2010年6月分の景気動向指数は2か月連続の下落、先行きも2か月連続の下落

2010/07/10 12:00

景気ウォッチャー調査内閣府は2010年7月8日、2010年6月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状は2か月連続して下落した。先行き指数も2か月連続の下落傾向を見せている。基調判断は厳しいものの先月と同じ表現である「景気は、厳しいながらも、持ち直しの動きがみられる」となった(【発表ページ】)。

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「やや良くなっている」が減少、「やや悪くなっている」が微増
「景気ウォッチャー調査」とは毎月月末に調査を行ない翌月発表される、地域毎の景気動向を的確・迅速に把握するためのもの。北海道、東北、北関東、南関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の11地域を対象とし、経済活動の動向を敏感に反映しうる業種などから選定した2050人を対象としている。

また、調査結果中用いられているDIとはdiffusion index・景気動向指数のことで、3か月前との比較を用いて指数的に計算される。50%が「悪化」「回復」の境目で、全員が「回復」と答えれば100%、全員が「悪化」と答えれば0%に近づく。

2010年6月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス0.2ポイントの47.5。
 →2か月連続の減少。「やや良くなっている」が減少、「変わらない」「やや悪くなっている」が増加。
 →家計において環境対応車への補助・減税効果が続いているが、エコポイントの駆け込み需要の反動などで減少。企業は一時的な受注・出荷の持ち直しが頭打ちを見せ始めたことや、販売価格の引き下げ圧力が強いことなどから減少。雇用は企業側態度が慎重ではあるが新規求人の増加があることなどから上昇。
・先行き判断DIは先月比マイナス0.4ポイントの48.3。
 →2か月連続の減少。
 →消費性向の鈍化、環境対応車への補助制度が弱まることに対する懸念などから一様に低下。

後に改めて触れるが、現状・先行き共に先月懸念されていた天井観が強くにじみ出ているのが分かる。

ほぼ一様に低下。50超え項目も少数に
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表月分では昨月同様に、マイナスの項目が多いのが分かる。かろうじて雇用がプラスだが、これは前述にもあるように新規求人の動きが見受けられたため。ただ、50を超えた項目が今月分の動きで、雇用関係のみとなってしまった。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン(ズ)・ショック」をきっかけに、直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「各数値が1桁になるのでは」という懸念もあったが、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降はもみ合いながら上昇が続いていた。今月は先月に続きわずかだが、下降してしているのが分かる。「合計」の値を見ると、まさに中間の「50.0」ではじき返されてしまったようで、何となく不気味ではある。ただし雇用関係の数字だけは上昇を継続中。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは良い状態。
・政策や外因、円高などを起因とする
不安感から低迷状態は継続?
・先月で「天井観」か
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、今回の下落(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明らか。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、ズレすら許されなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素(いわゆる「金融(工学)危機」)が、多種多様な方面において一斉に悪影響を与えた様子が数字、そしてグラフにも明確に表れている。

今年に入ってからの動きは、2001年後半の大底からの反転・再下落の動向をなぞっているともいえる。この傾向が景気回復における「通過儀式」「定例パターン」なら、直近の天井付近で「雇用関連指数」と「合計全体指数」の交差が発生し、そこから再びしばらく(過去なら2002年半ば)は軟調さが続き、もみ合いながら景気の復調が見られることになる。

今月発表分では先月に続き全体的にやや減少を見せ、雇用だけが大きく跳ねており、他の数字とのかい離が確認できる。そして8か月前の時点で「交差」現象は確認済み。先月可能性の一つとして言及した「(前回の2003年後半期になぞらえれば)そろそろ雇用の数字が大きく跳ねて天井観を演出する」が該当する感がある。ただ、景気全体の状況が悪化しているため、「大きく跳ねる」も規模が縮小してしまったのだろうか(これもまた前月の「このレベルで『大きく跳ねた』場面を演出している可能性」に該当してしまう)。

景気の先行き判断DIについても、先月に続き減少した。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

前月比でプラス項目は4つ。マイナス項目は5つ。先月と比べれば項目数だけではマシになったが、50を超えた項目は1つだけ、「現状判断」同様に雇用関連だけとなってしまった。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線、総合指数の最下層に位置する青線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた(青線部分)。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、かつてない不安感を多くの人が感じていたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン(ズ)・ショック」)が、大きな不安感の中にある人々の心境をさらに追い落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えたのかが見てとれる。

