変貌をとげていく。英語が分からなくても「あるある」モードで視聴できるが、ざっと挙げておくと、

・ブランド作りが必要だな
・表情豊かな人間の姿があった方がいいな
・各種特徴もちゃんと書かなきゃダメだろう
・星マークや値引きとかでインパクトをつけるべきだね
・パッケージ横の女性は何でiPodを使っていないんだ? そして使っている人にはもっと温かみが感じられないとダメだ
・まだ商品の素晴らしさが伝え足りないな。それじゃiPodの横が映し出されてる部分を使って、利用中のパソコン側の画面を載せよう
・サードパーティーの表示も忘れちゃいけないね
・5GBの詳細をしっかり表示しておかなきゃ
・商品スペックを載せなければ
・稼働に必要なシステム構成の掲載も必要だ。載せきれないから表記を書いた紙を貼り足そう

というところになる。

この動画の初お披露目は2006年初旬。当初はマイクロソフトの批判派的ユーザーか、あるいは逆にマイクロソフト大好きな人によるものかと思われていたが、騒がれ出してから1か月ほど経ってから(2006年3月13日)、実はマイクロソフト社内のパッケージ制作部門の手によるものであることが、同社のスポークスマンTom Pilla氏によって確認された(【Microsoft Confirms it Originated iPod Box Parody Video】)。

その上でマイクロソフト側は「公式に(この動画を)配信することは無いが、すでに出回っている素晴らしく、面白いモノを皆で共有するのは当然のこと(であり、自社で規制する事は無い)。本当はこの動画は、内部的に楽しむものだったのだけれども。ともあれ、結果的に皆がこの動画を見てハッピーになれたことに、自分達も満足感を味わっている」とコメントしている。

動画を通じて両社の違いが再確認できる
今動画の顛末で注目すべき点はいくつかある。一つは2006年当時においてようやく芽を出し始めた「動画の共有による話題提供」、少々かっこうをつければ「動画によるバイラルマーケティング」「バイラル広告」の一手法として、非常に上手く行った事例であること。現在ではごく当たり前のやり方として多くの企業が手掛けている(例えば【人間大砲も真っ青! ジャンプ台から家庭用プールにダイビングした、ある男性の勇猛果敢なる挑戦……!?】が良い例)。「マイクロソフトにとってはネガティブではないのか」とする意見もあるが、当時大きな話題を呼んでいたiPodと同じ土俵に立ち、話題に登り、マイクロソフトらしさを喧伝するという点では大いにプラスとなったことは否定できない。

「マイクロソフトナイズなiPod」もう一つはiPod(をはじめとするアップル社の商品群)が、デザインの上でマイクロソフト的なものとは相反する場所にあることが改めて分かるということ。動画の最後にある「マイクロソフトナイズなiPod」のパッケージを見て、例え中身が同じだったとしても、これがアップル社の製品だと分かる人がどれだけいるだろうか。

マイクロソフト社の製品、そしてそのパッケージは耐久消費財的な安心感(デザイン的に優れているわけではないが、とりたてて悪いところも見当たらない)を前面に押し立てている。それがこの動画で再認識できる。一方でアップル社のそれは、シンプルかつスマートでデザイナブルなことも手に取るように分かる。例えるなら、マイクロソフトは普通乗用車で、アップルはスポーツカーというところ。

両社の違いはパッケージだけでなく商品そのものにおいても同様といえる。マイクロソフト側は、まさにIT分野における「耐久消費財」の供給を目指している。実際今現在の周囲環境を見れば、マイクロソフトの製品はそこかしこで見受けられ、「明日からすべてのマイクロソフト社の商品が使えなくなります」という事態など考えられない状況下にある。だからこそ提供される商品は、さまざまものを詰め合わせた「パッケージ」化されたもので、あれだけ多種多様な説明が求められることになる。

「マイクロソフトナイズではない」iPod他方アップル社のそれは【ジョブズ氏に学ぶ10の人生訓】でスティーブ・ジョブズ氏が「イノベーション」「自分が品質基準」「世の中に衝撃を与える」などと語っているように、一言で表現すれば「尖ったサービス」となる。ある意味「機能的に優れたものはデザイン的にも優れたものとなる」という、ドイツの工業製品的な考え方に近いと表しても良い。



今動画は2006年に製作され、話題となったものだが、4年経った今でも非常に楽しく、そして「あるある」とうなづきながら視聴することができる。それは4年が経過しても両社のビジネスモデル、戦略、展開商品の傾向に変化が無いことを意味する。

どらちが良い・悪いというものではない。両社が基本戦略を貫き通しており、それがそれぞれ多くの消費者に支持され続けていることを再確認すると共に、それぞれの志の高さに深い感謝の意を表したいところだ。

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