「声優グランプリ」は特集と小冊子が上昇のポイントか…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2010年1月-3月データ)

2010/05/26 06:05

【社団法人日本雑誌協会】は2010年5月24日までに、2010年1月から3月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、正確さという点では各誌が自ら発表している「公称」部数よりはるかに高精度、精密な値である。今回は「ゲーム・エンタメ系」のデータをグラフ化し、前回掲載記事からの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

掲載されているデータはいずれも「1号あたりの平均印刷部数」で、印刷証明付きのもの。つまり「この部数を間違いなく刷りました」という証明がついたものであり、雑誌社側の公称(自称)部数ではなく、また「販売部数」でもない。雑誌毎に季節による売上の変動や個別の事情(人気連載が終了した、話題のゲームの情報が集中掲載されたなど)があり、そのまま比較すると問題が生じる雑誌もあるが、その場合は個別で説明して。どこまで雑誌数の印刷(≒販売)部数が変わっているが気になるところ。

それでは早速、まずは2010年の1-3月期と2009年10-12月期における印刷実績を見てみることにする。

2009年の10-12月期と2010年1-3月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2009年の10-12月期と2010年1-3月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

今回は幸いにも対象雑誌そのものの増減は無し。状況については、やはり大勢として「Vジャンプがずば抜けた売上」「週刊アスキーの健闘」「アニメ系ではニュータイプがトップ」などの傾向は3か月前と変わらない。この傾向は2年近く継続したものであり、このジャンルにおける「鉄板トップ3」というところ。特に「Vジャンプ」は本家のジャンプが【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2010年1月-3月データ)】でもお伝えしているように、少年向けコミック誌ではばく進しているのと似たような状態。ジャンプ二冠王体制は継続中。

また、いわゆる「季節特性」(前回が特に季節柄雑誌販売数が減るような事象は無い一方で、今期は正月休みや期末休みが入るため「通勤・通学の際に購入されやすいタイプの雑誌の印刷数が減る)が生じているようで、多くの雑誌が前期比でマイナスを記録している。なお「Vジャン」の落ち込みがやや大きいのは、前期の突出の反動要素が大きい。

次に直近3か月における印刷数の変移はどのようなものか、グラフ化してみることにする。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)

3か月単位の変動値であり、季節特性だけでなく「取り上げている作品の人気」「新作映画やゲームとの関連」「付録」「前回期の動向」など、イレギュラー性の高い要因に大きく左右される可能性が高いことをあらかじめ書き記しておく。しかしながらホビー系の雑誌は多かれ少なかれその変動・特異性を宿命としていて、「イレギュラー性」を乗り越え、販売冊数を重ねていかねばならない。たとえばゲームソフト自身に大ヒット作が出なくとも「ソフトが売れないのでゲーム専門誌も売れませんでした」では経営陣も首を縦にはふるはずも無い(「株価が低迷しているから証券関連の専門誌が売れませんでした」なる言い訳が通らないのと同じ)。

突発性要素による「ぶれ」の範囲をプラスマイナス5%台とやや甘めに見て区分わけすると、ネガティブが7誌、ポジティブが1誌となる。前期がネガティブ4・ポジティブ3だから、状況は悪化したように見える。前期に10%超えの大きな伸びを示した「PASH!」「Vジャンプ」がその反動でマイナスに大きく振れたと考えても、ネガティブが5誌でやはり前期より悪い。

今回唯一5%超えの伸びを記録した「声優グランプリ」だが、部数は3万部に届かず、増加分も3000部足らず。誤差の範囲内とする考え方もあるが、あえて買われた要因を見つけるとするのなら、『2010年 02月号』に小山力也氏が登場していること、『2010年 03月号』の付録「平野綾BOOK」、3月号と『2010年 04月号』で連続して収録された別冊付録「声優名鑑2010」あたりがツボだったのだろうか。

さて、前回の記事でも触れたように、定点観測を続けたおかげで、都合一年分以上のデータが蓄積できた。そこで今回も前年同期比の変化率をグラフ化する。これならいわゆる「季節特性」による影響は考慮することなく、純粋にその雑誌の動向を確認できる。なお当然ながら、1年分の過去データが蓄積されていない雑誌はこのグラフには登場しない。今回は「アスキードットテクノロジーズ」がまだ1年分のデータを蓄積していないので非掲載となる。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系、前年同期比)

「Vジャンプ」「メガミマガジン」「マック・ピープル」「PASH!」などの健闘ぶりは前期と変わらず。独自性・企画の面白さや新しさが雑誌の売上における牽引力となっているようだ。一方で前期ワースト2のポジションを占めた「コンプティーク」「ファミ通DS+Wii」は順位こそ変われど状況に大きな変化は無し。「コンプティーク」は昨年同期の8.2万部から5.5万部までに減少しており、今後が気になるところ。



男性・少年向けコミックの前年同期比データと比べれば「前年同期比でプラス」の雑誌数が多く、青色の棒グラフ(前年同期比で5%以上のプラス)がある点ではまだ救われるものの、マイナス値を示している雑誌のマイナス度が大きく、不安は決して小さくない。前回記事から継続して、前年同期比でマイナス20%超えの雑誌が2誌もあるのは、市場そのものの不安定さを表している。

一方で上位、前期比でプラスを見せる、あるいは堅実な動きを見せる雑誌には「他誌には無い、自誌のオリジナリティ・コンテンツ(記事、付録、対象となる商品)や工夫」が際立つ傾向があり、それが読者に受けいれられて印刷数(販売数)を伸ばしているように見える。

不景気で可処分所得が減少し、さらに携帯電話や携帯ゲーム機に読者候補者の時間を奪われ、ちょっとした情報ならすぐにインターネット経由で手に入る環境が浸透し、雑誌に対する興味関心も薄れる昨今。お金や時間を割いても「手にとって読みたい」と思わせるだけの魅力を出すには、「ひと山何百円」に見える同じようなものでは無く「他には無い特別な一品」に見える個性的な雑誌を創り出す必要がある。

もちろん同人誌やサークル誌と違い、一定数量を販売する商業誌である以上、適度な個性で留める必要がある。あまりにも個性が強過ぎると、かえって読者を減らしてしまう。そのさじ加減について、プラスを見せている雑誌たちは成功しているのではないだろうか。


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【ゲーム・エンタメ系雑誌の部数変化をグラフ化してみる(2009年10月-12月データ)】
【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…(下)購入世帯率や購入頻度の移り変わり】

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