マガジンとサンデー、どっちが売れてる?…少年・男性向けコミック誌部数動向(2010年1月-3月)

2010/05/24 12:00

【社団法人日本雑誌協会】は2010年5月24日までに、2010年1月から3月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、業界の動向を示す正確度は、各紙・各出版社が発表している「公称」部数よりはるかに高い。今回は、読者層を考慮してもっとも興味がそそられるであろう「少年・男性向けコミック誌」のデータをグラフ化し、前回発表分データからの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

まずは少年向けコミック誌。週刊少年ジャンプがトップにあることに違いはナシ。

2009年10-12月期と最新データ(2010年1-3月期)による少年向けコミック誌の印刷実績
2009年10-12月期と最新データ(2010年1-3月期)による少年向けコミック誌の印刷実績

「ジャンプ」は直近データで287万2500部。販売実数はこれよりも少なくなるので、前回と同じく250万部前後だろう。いずれにしても雑誌不況の中、驚異的な値であることに違いは無い。王者ジャンプの威厳はいまだに維持されている。

今回は前回から比べて、休刊などでデータが失われたもの、逆に創刊でデータが加わった雑誌は無い。ある程度整理統合淘汰が進んだということだろうか。また今回は後に改めて触れるが、大幅に部数を減らした雑誌がいくつか見受けられる。特に大きく減少したのが「少年エース」。これは前回記事でも触れたように、前期で『涼宮ハルヒの消失』の付録攻勢(特に2010年2月号の「朝比奈みくるフィギュア」)やアニメ『そらのおとしもの』関連記事による特需の反動と考えてよい。前々期と比べれば8.7%程度の下落でしかないからだ(それでも少なくは無いが)。

続いて男性向けコミック誌。こちらも世間一般のイメージ通りの印刷部数展開。

2009年10-12月期と最新データ(2010年1-3月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
2009年10-12月期と最新データ(2010年1-3月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

こちらは少年向けコミック誌と比べれば大きな変化はないが、全般的なマイナス傾向のキツさは少年コミック誌以上。これはこの数期に渡って確認された動きで、季節特性云々を問わず、男性向けコミック誌の購入対象層の購買力が落ちている懸念が真実味を帯びてくる。

さて、これで最新期とその前の期の印刷部数を棒グラフ化したわけだが、続いてこのデータを元に各誌の販売数変移を計算し、こちらもグラフ化してみることにする。短期間の変移ではむしろこちらのデータの方が重要。

要は約3か月間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかという割合を示すもの。当然ながら、今回データが非開示となった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌はこのグラフには登場しない。幸いにも今回はそのような状況に該当する雑誌はナシ。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)

前期は特に季節属性も無く、今期の「正月休み」「期末休み」が入ることによる「通勤・通学の際に購入されやすいタイプの雑誌の印刷数は(前回と比べて減少している(=販売数が減る)」という「季節特性」によるマイナスもあるが、全般的に軟調。前述した「前記の反動」による特異値が出た「少年エース」を除いても、この数回連続して言及している「少年サンデースーパー」の下落ぶりをはじめ、各誌のマイナス値が気になる。

一方で「ウルトラジャンプ」の伸びが目立つが、これは【集英社が「ウルトラジャンプ」緊急重版、ジョジョ関連企画が大好評(ナリナリドットコム)】にもあるように、「ジョジョの奇妙な冒険」の大特集や付録が大いに受け、緊急増刊されるまでの勢いが現れたもの。次期計測分に該当する4月売り・5月売り号でも特集が行われるとのことで、次期も数字に期待ができる。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)
雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)

プラスを記録したのは、「ヤングアニマル」の1誌のみ。他はいずれもマイナス。季節属性を考えれば仕方ない面もあるが……。マイナス5%超の雑誌が前回の3誌から4誌に増えているのが気になるところ。

さて一連の定点観測を続けているおかげで、過去のデータを用いた「前年同期比」のデータを算出することができるようになったのは以前お伝えした通り。今回もいわゆる「季節属性」を考慮しなくても済む「前年同期比」のグラフも掲載する。純粋な雑誌の販売数における伸縮率が把握できる。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)

上記のグラフと比べると掲載紙が少なくなっているが、これは「最新期でデータ未公開の雑誌」「過去一年分のデータがそろっていない雑誌」は除外しているため。前者はともかく後者は、「前年同期」のデータが無いのだから仕方がない。

1年単位での変移を見ると、一部の勝ち組雑誌「コロコロコミックス」「週刊少年ジャンプ」など超メジャー紙以外は、ほぼすべての雑誌で苦戦を強いられているのが分かる。特に週中発売の二大週刊誌「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」の両誌、中でも後者の現状が気になる。年1割超の売上減少は、容易ならざる事態である。

さらに今期における前期との差異も大きかった「少年サンデースーパー」は、前年同期でも凄まじい下落ぶり。やはり定番の言い回しになるが、「あと何回続けられるだろうかという心配すらしてしまう」。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)

「ヤングアニマル嵐」「コミック乱」など前期比のグラフでもそれなりに堅調な一部雑誌以外がどうにか5%以内のマイナス値で留まっているが、それ以外は軒並み5%以上の大きなマイナス値。真っ赤で目が痛いほど。しかも少年向けコミック誌の分類における「少年サンデースーパー」のような突飛な雑誌があるわけではなく、一様に下げているのが分かる。それだけ男性向け雑誌が売れなくなっている、需要が減少していると考えてよい。



今回参照したデータのうち「単純前期比」においては、前期が特に季節変動の要素が無く、今期は正月と期末というマイナス値を導きやすい期間が内包されているため「通勤途中で買われやすい雑誌ほど売れない傾向」により、マイナス値を出す雑誌が多くなる傾向が見受けられる。しかし年単位での「前年同期比」と見比べてみると、季節属性云々を別にして雑誌の売上が全体として落ち込んでいる感は否めない。

特に男性向けコミック誌が、相当危険な状態にあることが改めて確認できる。損益分岐点などを考えれば、「前年同期比で印刷部数がマイナス10%超え」を繰り返していたのでは、そう遠くないうちに立ち行かなくなるのが日の目を見るよりも明らかだからだ(大規模なリストラ、経費削減を行えば話は別だが、それは品質低下と売り上げ減退のマイナススパイラルを容易に生み出す)。

【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…(下)購入世帯率や購入頻度の移り変わり】で触れているが、総務省統計局のデータによれば、雑誌・週刊誌では書籍同様に「購入する人がいる世帯の減少」「購入者の購入冊数の減少」と多元的な雑誌離れが起きている。今データを見る限りではサラリーマンにおいて、その傾向が顕著なものとなっていると考えることができよう。

逆に今回特異な数字を出した「ウルトラジャンプ」のように、適切な読者ニーズをとらえることで、少年・男性向けコミック誌にもまだまだ希望の光はいくらでも差し込み得る。厳しい状況下だからこそ、従来以上に必死になって考え、市場調査をし、短期的視野だけではなく中長期的な戦略まで見据えた、雑誌展開が求められよう。


■関連記事:
【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2009年10月-12月データ)】

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