6年連続経常利益をはじき出す「ダイシン百貨店」のレポートから、デパート不況打開の糸口を考えてみる
2010/05/31 12:05


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↑ ダイシン百貨店のレポート記事。
ダイシン百貨店は1964年に開店した中堅百貨店。前世紀末から規模拡大を図るも小売店業態の多様化などに対応しきれず、2004年には経営危機が表面化。以後リストラクチャリングという意味でのリニューアルを行い、現在の大森本店のみの体制に落ち着く。キャッチフレーズ「半径500m以内、シェア100%主義」にも表れているように、地域密着型百貨店として「昭和風なイメージの、昔ながらの百貨店」を維持しつつ、中堅-高齢者向けの業務展開をしている(財務諸表は公開されていないが、動画中にもあるように、経営危機発覚後は経常黒字を維持しているようだ)。
以下、ダイシン百貨店(をレポートした今動画)のポイントを箇条書きにしてみる。
・商品種類が豊富で、普通のスーパーや百貨店には無い珍しい、昔ながらの商品が多い。特に高齢者向けに特化。大量卸し入れができないため単価は1-2割ほど高くなるが、「他店に行っても無い商品ならば、少しは粗利がとれる」
・周辺住民、特に高齢者はダイシンファンが多い。「家の中のものはほとんどダイシンで買った」という人も。
→一店舗ですべてが揃う、本当の意味での「百貨店」。お年寄りにとっては「あちこち出回らなくて済む、買物の際の移動距離が短くて済むメリット」。
・例えば太巻きを小口売りするなど、来客の年齢層(=高齢層)に合わせた商品展開も欠かさない。
・西山 敷社長曰く、
「年配客は一回ちゃんと(サービス)すると必ず固定客、リピーターになる。若い人はいくらサービスしても浮気する。年配客に対してサービスを継ぎ足していけば、雪崩のように来る」
→行動可能範囲が限られている高齢者は、良い購買拠点を見つけると、そこに集中する。さらに地域密着型店舗なため、リアルな「口コミ」が地域レベルで発生し、相乗効果を生み出す。
・顧客にとって本当に欲しいモノ一つ一つを提供し、顧客のニーズを叶えることができれば、店舗そのものは「欲しいモノ」の集合体になる。属性が近い顧客が多いので、趣味趣向も似て、相乗効果も生まれる。
→顧客と店舗がお互いに成長し合う。ロングテールの実態・実店舗版。
スーパーや100円ショップの来客層で高齢者が増加する傾向にあるのは【100円ショップ来訪客の世代】や【コンビニ来訪客の世代分布(2010年4月時点)】でお伝えした通り。人口の年齢階層区分そのものが高齢化していることもあるが、生活必需品を扱う小売店業で、高齢者の来訪が増えていることは見逃せない。
ダイシンの場合、高齢者の特性、すなわち「ネットショップなどを使わず、移り気はしない」「行動範囲が狭く、出来るだけ短距離の移動で買物を済ませたいというニーズがある」に対応し、「細かなニーズに応えることで、類似顧客層(高齢者)にとっての魅力をかさ上げし、さらなる集客効果をもたらす」という効果を導き出すことに成功している。小売全体の客単価が逓減する中、「単価は1-2割ほど高くなるが、他店に行っても無い商品ならば、少しは粗利がとれる」という、インターネット通販を使わない・使えないお年寄りならではの特性をうまくつかんだのは巧みとしか言いようがない。
ネットが使えない高齢者に
リアルの店舗で提供

もちろん今後、パソコンやケータイなどを使いこなす中堅層が高齢化し、高齢者も平気でネット通販を活用するようになれば(その傾向は突然ではなく、じわじわと数字に表れてくるだろう)、ネット通販におかぶを取られるため、ダイシンもさらなる進化を求められることになる。しかしここまでの「臨機応変」が出来る体制を維持していれば、その時はまたその時の状況に合わせた「変化」、もとい「進化」を模索し、果たせるに違いない。
また、デパートすべてが同じような対応をしてうまくいくとは限らない。しかし「上手く行っている他業態を参考に、そのサービスを享受できない層に、工夫を凝らして自分達自身が提供していく」という発想は、一考の価値はあるはずだ。
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