【更新】「こんにゃくゼリーの窒息、重症率85%」は本当か、適切な表現なのか

2010/07/03 12:05

こんにゃくゼリー消費者庁は2010年6月30日、「食品SOS対応プロジェクト会合」配布資料を公表した(【発表ページ】)。その資料で語られている論説、及びそれを元にした一部報道(例えば[こんにゃくゼリーの窒息、重症率85% 消費者庁分析])では、いかにもこんにゃくゼリー”のみ”がリスキーな食品であり、過去に食品安全委員会が下した「アメ程度の事故頻度」という食品リスク評価は問題があるとの見解を示している。特に「こんにゃくゼリーの窒息、重症率85%」という見出しは非常に印象を与えるが、本当にそれは検証されたデータを「適切に」表現しているのだろうか。今回は発表資料をグラフ化し、再検証することにした。

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まずは開示されている【窒息事故の詳細分析について(食品)(PDF)】をチェックする。ここには全4137件の食品・製品などの窒息事故のうち、原因物質が不明なものをのぞき、具体的な原因食品が明らかになっているもの2414件がピックアップされている。まずは一部報道で印象強い「重症率85%」を表した、「該当食品による事故発生件数に占める、重症以上の割合(事故件数3件以上)」をグラフ化する。例えば食品Aで100件事故が確認され、そのうち30件が初診時に重症以上だった場合、重症率は30÷100=30%となる。

↑ 該当項目における事故発生件数に占める重症以上の割合(事故件数3件以上)
↑ 該当項目における事故発生件数に占める重症以上の割合(事故件数3件以上)

「こんにゃく入りゼリー」は実に85.7%の重症率となり、このグラフだけを見ると「見出しにある通り超リスキー?」という印象を受けてしまう。確かにこのデータだけを見れば、その考えは間違っていない。

そこで次に、同じデータで「軽症」「中等症」も含めた「報告件数」の各食品別総計をグラフ化する。

↑ 事故件数の多い食品(件数)
↑ 事故件数の多い食品(件数)

「あれ?」と首をかしげる人がほとんどのはず。最初の比率グラフから見れば確かに「こんにゃく入りゼリー」はトップなのだが、報告件数全体から見れば誤差のレベルでしか無い。元々資料には「事故件数の多い食品」の一覧には「こんにゃく入りゼリー」は入ってすらおらず、こちらが別表から無理やり入れてグラフ化し比較させた。つまり

・こんにゃく入りゼリーについて
「個々の件数に対する比率ではトップに違いない」
「食品などの窒息事故件数に占める絶対数では誤差のレベルでしか無い」

という実態が確認できる。

これをさらに分かりやすくするため、二つ目のグラフに「重症未満」「重症以上」の区分を加えてみる。

↑ 事故件数の多い食品(件数)(重症未満・重症以上症例数別)
↑ 事故件数の多い食品(件数)(重症未満・重症以上症例数別)

件数の絶対数、言い換えれば「報告件数全体に占める」重症以上の割合は、もちやパン、ご飯の方がはるかに多い。食品安全委員会が下した「アメ程度の事故頻度」という見解も、件数だけを見れば「それでも言い過ぎ」、重症以上の件数に焦点を絞れば「そのようなものかな」ということが確認できよう。

もう一つの「?」・集計母体で「こんにゃく入りゼリー」が不利な形に
情報収集された全4137件のうち、集計対象となる2414件において、「こんにゃく入りゼリー」の事例が7件のみにも関わらず「重症率85%」をことさら声高に強調するあたり、頭に疑問符が浮かんでくる。さらにこの「7件」そのものも、少々再考察する必要がある。

資料には

東京消防庁等と連携し、食品・製品等に関する窒息事故について、具体的な原因、被害者の年齢、被害程度を情報収集

・東京消防庁(平成18-20年) 3488件
・その他政令市消防局(平成20年厚生労働科学研究費補助金分担研究報告書) 648件
・こんにゃく入りゼリー窒息事故情報2件(加古川市(平成19年)、松本市(平成20年))

はてなとある。ここで再び「あれ?」と思った人もいるだろう。消防庁・消防局のデータは各種食品事故のデータを「内容において選別することなく」取得している。にも関わらず、それに加えて、「こんにゃく入りゼリー」の件を2件、別途わざわざ加えている。この2件が世間から注目を集めた事例であるとはいえ、まったく違う母体から追加した時点で、全体的な統計像は非常にボケたものとなる。

「たかが2件」と考える人もいるかもしれないが、前述の通り「こんにゃく入りゼリー」は全部で7件。そのうち2件となれば実に28.6%にも達する。

そして追加された2件について、東京消防庁側のデータから逆算すると、

全体……軽症1、重症2、重篤4
東京消防庁……軽症1、重篤3

であることから、少なくとも重症以上の区分であることが確認できる。要は「ただでさえ発生件数が少なく誤差が容易に認められ得る」のに加え、「こんにゃく入りゼリーだけ追加された2件双方が重症以上の事例で、事故件数そのもの、さらには重症比率がかさ上げされている」というわけだ。ちなみにこの2件を除外して再計算すると、80.0%。相変わらず比率としては高めだが、母数が5件しかないので、ますます誤差の範ちゅうでしかない数字となる。

つまり「こんにゃくゼリーの窒息、重症率85%」という言い回しは、数字だけを単純計算した上では正しいが、統計数値的な扱いをするのは間違っているし、その母体そのものにも(こんにゃく入りゼリーについては)再検討を要する必要が生じる精度でしかないというのが結論になる。



別資料の【こんにゃく入りゼリーによる窒息事故の追跡調査について(PDF)】に目を通すと、窒息事例が発生したあとに詰まった部分から除去しにくい事例が複数報告されており、これについては問題視されるべきところではある(ただし例えば「餅は口で小さく咀嚼して、飲み込みやすい大きさにしてから食べるが、こんにゃく入りゼリーはそのまま食べる可能性があり」など、発生リスクを前提とした可能性を述べているあたり、疑問も無いわけではない。餅を食べる人すべてが口で小さくかみくだくことをするとは限らないからだ)。

ゼリーただ、行政における比例原則(達成されるべき目的とそのために取られる手段としての権利・利益の制約との間に均衡を要求する原則。スズメを撃つのに大砲を使うべからず)や、消費者庁の予算・人員が有限であること、さらに事故、そして重症件数が多い他の事例が多数存在していることを考えれば、現在の「こんにゃく入りゼリー」に対する報道姿勢、さらには同庁の対応は過敏に過ぎる気がしてならない。「発生・重症確率が高いかもしれず(7件の事例しかない以上、統計学的には有効な数字として採用することは出来ない)、今後たくさん被害が出てくるかもしれない」件より「確率が高く、現在もたくさん被害が出ている」件に、もっと努力(具体的に指導や啓蒙などの行動実施)を払うべきではないだろうか。


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