主要テレビ局の次期業績予想

2010/05/21 05:22

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予想先に【主要テレビ局銘柄の直近決算(2010年3月期)】などで在京キー局の2010年3月期(2009年4月-2010年3月)における決算短信を元にいくつかのグラフを作成、そのお財布事情をかいま見た。その際に気になったポイントを補足的にいくつか取り上げているわけだが、今回は各局の次期業績予想にスポットライトを当ててみる。現在進行中の2011年3月期では、各局はどのような業績をあげることを推定しているのだろうか。


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まずは単純に連結決算予想。先の記事で掲載した「2010年3月期の決算結果」を併記しておく。

↑ キー局2011年3月期(2010年4月-2011年3月)連結決算・予想(前年比)
↑ キー局2011年3月期(2010年4月-2011年3月)連結決算・予想(前年比)

↑ キー局の2010年3月期業績(前年比)(棒グラフ化)(再録)
↑ キー局の2010年3月期業績(前年比)(棒グラフ化)(再録)

・前期に業績がマイナスだったTBSとフジは今期は「前期と比べて」切り替えしを見せると予想。
・ただしフジはグループ再編のさなかで、最終純利益は控えめ
・日本テレビは「今期は前期と比べて」おとなしめな伸び
・テレビ朝日は前期堅調だったこともあり、やや大人しめ
・テレビ東京は「今期は情勢が厳しくなる」と予見

各局毎の前期の実情(今数字は「前期と比べて」であり、各局の前期の実情で立ち位置が変わることに注意)や、これからのテレビ市場の状況のとらえ方、自らの行動姿勢(例えば日テレはさらなるマルチメディア展開の促進を模索中)などで違いを見せているのが分かる。特にテレビ東京の厳しい判断と、TBSの楽観的な見方が印象的(もっともTBSは前期の結果が厳しいものだったので、その反動の結果でもある)。

放送事業の広告収入と制作費
さて次に、二つの視点で今期予想を見ることにする。まずは主事業(1社、すでに数字的には主事業でなくなりつつあるのも見受けられるが)の放送事業における放送収入予想。【主要テレビ局銘柄の直近決算(2010年3月期)…(3)今や広告費の話題はスポット広告からタイム広告へ】で解説しているように、数年来のスポット広告(番組と番組の間の広告)の減少はピークを超え、昨今ではタイム広告(番組を金銭的に支える番組提供広告)の減少が著しい。

各局では上期・下期に分けて放送事業の放送収入(タイム広告・スポット広告の売上)を予想している。そこでタイム・スポットの双方を合わせた「放送事業の放送収入」の前期比予想を、上期・下期、そして通期において抽出・算出(スポット・タイムそれぞれ個別のしか表記して無い局は今期の両広告の販売実績を元に比率を算出し、その比率で総計を試算)したのが次のグラフ。

↑ キー局2011年3月期(2010年4月-2011年3月)放送収入予想(前年同期比)
↑ キー局2011年3月期(2010年4月-2011年3月)放送収入予想(前年同期比)

・どの局も「スポット広告は回復基調」「タイム広告は引き続き減少」の見解
・TBSなど一部では「タイム広告も下期から回復」との期待
・通期でプラスは日テレ、TBS、テレビ朝日、マイナスはフジメディア、テレビ東京

「次第に景気と広告市場が回復していくが期待できるのなら、なぜ後期では無く前期の方が順調の予想をしているんだ?」と疑問符が頭に浮かぶ局が複数見受けられる。これについては該当局の短信補足資料を確認すると、2010年6月から7月に開催されるFIFAワールドカップにおける広告宣伝効果を期待している向きがある。いわゆる「サッカー特需」というものだ。

一方、2011年7月24日に終了するアナログ放送の件、つまり地デジ切り替えに際しての視聴者の減少懸念に関しては言及がほとんど見られない。確かに【総務省の最新調査(2009年11月発表、PDF)】ではすでに69.5%が視聴可能な状態にあることを考えれば、現行期ではすでに8割強は固い。一方で【「地デジまだ」そのうち4割「買い換える」、「よく分からない」も2割に達する】にもあるように、地デジ切り替えの過程で「テレビを見ない」と行動様式を変える人も少なからず見受けられる。現在進行期はまだ「アナログ放送受信機ではテレビが見られない」という状況ではないが、そろそろその影響が出始めてもおかしくは無い。

最後に現場制作費について。フジ・メディアHDは具体的数字が無かったのでグラフなどから概算。

↑ キー局2011年3月期(2010年4月-2011年3月)放送事業制作費(前年比)
↑ キー局2011年3月期(2010年4月-2011年3月)放送事業制作費(前年比)

制作費の大胆な削減をした日テレ・テレ朝・テレ東のうちテレ朝・テレ東は反動からかやや回復基調を見せているが、日テレはさらに制作費の削減を行い、収益の上乗せを模索。そして何よりも前期において業績がネガティブだったTBSとフジメディアHDが、ざっくりと制作費を削って業績の回復を狙っている様子がよく分かる。



テレビ局関連のお財布事情の記事を書く際には、繰り返し触れていることだが、「経費削減そのものは悪いことではないが、それが果たして『削るべきもの』なのか、優先順位的に先に削るべき部分があるのではないか」「売上が減った理由をもう一度じっくりと見直してみるべきでは」などの疑問・懸念が頭に浮かぶ。無駄を削ってひと時はお金勘定で成果が出たように見えても、ほんの数年後には足元がもろくなってしまう状況を創り出しているような感がある。

それはまるでどこかの国が「仕分け事業」と称し、まさにテレビ局と手と手を取り合ってパフォーマンス的な形で、「経費削減」をしているかのように。


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