今月は先月と比べてややおとなしめではあるものの、マイナスの気配が強い雰囲気を見せている。先月触れた「天井が間近い」指摘はやはり現実のものとなりつつあるようだ。現状指数同様、2003年中-下旬期の状況に類似しているようだ。

リバウンドは頭打ちで不況感が継続?
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・子ども手当の支給により、限定的ではあるが子育て世代の消費動向がプラスに動いている(スーパー)。
・貸出台数が前年比106%と増加している。観光客のレンタカー利用が前年に比べて伸びている(その他のサービス[レンタカー])。
・ボーナスが出ている会社もあり、繁華街の人出は増えると思われたが、増えたのはサッカーのユニホームを着た若者だけである。サッカーワールドカップが始まってからは、繁華街は逆に静かになってしまい、予想以上の影響を受けている(スナック)。
・豪雨などの影響で来客数が伸びず、物産催事や父の日ギフトへ大きく響いた。一方、文化催事は大きな反響があった。再来場者数も多く、物販も好調であった。また中元ギフト内見会も好調で、ギフトへの手ごたえは感じられた(百貨店)。
・今年の梅雨は高温多湿のため、エアコンが好調に動き出した。しかし、地上デジタル放送対応テレビや前年好調だった冷蔵庫などのエコポイント商品が不振で、前年比をクリアするのが厳しい状況である(家電量販店)。
・口蹄疫問題で依然として各種イベントの中止や延期が拡大している。終息するまではイベントの自粛を促されている状況であり、厳しい(テーマパーク)。

■先行き
・先行受注額を前年比でみると、7月は国内旅行が前年比110%、海外旅行が同108%、8月は国内旅行が前年比85%、海外旅行が同104%となっている。国内旅行はやや弱含みだが、海外旅行が好調のため、今後についてはやや良くなる(旅行代理店)。
・ボーナスシーズンの割に商品の動きは鈍い。猛暑を期待して季節商材の在庫を抱えたいところだが、先行きの不透明さから、消費者の買い控えに対抗するような強気な商売ができない(一般小売店[家電])。
・来客数、受注量は持ち直しているが、金額面は総額、単価共に低下している(住宅販売会社)。
・エコカー購入補助金制度が9月で終了することになるので、自動車販売が落ちてくる(乗用車販売店)。

などとなっている。景気回復感を明確に裏付ける証拠を見出せないが、ちらほらと売れ行きが伸びている感がある。ただし一方で内外のネガティブ要因も浸透しており、先行き不透明感が強いのが分かる。ちなみに元資料には地域別の現状・先行きDI(全体と家計)も具体的な値が表組みで確認できるが、全般的には北海道・東北・沖縄など東西的に見て両端の地域が堅調な動きに見える。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、国内外に多発する
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は継続中。
「節約疲れ」など、心理的に
「苦境に疲れた」ことによる反動も
終了?
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見える。各種景気の循環説にも合致しており、振幅の違いはあれど、予想通りに状況は進むものと推定される。現時点では(下げ幅こそ違えども)着実にその状況を継続中で、実証されつつあるこの仮説が正しければ、今後は2003年中盤以降のパターン「雇用指数の上向きと、企業・家計指数のもみ合い」を踏襲することになる。現実、今回計測週はまさにその状況を呈している(企業・家計指数は二か月連続で低下しているが……)

本文中でも言及したが、前パターンにおける天井観を示す「雇用関連指数の上離れ」がこの小さなレベルで達せられた可能性も(低いながらも)ゼロとはいえない。もしその仮説が正しいとすれば、「この水準のまま」横ばい、やや低下を継続することになる。

現状値そのものやコメントを見れば分かるように、現時点では昨年のリーマンショックにおけるどん底に慣れた感もあり、心理的には多少ながらも持ち直しを見せている。その一方で、内外に高まる・増加する不安要素(特に「何となくもやもや感」「先行き不安感」の心境は、恐らくこれまでに無いレベルのものだろう)に、再び「守り」の姿勢を見せ、消費動向の減退を懸念する向きもある。

読者諸氏におかれては、多少手間と時間はかかるが、自分が常日頃から接している、接することを強要されているものだけでなく、一歩外に足を運び、あるいは手を伸ばし、いつも与えられているものの先、閉じられているカーテンの向こう側を、ちらりとだけでも眺めてみることをお勧めしたい。自分の考えをより確実なものとする、あるいは今まで見えてこなかった、新しい、そして正しい判断をするのに必要な情報が得られるに違いない。

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