上場企業の「外国人」持ち株比率の変化をグラフ化してみる(2009年度反映版)

2010/07/12 07:24

比率先日アクセス解析をしていたところ、外国人投資家の影響力の拡大について具体的な動きを知るために1年ほど前に掲載した【上場企業の「外国人」持ち株比率の変化をグラフ化してみる】への集中閲覧が確認できた。リンク元は不明だが、関連する事項で討論が交わされ、その素材として使われたようだ。良い機会でもあるし、「そろそろデータも2009年度のものが配信されているかもしれない」と考え、早速調べてみることにした。

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データの大本は東京証券取引所による【株式分布状況調査】で掲載されている、「長期統計」データ。このデータ中、「投資部門別株式保有比率の推移」を抽出するのが前回の手法だったわけだが、記事執筆時点ではまだ2008年度(去年発表分)のものが最新データのまま。

そこで同一ページを探ってみると、ページ上部に2010年6月18日付で「平成21年度株式分布状況調査の調査結果について」という概要レポートが収録されている。中を見ると該当するデータを確認できたので、それを用い、先の記事と同じような区分で仕切り直し、グラフ化したのが次の図。なおタイトルでは「5証券取引所-」とあるが、JASDAQが大証と合併したため、2004年度以降はJASDAQも含めた値となっている。

持ち株数比率推移(5証券取引所合計、%)
↑ 持ち株数比率推移(5証券取引所合計、%)

1980年度前半に一度上昇を見せた外国人投資家の比率だが、その後低下傾向を見せ、1990年前半以降は再びじわじわと上昇。特に2000年前後を境に(一度ITバブル崩壊でやや下げ基調を見せるも)大きく伸びを見せている。一方で事業法人や金融機関・証券会社などは持ち合い解消などの流れを受けて2000年前後から大きく比率を減じている。

また個人の動きをみると、1970年後半から急速な減少。そして1980年後半からは横ばい。1990年後半からは「貯蓄から投資へ」の動きを受けてやや盛り返しの雰囲気があったが、投資先の多様化などもあり、再び下落。2008年度は株価低迷で買い増しでもしたのか、やや比率を上げているが、2009年度は再び下落している。

これらの流れから、以前の記事【日銀レポートによる「なぜ好景気でも賃金は上がらなかったのか」】で解説した、「上場企業における外国人投資家の影響力増加と共に、『利益の従業員への還元より株主への還元を優先しろという』圧力が強まり、企業の利益が積み上げられても従業員の手取りには反映されなかったのではないか」とする日銀の推測が半ば裏付けられたともいえる。この15年ほどの動きをみると、「株式数比率」という観点で見ても影響力は2倍強にまで拡大しており、たとえ外国人投資家全員が頑ななまでに配当重視を声高に訴えるだけではないとしても「声出さぬプレッシャー」は存在しうるからだ。

2007年度以降、そして最新データの2009年度と前年度の変移
パワーバランス一方、日銀レポートには無かった2007-2009年度分のデータをみると、興味深い傾向が見えてくる。2007年度-2008年度はいわゆる「金融(工学)危機」の真っただ中で、世界中の金融商品の価格が急落を見せた時期。「外国人投資家が換金売りを続け、それが日本の株価下落の大きな原因となった」と一般には説明されているが、それを裏付けるように外国人の持ち株比率が急激な下落ぶりを見せている。他方個人などは比率を上げており、下落過程では少なくとも、個人投資家は外国人らと同様の「投げ売り」はしていなかったことが分かる。

ところが2009年度になると「ある程度」株価が持ち直したこともあり、外国人投資家は急速に買い増し気運を強めていく。それに反して個人、金融機関・証券会社、事業法人は、その持ち株比率を再び減じている。下のグラフは2008年度から2009年度に至る、各部門の変移を示したものだが、外国人投資家だけが大きく買いを積み上げているのが確認できる。

↑ 持ち株数比率推移(5証券取引所合計、%、2008年度から2009年度への変移)
↑ 持ち株数比率推移(5証券取引所合計、%、2008年度から2009年度への変移)

昨今の政策では「投資より貯蓄へ」の動き(というよりは「投資への嫌がらせ」という表現が適切か)が著しく、個人の金融商品離れが顕著な状況にある。以前の記事で仮説として挙げた「個人の株式購買意欲と資金がどこまで続くかは未知数だが、この傾向が継続すれば株主構成比率、そして企業と株主間のパワーバランスに大きな変化が生じる可能性は否定できない。企業に対するプレッシャーの内容が変われば、企業の経営方針にも変化が生じ、それが元で企業の従業員に対する待遇に動きが生じる」という話は、残念ながら現状では数歩後退した、と見てよいだろう。

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