株安や冷夏予想が痛い…2010年5月景気動向指数は6か月ぶりの下落、先行きも6か月ぶりの下落

2010/06/10 05:11

内閣府は2010年6月8日、2010年5月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状は6か月ぶりに下落した。先行き指数も6か月ぶりの下落傾向を見せている。基調判断は厳しいものの先月と同じ表現である「景気は、厳しいながらも、持ち直しの動きがみられる」となった(【発表ページ】)。

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「やや良くなっている」が減少、悪化サイドが微増
文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値に関しては今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】にて解説している。そちらで確認をしてほしい。

2010年5月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス2.1ポイントの47.7。
 →6か月ぶりの減少。「やや良くなっている」が減少、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加。
 →家計において環境対応車への補助・減税効果が続いているが、低温・大雨や季節商品の不振、エコポイントの駆け込み需要の反動などで減少。企業は原材料価格の上昇で販売価格の引き上げが難しいところから減少。雇用は企業側態度が慎重ではあることから低下。
・先行き判断DIは先月比マイナス1.2ポイントの48.7。
 →6か月ぶりの減少。
 →家計では子供手当の支給や環境対策自動車の購入にかかわる減税・補助金制度の継続への期待があるものの、株安や冷夏予想から低下。企業では原材料価格の上昇や欧州の景気後退、円高などへの懸念、雇用では企業側の慎重な態度が続くとの予想から減少。
原文を昨月・今月と引き合わせてみると分かるのだが、円高や欧州金融危機などの一部要因を除けば先月とほぼ要素は変わらず、マイナス部分とプラス部分のどちらが大きくなったかという綱引きが行われていることが分かる。

ほぼ一様に低下。50超え項目も少数に
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表月分では昨月から転じて、すべての項目でマイナス。50を超えた項目も企業・製造業と雇用関係の2つのみとなってしまった。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン(ズ)・ショック」をきっかけに、直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。「各数値が1桁になるのでは」という懸念もあったが、2009年1月には横ばい、多少の上昇を見せ、2月以降は上昇が続いている。今月は久々にわずかだが、下降してしまったのが分かる。「合計」の値を見ると、まさに中間の「50.0」ではじき返されてしまったようで、何となく不気味ではある。

・今年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは良い状態。
・政策や外因、円高などを起因とする
不安感から低迷状態は継続?
・「去年と比べれば」感か
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、今回の下落(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明らか。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、ズレすら許されなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素(いわゆる「金融(工学)危機」)が、多種多様な方面において一斉に悪影響を与えた様子が数字、そしてグラフにも明確に表れている。今更ながら一部で「当時の日本の政策が悪かった」という意見もあるが、鎖国状態ならともかくグローバル化が進む中、一国があがいてもどうにかなるものでは無い(逆に周辺国がそれなりでも自国で失策が続けば、自国のみ経済が軟調な状況はありうる)。むしろ「あの程度で済んだ」と認識した方が適切。

今年に入ってからの動きは、2001年後半以降の大底からの反転・再下落の動向をなぞっているともいえる。この傾向が景気回復における「通過儀式」なら、直近の天井付近で「雇用関連指数」と「合計全体指数」の交差が発生し、そこから再びしばらく(過去なら2002年半ば)は軟調さが続き、もみ合いながら景気の復調が見られることになる。

今月発表分では7か月前に見られた「直近における天井感からの下落」の傾向がひとまず停止し、反発を見せている。さらに7か月前の時点で「交差」現象は確認済み。前回の傾向を踏襲するとすれば、(前回の2003年後半期になぞらえれば)そろそろ雇用の数字が大きく跳ねて天井観を演出する。しかし周囲を見渡しても、雇用情勢が回復しているようには考えにくく、前回とは違ったパターンを進む可能性も否定できない。ただし数字自身はその前兆を見せている。あるいはこのレベルで「大きく跳ねた」場面を演出している可能性も否定できない。

景気の先行き判断DIについても、先月から転じて減少した。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

前月比でプラス項目は1つだけ。あとはすべてマイナス。50を超えた項目も2つまでに減少してしまった。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方よりも下値に達していた(青線部分)。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、かつてない不安感を多くの人が感じていたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン(ズ)・ショック」)が、大きな不安感の中にある人々の心境をさらに追い落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えたのかが分かる。

今月は全体的にマイナスを見せている。先月触れた「上昇は続いているが上昇幅が小さくなり、天井が間近い」という話が現実のものとなった感がある。現状指数同様、2003年中-下旬期の状況に類似してたとして、このレベルのかい離で雇用指数が天井観を見せた可能性もある。

