最近よく聞くキーワード「CMBS」とは?

2010/06/06 19:30

CMBSヨーロッパ、特にEU加盟国における不良債権問題は留まるところを知らず、各国の国債に対する格付けの変動に為替レートが一喜一憂し、それに連動する形で株価も乱高下する日々が続いている。ギリシアの次はハンガリーか、スペインか、と【「豚ちゃん(PIGS)」の次は「おバカさん(STUPID)」!? 財政危機国家の略語たち】での冗談話を読み返すにつけ、「冗談話で済んでいればどれほど幸せか」という状況だ。そのような昨今において、最近よく耳にするようになったのが「CMBS」という金融商品。例のサブプライムローンの次はこれが危ない、ということなのだが、ICBMだかCMBSだかよく分からん……と放置しておいたままにするのもどうかな、という感があるので、今回図解化を図ることにした。なお今回は【新聞のいわゆる「押し紙」問題を図にしてみる】などで用いた手法、通常とは違った形式(フランクな形)で書き連ねていくことにする。

スポンサードリンク


さて「CMBS」って何かと聞かれたら、「商業用不動産ローン担保証券」、英語なら「Commercial Mortgage Backed Securities」のことを指す。なんだかよくわからない、魔法の呪文のように見えるけど、一つひとつを分解すると、それなりに答えが見えてくるよ。

・商業用不動産……住宅用でない不動産。ビルとかホテルとかデパートとかだね。
・ローン……何回かに分けて、時間をかけて借りたお金を返す契約。住宅ローンとか良く聞くよね。あれは「家を買った時の代金をまとめて借り、少しずつ返す」約束のこと。
・担保……約束をする時の「保険」みたいなもの。「もし約束やぶったら、これもらうからね」というお話。この場合は「ローン返せなかったら、これはオレのもの」と主張できる対象を指すんだ。
・証券……財産上の権利の代わりとなる、権利を保証する券。

つまり「CMBS」とは「ビルとかホテルとかのローンを担保にした証券」ということになるわけだ。……あまり理解度は変わらないか(笑)。

それじゃ、もう少し具体的に。商業用不動産として3つの物権が有ったとする。すなわちA:ホテル、B:商業ビル、C:スーパー。それぞれ銀行からは10億円・6億円・4億円の価値があると判定され、上限まで借り入れを実施(ローンを組む)。各物件は「万一返せなくなったら、自分の物件の権利を提供します」という担保を設定し、定期的に借り入れの返済をしていく。銀行は同時に、A:ホテルなら10億円分のローンの債権を手にし、それを裏付けとして定期的にA:ホテルから返済金を受け取り、万一「倒産したのでもう払えません-」といわれたら「それじゃ、あんたのホテルそのものをもらうよ」という権利もゲットできるんだね。

↑ CMBSのイメージ
↑ CMBSのイメージ

銀行としては定期的な収益が入るのはいいけど、比較的大きな資金が自分の所に留まることになるよね(債権に形が変わってるけど)。これじゃ面白くないし効率が悪い。それに各債権が万一銀行が破たんした際に、負債の返済に巻き込まれることがある。ってわけでこれを別会社(投資銀行やSPC……特定目的会社)に売却。銀行は代金をゲットし、それを元にまた別の商業ビルなどに貸し出しをするんだな。

そして受け取った投資銀行やSPC。そのまま債権を持っててチマチマと返済を受け取ってもいいけど、それだと銀行とやってることは変わらない。そこで権利を分割し、さらに組み合わせて新しい権利……まぁ、いわゆる証券化をしてしまうわけだ。

分割してまた組み合わせるのはなぜだろう
何で分割してまた組合せるかって? そうした方が、色んな人たち、つまり投資家に売りやすいからさ。リスクも含めて、ね。

↑ 銀行が受け取った債権のまま、投資銀行やSPCが売ろうとすると、高額になってしまう
↑ 銀行が受け取った債権のまま、投資銀行やSPCが売ろうとすると、高額になってしまう

上の図にあるように、銀行から買い取った債権をそのまま証券化して売ろうとすると、単位が大き過ぎるよね。しかも、もし買えたとしても複数は無理っぽいので、万一倒産した時に「オール・オア・ナッシング」になってしまう。怖すぎて誰も買えない。

そこで、細かく分割した上でごちゃまぜにして、新しく証券化し、これを売り物にしようと考えたわけだ。こいつがCMBS。

↑ 分割して複数を混ぜて小さいポートフォリオとして売る、これがCMBS
↑ 分割して複数を混ぜて小さいポートフォリオとして売る、これがCMBS

これなら単価は安いので銀行や機関投資家でない、一般の投資家でも購入ができるし、証券として投資家同士でも売買されて流動性も高まるよね。

「それぞれを単に1つ1つの債権(債券)を細かく分割すればそれでいいだけの話でしょ?」とツッコミ入れるかもしれないけど、それだとやっぱり破たんリスクは変わらないよ。複数の債権を元にした債券を混ぜることで、どれかいずれかが破たんしても、他の部分は大丈夫だから、「オール・オア・ナッシング」は避けられるよネ。

上の図では単純に100分割してそれぞれを一つひとつ組み合わせただけだけど、個々の破たんリスクを考えて、例えばC:スーパーを2つ、B:商業ビルを3つ、A:ホテルを5つといった具合に構成割合を変えて、色んなタイプのCMBSを作れるんだね。これは証券投資におけるポートフォリオの仕組みにも似たところがあるから、すぐに理解できる人も多いんじゃないかな。

サブプライムローン問題も一緒に考えられるヨ
……あれ? 権利を分割して複数のものを混ぜて再パッケージ化して、ってどこかで聞いたことがあるような、そんなことを思った人は大正解。そう、2007年後半から顕著化した、サブプライムローン問題で金融危機のトリガーを引いた、住宅ローン担保証券とほとんど仕組みは同じなんだ。これは略名をRMBS(Residential Mortgage-Backed Securities)といって、今件のCMBSとは一文字違い。「C:コマーシャル(商業用)」か「R:レジデンシャル(住宅用)」か、つまり証券化するローンが一般住宅を対象としたのか、商業施設を対象としたのかの違いに過ぎないんだね。

つまり、相場が下落した時のリスクなどをはじめとした各種問題の根幹部分もさほど変わらないんだな。

CMBSがRMBS以上に問題なのは、ローンを組む際の担保設定にあるんだ。住宅ローンは「住宅の担保価値分だけだね」、そして万一支払えなくなったら「住宅はもらっちゃうよ」。そりゃそうだ、住宅そのものは新たにお金を生み出すわけじゃないもの。

でも商業施設向けの建物の場合、それ自身を売却した際の担保価値以外に、そこで商売が行われることで賃料が発生し、その収益もローン設定時に加味されるんだな。例えばビルそのものは不動産屋に鑑定してもらっても1億円くらいの価値しかないけど、もの凄い売上をあげる著名な高級レストランがダース単位で入ってて、賃料も1か月あたり全部で1000万円は固いとする。ならば5000万円くらい上乗せしてもいいかな、と考えちゃうよね。毎月売上1000万円だよ? ローンの毎月返済額が200万円くらいだったとしても、平気で払えるとか思っちゃうじゃん?

↑ RMBSとCMBSの元となる住宅ローンと商業ローンの違い
↑ RMBSとCMBSの元となる住宅ローンと商業ローンの違い

ところが一方で、住宅ローンも商業ローンも、原則は「ノンリコース・ローン」となっている。また変な横文字が……と思う人がいるだろうけど、これは簡単で、「担保の債権だけに権利義務(求償権)が発生する借入金」のこと。例えば上の例だと、住宅や商業施設のオーナーが「破たんしたのでもうローン返せないよぉ」とお手上げ状態になったら、例えローンの残りがどれほどあっても、担保となっている住宅や商業施設を取り上げられて、それでオシマイというもの。

株式投資での「投資した企業が山ほど借金抱えてても、株主がその借金の支払いをしなきゃならないわけじゃなく、単に手持ちの株券が暴落するだけ」というのと同じ、株主責任・有限責任みたいなもの(もっとも大株主の場合は状況次第で話が変わってくるけどね)。