リバウンド、早くも終了か
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・新車の購入補助金は9月が期限であるため、客の動きは活発になってきている。来客数が増えており、成約率も上昇している。他社との競合も多いため収益的には厳しいが、ここ数年のなかで、5月としては最高に近い受注率である(乗用車販売店)。
・ゴールデンウィーク期間の来園者数が前年比増となった。春季イベント開催期間に加え好天が続いたことで行楽利用が順調に伸びている(テーマパーク)。
・前年のような新型インフルエンザの影響もないことから、来客数は持ち直しの動きがみられるが、旅行会社商品、インターネット商品ともに単価の低い状況が続いている(観光型ホテル)。
・リフォーム物件の受注はあるものの、新築一戸建ての受注は低迷している(設計事務所)。
・消費者の節約志向に加えて、低温の日が続いているため、季節商材の売上が前年を下回っている(一般小売店[雑貨])。
・暑くなったと思ったら涼しくなったりで、エアコンの販売も伸びそうで伸びない。テレビの販売も一服している(家電量販店)。
・口蹄疫問題で客の消費マインドが非常に冷えこんでいる。特に5月18日の非常事態宣言以降、来客数、買上単価ともに激減している(百貨店)

■先行き
・まだ良くないが、最近の傾向からは、購入動機があれば前年よりは活発な動きがあると感じられる。6月以降は新商品の発売のほか、子ども手当や沖縄での高速道路無料化などもあるので期待が持てる(通信会社)。
・気温の低い日が続いており、夏物商材の動きが良くない。炭酸飲料や乾めんなどは前年の9割程度の状態である。今後については、冷夏の予報も出ているため、引き続き夏物行楽商材の動きに期待が持てない(スーパー)。
・6月から子ども手当が支給開始され、旅行需要喚起に好材料がある。一方、朝鮮半島の情勢悪化や株価低迷などの悪い状況もあり、先行きが全く読めない(旅行代理店)。
・当地においては、観光関連以外で、状況が好転する材料は見当たらない。また客の中には、株価の低迷により含み損等を抱えた富裕層客が多く、高額品の販売動向が懸念される(衣料品専門店)。
などとなっている。景気回復感を具体的に裏付ける証拠を見出せないが、何となく売れ行きが伸びている感がある。ただし一方で内外のネガティブ要因も浸透しており、五里霧中感をつかみ取ることができる。ちなみに元資料には地域別の現状・先行きDI(全体と家計)も確認できるが、事態がいまだに進行中の民主・赤松口蹄疫騒動に関して、九州地方のDI値がとりわけ大きく減じた傾向は見られない。現状値はやや下げてはいるものの沖縄・四国と同程度であるし、先行き指数もやや低さが見られるが、現時点では突出したものではない。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、国内外に多発する
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は継続中。
「節約疲れ」など、心理的に
「苦境に疲れた」ことによる反動も
一休みか。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復」パターンを踏襲する様相。各種景気の循環説にも合致しており、振幅の違いはあれど、予想通りに状況は進むものと推定される。現時点では(下げ幅こそ違えども)着実にその状況を継続中。実証されつつあるこの仮説が正しければ、今後は2003年中盤以降のパターン「雇用指数の上向きと、企業・家計紙数のもみ合い」を踏襲することになる。

あるいは本文中でも言及したが、前パターンにおける天井観を示す「雇用関連指数の上離れ」がこのレベルで達せられた可能性も(低いながらも)ゼロとはいえない。もしその仮説が正しいとすれば、「この水準のまま」横ばい、やや低下を継続することになる。

現状値そのものやコメントを見れば分かるように、現時点では昨年のリーマンショックにおけるどん底に慣れた感もあり(さらに国内外の経済的にネガティブな情報の配信が抑えられている感もある……昨年夏までとは打って変わって)、マインド的にはやや持ち直しを見せている。その一方で、内外に高まる・増加する不安要素に、再び構えの姿勢を見せ、消費動向の減退を懸念する向きも見られる。昨月コメントした、綱渡りの上での「持ち直し感」は一か月しか持たなかった……とは考えたくもないが。

読者諸氏におかれては、多少手間と時間はかかるし正直面倒なものだが(笑)、自分がいつも接しているものだけでなく、一歩外に足を運び、あるいは手を伸ばし、いつも与えられているものの先を、ちらりとだけでも眺めてみることをお勧めしたい。自分の判断をより確実なものとする、あるいは今まで見えてこなかった、新しい、そして正しい判断をするのに必要な情報が得られるに違いない。

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