CMBSの方がRMBSより「何かあったら」怖いね!?
ここにいくつかトリック……というか端から見れば不可思議な、でもそれがまかり通ってしまうお話があるんだ。先の例だと「賃料がガンボガンボ入ってくるから、多く貸し出してもいいナ」という事例の場合、もし破たんしても差し押さえができるのは物件そのものだけ。先々の賃料まではゲットできないよね。つまり、賃料で上乗せした分だけ、CMBSはRMBSと比べて破たんした場合のリスクが大きくなるわけだ(元々ローンの額自身がケタ違いなんだけどさ)。

お金とグラフそして商業施設の場合、大抵において物件価値と賃料は連動する。家賃が下がれば売上も落ち、当然その施設の価値も落ちる。先の例なら「月売上1000万円」だったのが「賃料相場が下がって全部で500万円に下げないと部屋が埋まらない」ってことになったら、その施設そのものの価値が1億円のままってことは……ないよね? それだけその場所の地代も下がってるんだから(「東京の一等地」と「無人島」の同じ1平方メートルの土地が同価格で無いのと同じ理由だよ。価値ある場所の地代は上がり、その場所での賃料は高くなるものさ)。

これが土地バブルの時なら、「物件価値は上がるし賃料も上がるし、貸してる方も借りてる方も相乗効果でウハウハモード」なんだけど。下がり出したら、さあ大変。貸してる方は万一相手が破たんしても差し押さえる物件の価値が下がる、借りている方は返済金に当てる賃料が減って返済が大変になる。特に賃料の減少は直接的には借り手、間接的には物件の価値が落ちるので貸し手側と双方にダメージが与えられるか、たまったものじゃない。

当然、こんな状態のローンを細切れにしているCMBSも「どこの部分がヤバいのか分からんのじゃ、分散化の意味もないし、持ってること事態がリスクだ」と思われて当然、ということになるわけだね。一つだけ傷んでる栗が入ってる栗ごはんなら、それを探して除ければいいけど、どれだけ入っているか分からない栗ごはんなど、例え大安売りでも買いたくは無い、そんな感じかな(さらにCMBSは商業ローンを対象にした証券なので、RMBSなどの急落の際には大きな買い手となった住宅公社(米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)や米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ))が手出し無用モードになるのも難点)。



CMBSが今どれだけ大きなリスクを抱えているのかは、【「CMBS」破裂は秒読み(日経ビジネス)】など他の記事に委ねることにするよ(一つにまとめるのはいくらなんでも無茶過ぎるし、当方の力量に余るヨ(笑))。ただし、賃料の値下げ云々とあわせて、空き室率の増加も、CMBSのリスクが上乗せされることは付け加えておこうかな。どちらにしても「その建物から得られる賃料が減る」ってことには変わりないものね。

また、特にアメリカにおいては不動産市場と家賃相場がどーんと下がってしまい、「ちまちま返したり、物件を売り払って現金化してローンを返しても、さらに借金が残るだけ。だったらデフォルト(破産)して『デフォルトしたから担保の物件あげるね。そんで、もうローンはチャラだよね』ってした方が安くつくわ」という計算が成り立って、次々にデフォルト宣言するところが出てきた。デフォルトが増えると当然不動産市場は落ち込むので、さらに「デフォルトした方がお得」という事例が増え、それを実行に移す人が増加する……というマイナススパイラル状態だった(、あるいは現在も進行中?)わけだ。損得考えればその選択は間違いじゃないんだけど、これってどうなんだろうかなぁ。

それともう一つ。「CDO」というのも良く聞くけど、これは「債務担保証券(Collateralized Debt Obligation)」のこと。要はRMBSやらCMBSを束ねて、それを裏付けに再度証券化してしまおうというもの。株式などで例えれば、投資信託をいくつか組み合わせて新しい投資信託を作るって感じかな。これの意味・存在理由は非常に大雑把に表現すると「色々組み合わせて証券化すればオール・オア・ナッシングなどのリスクの軽減が図られる。だったらもう一度証券化すれば、さらにリスクが減らせるんじゃないかな?」というものだ。

いや、そりゃ確かにそうなんだけどさ。先ほどの「栗ごはん」の例で挙げると、万一傷んだ栗が入っていた時のリスクが、「一店舗」だけになるのか、「同じ配送センターを使っている全店舗」になるのかの違いじゃない? 上手く行かない時のことはあまり想定されないのが世の常だけど、ねぇ。


Special Thanks to 【渡邉哲也 代表戸締役氏】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2017 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー